大地の子(4) の商品レビュー
妹あつ子の死、日本の父との出会いと葛藤、再度の内蒙古送りと、次々と苦難が襲う最終巻。 それでも負けない一心に本当に頭が下がります。 そして、ようやく苦節七年の宝華製鉄の完工。高炉初出銑が二国間のわだかまりを押し流す歓喜の情景が胸を打ちます。 あっという間に残り頁が少なくなりどう終...
妹あつ子の死、日本の父との出会いと葛藤、再度の内蒙古送りと、次々と苦難が襲う最終巻。 それでも負けない一心に本当に頭が下がります。 そして、ようやく苦節七年の宝華製鉄の完工。高炉初出銑が二国間のわだかまりを押し流す歓喜の情景が胸を打ちます。 あっという間に残り頁が少なくなりどう終わるのかと思ったところで一心の口から流れる「大地の子…」。 あれだけ苦しめられた黄土の大地。 ふと感じる日本人の血と、祖国への思慕。 それら全てを昇華させた終幕は素晴らしい!! 続編があればと心から思いました。
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【大地の子 4】 山崎豊子さん 折角探し当てた妹との再開も虚しく、あつ子は死んでしまう。 一心があつ子の死を看取った時、県の外事科の職員に連れられた 松本がたずねて来た。松本は中国に残した我が子を探しており 手がかりを元にこの地にたずねて来たのだった。 図らずも宝華製鉄の建設で舌戦を交わせている松本と一心が 実は親子であったことが判明した。実の親に会えた喜びと 中国共産党党員としての立場に一心は戸惑う。 親子である事を隠し、お互いの立場で職場に戻る二人であったが 一心はまたしても、密告者の罠にかかり宝華製鉄の建設プロジェクト から外され、僻地へと飛ばされてしまう。 罠に落ちた一心を助けたのは、かつて大学時代に恋心を育み 一心が日本人と分かった途端に彼を捨てた青丹だった。 一心は再び宝華製鉄のプロジェクトへの復帰を認められ、そして ついに七年の年月を経て宝華製鉄の高炉に火が入る日が来る。 ☆ 最終巻は親子の再開とお互いの立場による葛藤や苦悩。 そして、最後にはわだかまりも溶けいい終り方でした。 作者が書きたかったのは「戦争の悲惨さ」と「人間愛」と書かれて ましたが、本当に心打たれる本でした。
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ついに読み終わってしまった! 父親の深い愛、母親の狂気を孕んだ愛、自分勝手な恋愛。様々な愛の形が国家の向こうに見える。 四巻では惨過ぎるあつ子の葬式、マー(漢字が出てこない)の非道が辛い。 でもみんな幸せになりたいだけなんだよね。そこが怖い。
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残留孤児、文化大革命、日中鉄鋼プロジェクト、権力争い。 中国を舞台にいろんな要素が詰め込められている作品であった。 今中国人と一緒に仕事しているので、そういった方面からも、すごい見ごたえあり。 これといった一言で感想は述べられない。 沢山のことを感じさせてくれた作品であった。 個人的には妹の箇所が切ない、切なすぎる。 最後の最後長江にたどり着いた場面は秀逸。 次は不毛地帯か。
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日本人であるが故に過酷な運命を背負い生きて行く。大陸は彼に何を与えてくれるのだろう。喜びか?絶望か?僅かながらでも希望の光を与えて欲しい。読物としてばかりではなく、現実として中国で生きて行かざるをえない日本人に希望あれ。
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これだけの内容を構築するにあたっての取材には感銘を受ける。 “中国残留孤児”。山崎豊子はこの名称を使ってはいない。戦争孤児の実態を隠してしまう名称を、私も使っていた事に反省をしてみたい。
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初の山崎豊子さん挑戦。ドラマの白い巨塔にハマり、原作を読んでみたいと思い、映像化されていなくて新しいもの、ということで本作に。NHKドラマで映像化されていたのを知りませんでした。 最近は行われていないのか、ニュースでもとんと耳にしなくなった中国残留孤児の問題の原点を思い知らされました。 時代と国家に翻弄され、苦難の人生を歩んだ日本人の存在を知っておかねばならないと思いました。 ラストは…日本に還らなくてよかったのだろうか…。
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中国残留孤児の陸一心。 戦争によって引き起こされることは残酷なことだらけだ 久々に読んだ長編。筆者の凄まじい調査量にもおどろいた。
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まず最初に1〜4巻まで読んだ感想として山崎豊子は他の小説家とは色々な意味で別格だということ。山崎豊子の小説の大きな特徴といえるが、綿密な取材から得た情報を惜しげもなく小説に使っている。時代背景、背景の描写、人物設定など。今回で言うならば著者本人も取材中に幾度となく経験したであろう...
