免疫の意味論 の商品レビュー
免疫学の第一人者である著者の1993年の著作。 免疫とは「自己」と「非自己」を見分けて非自己を排除する営みであるということを出発点に、免疫機能の仕組み、HIVウイルス(免疫不全症候群)、アレルギー、老化現象、自己免疫、寄生虫や癌のこと等々に話は至る。 まるで哲学書でも読んでいるか...
免疫学の第一人者である著者の1993年の著作。 免疫とは「自己」と「非自己」を見分けて非自己を排除する営みであるということを出発点に、免疫機能の仕組み、HIVウイルス(免疫不全症候群)、アレルギー、老化現象、自己免疫、寄生虫や癌のこと等々に話は至る。 まるで哲学書でも読んでいるかのような深淵さに雑誌「現代思想」の連載をまとめたものと知ってなるほどなと。 我々の体内の小宇宙とも呼ぶべき驚くべき現象世界にワクワクしながら読み進んだ。本書にはノーベル賞学者の利根川進や本庶佑も登場し、当時の日本免疫学界の充実ぶりもうかがえる。 読み通してあらためて思うことは、人間(生物)が自身では全く意識することなしに、このような驚くべき生体組織を進化させてきたということだ。このような精密で複雑で合理的な営為(不可思議で非合理的に見えることもあるとはいえ)はやはり人間の想像力構想力を遥かに超えていて、創造主の意思、所業としか思えない。医療や科学に限らず自然科学は何かを全く新しく創造するというよりは、自然世界の原理法則を発見してそこに応用を加え未知の技術を開発していくものだと思うが、そういうダイナミズムも感じられて読んでいてワクワクさせられ、また哲学的で文学的な語り口が大いに好奇心を刺激してくれる。ただ少々古い本なのでアフターコロナの最新の知見も得たくなった。
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―20081023 自己と非自己を識別するのは、脳ではなく免疫系である。「非自己」から「自己」を区別して、個体のアイデンティティを決定する免疫。臓器移植、アレルギー、エイズなどの社会的問題との関わりのなかで、「自己」の成立、崩壊のあとをたどり、個体の生命を問う
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でたらめな思い込みや陰謀論が跋扈しているのが社会の実相だと思いますが、ワクチン接種について考える時に、まず読み直すべき名著にして基本文献です。文章も素晴らしい。落ち着いて「免疫論」の基本に戻る時期になっているのではないかとぼくは思います。
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知的好奇心を刺激するってことで読み始めたものの、電車の中で読むにはいささか難解すぎた。でも得るものが多い。こんな成果を上げた多田さんも他界してしまった。命っていったいなんだろうね。 ・身体的に「自己」を規定しているのは免疫系であって、脳ではないのである。 ・「胸腺」こそ、「自己...
知的好奇心を刺激するってことで読み始めたものの、電車の中で読むにはいささか難解すぎた。でも得るものが多い。こんな成果を上げた多田さんも他界してしまった。命っていったいなんだろうね。 ・身体的に「自己」を規定しているのは免疫系であって、脳ではないのである。 ・「胸腺」こそ、「自己」と「非自己」を識別する能力を決定する免疫の中枢臓器なのである。 ・人間一人の中には、約二兆個の免疫細胞があり、ほぼ1キログラムの重さになる。脳の細胞の総数より多い。~すなわち一千万種類もの異なった交代分子の有機体として免疫系は存在するのである。 ・プラトン的に言えば、我々が認識できるものは、我々がすでに知っているものに限られる。知らないものを認識できるはずがない。そうだとすれば、認識の起源は何か。それは「自己」をしることである。 ・造血幹細胞は骨髄細胞中に計算上十万個に一個の割合で存在する。しかし~造血幹細胞を完全に区別することは未だに不可能で、依然として幻の細胞である。 ・変容する「自己」に言及しながら自己組織化をしていくような動的システムを超システムと呼びたいと思う。~それを正確に規定することが出来れば、生物学の基本原理のひとつになるのではないかと思う。 ・老化の悪性なところは、生体機能の様々な部分が一様に低下していくなどと言う生やさしいものではないことである。~ある機能は低下し、ある機能は突出して高く、しかも両者が相互依存的に動く。 ・それならば、老化動物に若い動物の胸腺を移植すれば老化を防止できるだろうか~しかし、移植された胸腺はまもなく老化動物のそれと同じように退縮してしまう。胸腺を退縮させる老化のプログラムが老化動物の中で密かに働いているのである。それはどこに書かれているのだろうか。~その所在は今のところ全くわからない。 ・人間はどこまで「自己」なのか。「自己」と「非自己」の境界は明確なのか~「非自己」は「自己」の延長線上にいる。~その曖昧な「自己」を保証するものは何だろうか。生命は基本的にこの曖昧さから逃れられないのだろうか。 ・「自己」は免疫系の行動様式によって規定される。そうすると「自己」というのは「自己」の行為そのものであって「自己」という固定したものではないことになる。
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491.8-タダ 300876406 新型コロナウイルス感染症の出現で「免疫」学に興味をもった方にお勧めします。1993年に出版されたものですが、全く古さを感じさせず、自己と非自己の境界から免疫の意味を論じた優れた啓発書です。続編として「生命の意味論」新潮社 1997/2/1も...
