蛍川・泥の河 の商品レビュー
映画「泥の河」を見てから原作を読みました。どちらも感動しました。大阪を舞台に子どもの心の葛藤や成長、大人や社会との関係を見事に描いている小説だと思います。
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戦後の子供達の生活環境での過敏な心象風景が何度も味わい深く描かれています。子供流れ大人の事情に気を使ったり、子供時代の純粋な物理的な 別れや無垢な論理に縛られない無垢な感情の表現が妙に昔の良き日本の妙味をかもし出していて味わい深いです。淡々と少年時代から青年時代の繊細な 感情の機...
戦後の子供達の生活環境での過敏な心象風景が何度も味わい深く描かれています。子供流れ大人の事情に気を使ったり、子供時代の純粋な物理的な 別れや無垢な論理に縛られない無垢な感情の表現が妙に昔の良き日本の妙味をかもし出していて味わい深いです。淡々と少年時代から青年時代の繊細な 感情の機微を書かれていて時代の交錯は感じられませんでしたが、時代の流れの中で普遍的な見習うべき側面があることに気付かされました。気付けばこの頃のように少年、青年特有の多感な感覚wもち流らかつ大人としたバランスを保ちながら生きて生きたいと思いました。青春時代の多感な時期の心情を改めて認識される感情の機微に深く打った得る作品でお薦めである。
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家の本棚からふと手に取った。 今の自分にとって、必要な本だったのだろう。そう思った。 高校生の頃、初めて手に取った作品だったが、改めて読み直すと、これまで行間を読んでいなかったことに気づく。 「大人になったから、わかること」は、あまり多くないようでいて、実は非常に多いのかも...
家の本棚からふと手に取った。 今の自分にとって、必要な本だったのだろう。そう思った。 高校生の頃、初めて手に取った作品だったが、改めて読み直すと、これまで行間を読んでいなかったことに気づく。 「大人になったから、わかること」は、あまり多くないようでいて、実は非常に多いのかもしれない。 人間の死と生は表裏一体であり、ただ生命の輝きがそこにあるだけなのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
この文庫は「蛍川」「泥の河」の2編が収録されています。 これらふたつとも、ゆっくりとした空気と時間の流れを感じる作品でした。私は映画版をふたつとも観たことはないのですが、映像が目の前に浮かんできそうな気がしました。 ●「泥の河」.....昭和30年ごろの大阪が舞台で河畔に住む少年とくるわ舟に住んでいる姉弟の話。姉弟たちは自分の母がどうやって生計をたてているのか、周りの大人たちが母に対してや自分たちに対して何をどう言っているのかうすうす分かってて、嫌悪しつつ何もできない...そういう描写に胸がちょっとだけ痛くなったような気がしました。この作品を色でたとえるとセピア色のような感じ。 ●「蛍川」.....富山市が舞台。これを読んで私は一度富山に行ってみたい、と思いました。こちらの作品は主人公がちょっと大きくて中学2年ぐらい。作中に思春期の少年の会話が交わされるところがあるが、時代のせいか今どきの子の会話に比べるとなんとかわいいことか。 それから、ラストの蛍のシーンは感動ものです。 これに限らず「泥の河」や「幻の光」でもそうだが、宮本輝さんの作品は主人公は誰かの死に直面することが多いようですね。で、そのシーンはドラマでありがちないかにも涙を誘おうとするようなものではなく、なぜか不思議な静寂のなかに描かれているようです。 もし、この作品に音を入れるとしたら.....。「泥の河」は木舟の音と川の水の音、「蛍川」は石油ストーブにかけたやかんのお湯の沸騰した音と聞こえるか聞こえないかわからんぐらいの雪の音、、、それだけしか聞こえない静寂のなかがふさわしいように思います。
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初めて読む、宮本輝氏の作品。戦後昭和のノスタルジックな風景描写や人間模様を好む私には魅力的な一冊。 「泥の河」の主人公、信雄。そして、「蛍川」の主人公、竜夫と私自身を照らし合わせた時、果たして私はこんな感性豊かに子供時代を過ごしただろうかと考えさせられる。昭和の人と人とのつな...