まず最初に1〜4巻まで読んだ感想として山崎豊子は他の小説家とは色々な意味で別格だということ。山崎豊子の小説の大きな特徴といえるが、綿密な取材から得た情報を惜しげもなく小説に使っている。時代背景、背景の描写、人物設定など。今回で言うならば著者本人も取材中に幾度となく経験したであろう、中国という国の不気味さ、したたかさ、狡猾さが読者にもよく伝わってくる。事ある度におこる宝華製鉄建設場面における日本と中国とのやり取り(性能上問題ない錆1つに対しても不満を述べる、自分たちの非を認めないなど)に顕著に表現されている。その際の「いや、例え理不尽な不満だと言っても彼らの言っていることは間違ってはいない。我々は中国という国家を甘くみていたようだね」という発言にも何かあれば「日中友好」を切り札に厚顔無恥の振る舞いを繰り返す中国に対する何とも言えない感情が表現されていると感じた。ここまで読者に違和感なく小説のメイン背景のイメージを文章から与えることが出来るのは限られた作家だけであると思う。またこれも山崎小説の特徴の1つであると思うが、必ず潜む裏の裏の首謀者、主役の行く手をこれでもかと阻むライバル、献身的な妻、愛人という人物の数々が今回もまた健在であった。彼らによって物語はより色濃いものになるし、支えられている。毎回良い働きをするのがライバルという存在であり、今回ならば長幸である。陸徳が日本と中国の間に生まれた葛藤に苦しみながらも「自分は中国人だ、ここの大地で生まれたのだ」とひた向きにひた向きに努力を重ねる姿が気に入らない長幸は陸徳の出生が日本であることをネタにし、あることないことでっち上げ、ことあれば「あいつは日本人のスパイだ」「売国奴だ」と陸徳を落とし入れようとする。それだけならまだしも、必ずというほどそれを信じて肩を持つ人間、またそれを信じなくとも何とかこれを機会にのし上がってやろうと企てる人間がいることに何よりやり切れない感情にさせられるのだ。そう思うと著者は人間や社会の「暗い部分」を描くのが非常に上手い。読んでいてため息が出るほどに「読者を幻滅」させる。これは同時に著者の読者に対する警鐘のように受け取れることもある。作家としての格もスケール違うということを改めて気づかされた、今回の作品。東野圭吾や湊かなえのような推理小説やミステリー小説が悪いと言っているのではない。彼らも素晴らしい。だが、その小説1冊、文字1つ1つに込められた想い、読者へのメッセージというものを秤にかけるとどうしても、山崎豊子に敵う作家は現代では少ないのではないかと疑問に思わずにいられない。ドキドキ、ワクワクするだけが読書ではないのだと、気づかされる一冊だ。
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日中それぞれの国や人間がさまざまと描かれ、まさに大河ドラマ。戦争に巻き込まれた人々の辛苦、ビジネスに対する考え方や政治に翻弄される人々の葛藤まで見え隠れしている。しかし基本は家族や友人への愛。何度も読みたい本です。
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