491.8-タダ 300876406 新型コロナウイルス感染症の出現で「免疫」学に興味をもった方にお勧めします。1993年に出版されたものですが、全く古さを感じさせず、自己と非自己の境界から免疫の意味を論じた優れた啓発書です。続編として「生命の意味論」新潮社 1997/2/1もあります。多田先生は左中大脳動脈領域の脳梗塞から右麻痺、失語になり、懸命のリハビリを続けたことでも知られています。闘病記である「寡黙なる巨人」(集英社)もテラピストを志す方には一読を勧めます。
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スーパーシステムとしての免疫の仕組みについての記述はまさにいろいろなところで求められる柔軟性と同義だと感じた。生命が生きていることの神秘に触れられた。
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免疫についてあちこちで断片的に聞くが、纏まった思想が示されている。免疫は道具でなく、これこそが自分を決めるものというのは衝撃的な考え。
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1993年発行当時の話ではあるが、免疫学の現在を紹介し、 免疫から考える「自己」と「非自己」の境界線を探り、 免疫の意味をつまびらかにしようという著作。全体として 非常に興味深い内容ではあったのだが、さすがにデータに 古さを感じるのと、意味論というには少し哲学的な踏み込み が足り...
1993年発行当時の話ではあるが、免疫学の現在を紹介し、 免疫から考える「自己」と「非自己」の境界線を探り、 免疫の意味をつまびらかにしようという著作。全体として 非常に興味深い内容ではあったのだが、さすがにデータに 古さを感じるのと、意味論というには少し哲学的な踏み込み が足りないと感じてしまうのが残念。エイズウィルスに 「恐るべき悪意」が描かれているという描写も気になった。 一体誰の悪意なのかと。 「生命の意味論」に続きます。
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1993年の本。当時の免疫学の最先端を専門外の人に伝えるために雑誌「現代思想」に連載したものをまとめた本。自分としては「寡黙なる巨人」以来の多田富雄。2020年、COVID-19という感染症によって世界が変わっているタイミングでの「免疫の意味論」は意味深いものとなりました。当たり...
1993年の本。当時の免疫学の最先端を専門外の人に伝えるために雑誌「現代思想」に連載したものをまとめた本。自分としては「寡黙なる巨人」以来の多田富雄。2020年、COVID-19という感染症によって世界が変わっているタイミングでの「免疫の意味論」は意味深いものとなりました。当たり前のように感じている「自己」と「非自己」の境目。それが免疫学的には「自己」は「非自己」を認識出来るわけではなく「非自己」を取り込んだ「自己」を認識するだけ、というのっけから超面白い展開。生命科学の部分はチンプンカンプンでもありますが、ついつい、今回の奇禍が社会的ボーダーをどう引くか、という問題を顕在化させていることと重ね合わせて考えています。外に対しては完全にクローズな社会で緊急事態を乗り切ったとして、これから「ウチ」と「ソト」をどう社会デザインにしていくのか、ヒントは生命科学にあるのかもしれない、と思ったり。ミクロでありつつ、マクロに想像を繋げてくれます。名著、という世評通り。
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免疫学の専門家が雑誌「現代思想」に12回に渡り連載した内容を1冊の本にまとめたもの。免疫学的に自己とは、非自己とは何かを突き詰めることにより、免疫現象の背後にある意味について深く掘り下げていこうとする。
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