やさしさの精神病理 の商品レビュー

大平健(著者)

2012/02/09

まるで探偵小説か刑事小説のように一気に読める。精神科医の聞き取りはリアル、だからこそ持つ一種の迫力、新しい"やさしさ"を追い詰めていく所などである。ホットで他人との深い気持ちの交流や、ある意味において土足で踏み込んでくるのが、旧来の「やさしさ」ホットな「やさしさ」…
一方の新しい"やさしさ"はホットさを嫌う、嫌悪する。やさしくないと断罪もする。

2012/02/05

好みのタイプはという問いに対して、「やさしい人」という回答は、男女問わずかなりよく聞きます。

一緒にいたい人の条件として、かなりの深度で根付いているこの「やさしい」という概念ですが、改めてそれは一体何かと問われると、根深いゆえになかなか簡単に答えられません。

そのやさしさを主題にしたのがこの本です。
現代(1995年第1刷)の“やさしさ”と旧時代の「やさしさ」を別の性質を持つものとして分析しています。

旧時代の「やさしさ」は、相手の気持ちを理解し共感するところにありましたが、新“やさしさ”はむしろ、相手との距離感を保ち、踏み込まない踏み込ませないところにあると。

数人の患者のエピソードから、新旧やさしさのすれ違いや、新やさしさどうしが噛み合わなくなった場面などを抽出していきます。

現代の“やさしさ”が機能しなくなったとき、人は精神科を訪れると著者は言っています。なぜなら、自分で決めて後から傷つくのが怖いから。そして、その彼らの言う傷つきやすい自分とはどんなものか、とさらに深めていきます。

現代の“やさしさ”に近い感覚を持つ私は、我が事が語られているような気がしました。そして、それがある程度時代によって作られていることに新鮮さを覚えました。

この本ができてからまた数年経ち、この“やさしさ”や「やさしさ」やはたまたまた別のやさしさが生まれているのだろうと思います、そしてそれはどんなものかなと、考えるきっかけになりました。

2012/01/08

私にとってのやさしさって何だろう、求めるやさしさと求められるやさしさにどうも差異があるような気がしてたところ古本屋さんで出会いました。

2011/12/01

一昔前の日本に当たり前にあったやさしさ、というか気遣いと、現代の若者の言うやさしさの違いを、診察室に来た患者のエピソードから探り出す作品。

気づかないふりをするやさしさ。

しらないふりをするやさしさ。

そのやさしさの形と気遣いをするやさしさの形が違うから、異なるやさしさをやさしさと考える者同士だと居心地が悪くなってしまって、逆にやさしくない！ってなってしまう。。。。

気づかないやさしさをやさしさと考えたことがなかったけど、たしかにそれもやさしさという意見に納得できてしまう。

どちらのやさしさを相手が重視しているかを見落とすと、SWとしての支援もきちんとできなくなると感じた。

2011/09/29

ホットとウォームの二種類の”やさしさ”の話。ちょっと古さを感じる部分もあったけど、わかりやすくてとてもおもしろかった。
昔がよくて今はだめ、という話ではなく、人付き合いの仕方が変わってきているのを感じた。
やさしくしたいやさしくされたい。傷つけたくない傷つきたくない。

2011/04/25

精神科医の筆者が、診断面接をとおして若者にとっての「やさしさ」とは何かを考える。ずいぶんと風変わりな「やさしさ」観もあるけれど、若者の感覚がよくわかって面白い。「絆」に関する項は目からうろこ。

2010/11/30

『やさしくない！』という抗議を妻から時々受ける。正直、何のことかピンと来ない。
この本では、著者の診察室を訪れた精神病の患者というより、人生相談に来たような人たちが口にする『やさしい』ということについて語られている。言ってしまえば、人の気持ちを先回りして配慮を示す行動、といったところか。実はそうしたやさしさが、本当の葛藤から目を反らすだけであったりするようだ。
　とすると、妻の『やさしくない』は彼女の気持ちを先回りして配慮して行動して欲しい、ということか。僕はしばしば本来の葛藤に彼女を晒しているのかもしれないな。

2010/10/14

　15年前に書かれた本ながら、今でも若い人の心に「やさしさ」とは何か？という本質的な問いを投げかける名著。
著者は精神科医として日々診療にあたり患者さんと接する中で、　“ねじれた”とでも言うべき「やさしさ」が現代
日本社会にいきわたっているのではないかと感じたことが本書執筆のきっかけになったようです。
　電車で老人に席を譲らない（年寄り扱いしないという意味の）「やさしさ」、量子力学を「ｙさしく」説明する
参考書、環境に「やさしい」洗剤、、、あなたは恋人に「やさしさ」を求めていますか？

　（大分大学　学部生）

2010/06/02

［　内容　］
席を譲らない“やさしさ”、好きでなくても結婚してあげる“やさしさ”、黙りこんで返事をしない“やさしさ”…。
今、従来にない独特な意味のやさしさを自然なことと感じる若者が増えている。
悩みをかかえて精神科を訪れる患者たちを通し、“やさしい関係”にひたすらこだわる現代の若者の心をよみとき、時代の側面に光をあてる。

［　目次　］
序章　過剰な“やさしさ”
第１章　“やさしい”時代のパーソナリティ
第２章　涙のプリズム
第３章　ポケベルのささやき
第４章　縫いぐるみの微笑み
第５章　沈黙のぬくもり
第６章　“やさしさ”の精神病理
終章　心の偏差値を探して

［　ＰＯＰ　］

［　おすすめ度　］

☆☆☆☆☆☆☆　おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆　文章
☆☆☆☆☆☆☆　ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆　メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆　冒険性
☆☆☆☆☆☆☆　読後の個人的な満足度
共感度（空振り三振・一部・参った！）
読書の速度（時間がかかった・普通・一気に読んだ）

［　関連図書　］

［　参考となる書評　］

2010/05/27

旧来のやさしさと現代のヤサシサ。ヤサシサに触れる度にそれはやさしさじゃないよっと思っていた。本書を読んで改めて考えたが、世の中にはヤサシサを求める人が沢山いるのだろうからそれは否定すべき事じゃないだろう。でもヤサシサってやっぱり寂しい。ヤマアラシジレンマですな。