初めて読む、宮本輝氏の作品。戦後昭和のノスタルジックな風景描写や人間模様を好む私には魅力的な一冊。 「泥の河」の主人公、信雄。そして、「蛍川」の主人公、竜夫と私自身を照らし合わせた時、果たして私はこんな感性豊かに子供時代を過ごしただろうかと考えさせられる。昭和の人と人とのつながりが強かった時代と現代という時代背景がもたらすものだろうか。
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情報科教員MTのBlog (『螢川・泥の河』を読了!!) https://willpwr.blog.jp/archives/51316955.html
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ひととの関係とか、その美しさとか汚さとかを含めて、とても上質なやわらかい文章。 泥の川のおじいさんはどこにいってしまったのだろうか。
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「信雄が火を消そうとして畳に四つん這いになったとき、眠っていたはずの銀子がゆっくり起きあがった。そして燃えている蟹の足をそう慌てるでもなくつまみあげると、ひとつひとつ川に投げ捨てていった。」 正統派。イマドキの小説とは違う。 読み始めたらすぐに世界に引き込まれて、 気が付いたら...
「信雄が火を消そうとして畳に四つん這いになったとき、眠っていたはずの銀子がゆっくり起きあがった。そして燃えている蟹の足をそう慌てるでもなくつまみあげると、ひとつひとつ川に投げ捨てていった。」 正統派。イマドキの小説とは違う。 読み始めたらすぐに世界に引き込まれて、 気が付いたら半分読み終わっていた。 読みながら、 小説の中のねっとりした空気が絡み付いてくる気がした。 不思議とすんなり小説の世界が目に浮かんでくる。 船の家といい、銀子の母親といい、なぜだかリアル。 見てきたように情景が思い浮かぶ。 「物凄くオススメ!」と人に熱く奨めるというよりは、 「興味があれば読んでみて、損はしないから」という感じ。 大絶賛はしないけど、長く心に残る作品だろうなぁと思った。 冒頭の一文に何故だかゾクッとした。
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何度読んでもジーンと胸に響きます☆ と同時に頭をガツンとやられた感じは否めません★ 作家ってモノスゴイ職業ですね。
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「泥の河」 太宰治賞受賞作品 P.83 大きな茶碗にランプ用の油を注ぐと、喜一はその中に蟹を浸した。 「こいつら、腹いっぱい油を飲みよるで。」 「どないするのん?」 「苦しがって、油の泡を吹きよるんや。」 喜一は声を忍ばせてそう言うと、船べりに蟹を並べ、火をつけた。幾つかの青い...
「泥の河」 太宰治賞受賞作品 P.83 大きな茶碗にランプ用の油を注ぐと、喜一はその中に蟹を浸した。 「こいつら、腹いっぱい油を飲みよるで。」 「どないするのん?」 「苦しがって、油の泡を吹きよるんや。」 喜一は声を忍ばせてそう言うと、船べりに蟹を並べ、火をつけた。幾つかの青い火の塊が船べりに散った。 動かずに燃え尽きて行く蟹もあれば、火柱をあげて這いまわる蟹もいた。悪臭を孕んだ青い小さな焔が、何やら奇怪な音をたてて蟹の体から放たれていた。燃え尽きるとき、細かい火花が蟹の中から弾け飛んだ。それは地面に落ちた線香花火の雫に似ていた。 この小説の舞台は、昭和三十年の大阪。まあ馬車引きが残っており、水上生活者もいた。高度経済成長が始まる直前の時代、昭和十年代の生活風俗が残っていた最後の時期である。 お化け鯉が何を暗示しているのかとか、深いことは僕には難しくてわからなかった。だけど、わからないからこそ、この人がどうしてこの話を書いたのかを思いきって考えてみることにした。この話にはやっぱり廓舟が欠かせないのだろう。揺れ動く家庭環境や住環境、環境によって変わる人間には違いが生まれてくる。それを、その気持をうまく言葉で表せない子供を通して(言葉で表さない分、そこにお化け鯉に意味があるのかも)、表現したかったのかな。 この話には、どこか鳥肌が立つような怖さがあった。 「蛍川」 芥川賞受賞作品 P.179 せせらぎの響きが左側からだんだん近づいてきて、それに沿って道も左手に曲がっていた。その道を曲がりきり、月光がはじけ散る川面を眼下に見た瞬間、四人は声も立てずその場に金縛りになった。何万何十万もの螢火が、川のふちで静かにうねっていた。そしてそれは、四人がそれぞれの心に描いていた華麗なおとぎ絵ではなかったのである。 螢の大群は、滝壺の底に寂寞と舞う微生物の屍のように、はかりしれない沈黙と死臭を孕んで光の澱と化し、天空へ天空へと光彩をぼかしながら冷たい火の粉状になって舞い上がっていた。 こちらの話はお酒を飲みながら、少しふわふわしながら読んでたから、内容を深くは覚えていない。だけど、何万何十万もの螢火が現われたときの情景の美しさったら筆舌しがたいものがある。美しい文章というのはこういうものなのかと、今、引用のために文章を写していて気付いた。 こんな名作を二つも読めるなんて、得した気分です。
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