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外科室・海城発電 他五篇 の商品レビュー

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59件のお客様レビュー

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収録されている『義血…

収録されている『義血侠血』が最高です。運命的な円で結ばれながら、運命的な別れ、出会いを繰り返し、最後は悲劇で終る、涙なしには読めない物語です。

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個人的は、外科室が好…

個人的は、外科室が好みです。麻酔無しで密かに愛した医師の手術をうける貴族女性。せつなくも美しいお話です。坂東玉三郎監督、吉永小百合主演で映画化された作品です。

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自分の本当の気持ちが…

自分の本当の気持ちが周囲に漏れるのを恐れ、麻酔なしで手術を、と頼む奥様――「外科室」。壮絶な世界。

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清国の少女を暴行する…

清国の少女を暴行する「愛国者」たちと彼女を救おうとする「売国奴」を描いた「海城発電」は必読です。

文庫OFF

2023/09/02

浅学な私にとっての「泉鏡花」といえば「怪奇趣味とロマンティシズム」というように教科書的には習ったものだが、果たして読んでみた率直な所としては怪奇やロマン云々よりも’ことごとく女の人が大変な目に遭っているなあ’という所に尽きる。 収録の全7編、どれもこれも登場する美女がこれでもかと...

浅学な私にとっての「泉鏡花」といえば「怪奇趣味とロマンティシズム」というように教科書的には習ったものだが、果たして読んでみた率直な所としては怪奇やロマン云々よりも’ことごとく女の人が大変な目に遭っているなあ’という所に尽きる。 収録の全7編、どれもこれも登場する美女がこれでもかと酷い目に遭っている。川村二郎先生の解説の言を借りれば、「嗜虐的な趣向」(p268)、「美女受難」(p277)の物語に終始する初期作品集であろうと思われる。おそらくここで大事なのは’美女’がえらい目に遭うという点であり、まだ調べてはいないが多分何らかのコンプレックスやわだかまりを女性に抱いていたのではなかろうか。 少し前に読んだ、同時代に活躍した田山花袋(新潮文庫9784101079011)よりも正直なところ読み難さはあった。 以下、各話感想。 〈義血俠血〉…前半は馬車と人力車のカーチェイスにワクワクすっぞ。打って変わって後半は美女〈滝の白糸〉さんが『俠』を貫いた為に裁判の場にまで引き立てられる超展開に。めちゃくちゃだけど体温がちょっと上がるエンタメ風味。 〈夜行巡査〉…もはや意味不明レベルの発言を繰り返すくそじじいに腹が立つ。〈八田巡査〉も融通が利かないくそ堅物だが何も死ぬ事はないのにね。 〈外科室〉…表題作のひとつ。上章はわかる。あぁ、過去に〈高峰医師〉と〈貴船夫人〉の間に何らかの邂逅・ロマンスがあったのだろうとは察せられる。 が、読んでも読んでも下章の会話のどこからどれが誰の発言なのか分かりにくくて(特にp128、129の部分)、そもそもどうしてここで商人体の壮者ふたりをぽっと登場させたのか。極め付けは高峰と夫人はただ’見かけた’くらいの接点しか書かれておらず、出逢いから手術に至るまでにどういった事があったのかは全て読み手の想像に委ねられる。大胆。 〈琵琶伝〉…意に沿わず、好きでもないどころか「忌嫌ひ候」(p134)という相手の元に嫁いだ〈お通〉と、その忌み嫌われている軍人の旦那〈近藤〉と、お通の真の想い人〈謙三郎〉とのバイオレンスで不健全な三角関係の物語。終盤のお通の行動にただただ唖然。ラスト1行、リフレインの余韻がたまらない。 〈海城発電〉…とかく酷い目に逢いがちな本書中の女性陣の中でも、特に哀れなのがこの〈李花〉。〈看護員〉の男は赤十字社員としての職務は全うしたかもしれないが、彼女に対する彼のラストの振る舞いには失望しかない。蹂躙される彼女を前に「諸君」(p190)と呼び掛けた際に、彼は何と続けようとしたのか。 〈化銀杏〉…結構好き。本作品中に登場する女性陣の内で唯一、明確な死亡ではない幕引きを迎える〈お貞〉による、お貞の物語。最終的に狂ってはしまうのだが。明治の世にありながらもこんな風な思想に到達し得た鏡花の独特な精神性がうかがえる。p228からp230までのお貞の長台詞は現代の妻達にもきっと共感を得られるのではなかろうか。たぶん。 〈凱旋祭〉…戦時における狂乱を描いたと思う作品。余りにも露骨に対清戦争の勝利に浮かれる群衆と、それを一歩引いた場所からつぶさに冷静に見つめる視点(鏡花ないしは読者)。色彩描写が豊かで、「紫の幕、紅の旗、空の色の青く晴れたる、草木の色の緑なる」(p256)や「黄なる、紫なる、紅なる、いろいろの旗」(p260)や「青く塗りて、血の色染めて、黒き蕨縄着けたる提灯」(p264)など、とにかくどぎつい程にガチャガチャとカラフル。まるで、取り留めのない群衆のカオスを表現しているかのよう。 もっと作品に触れつつ、鏡花のパーソナルな面も知っていけばより一層理解が進むかもしれない。 本書を一周読み終えて改めて、彼は女性に対して何らかの思想を抱いていたのだろう。 なおかつ、短編集でありながらどの話もアクが強く、少なくとも人にあらすじを言えるくらい鮮烈に印象に残ったというのは、まさに本作が’キラーアルバム’たり得る凄味を纏っているからだと思う。 30刷 2023.9.2

Posted byブクログ

2023/08/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初期短篇の以下7作を収録。 「義血侠血」 「夜行巡査」 「外科室」 「琵琶伝」 「海城発電」 「化銀杏」 「凱旋祭」 自分の信念をつらぬく人が多く登場するのが特徴。また、どの作品にも残酷で凄惨な場面があって、文体もあいまって江戸文学からのつながりを感じ、大正時代のエログロナンセンスの源流にもなっているように思う。 読んだことのある「義血侠血」「夜行巡査」「外科室」以外では、恋人と引き離された少女が、飼っていたオウムの声に引き寄せられてたどり着いた墓場で、結婚相手をかみ殺す「琵琶伝」の印象が鮮烈。

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2023/05/09

第86回アワヒニビブリオバトル「【2日目】おうち時間DEビブリオバトル」4時間目 道徳で紹介された本です。 オンライン開催。 2022.05.04

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2021/06/16

不幸な女性ヒロインばかり出てくるのだが、それは「ほとんどフェミニズムと呼んでもよいほどの女性への敬意」の表れで「彼なりの流儀で、自立した女ないし女の自立に対する共感的な関心を抱き続けていた」かららしい。なるほど。 <収録作品> 義血侠血 夜行巡査 外科室 琵琶伝 海城発電 化銀...

不幸な女性ヒロインばかり出てくるのだが、それは「ほとんどフェミニズムと呼んでもよいほどの女性への敬意」の表れで「彼なりの流儀で、自立した女ないし女の自立に対する共感的な関心を抱き続けていた」かららしい。なるほど。 <収録作品> 義血侠血 夜行巡査 外科室 琵琶伝 海城発電 化銀杏 凱旋祭

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2021/04/03

「いいえ、あなただから、あなただから。」 『外科室』が読みたくて先にこれだけ読んだ。ん~~~ッ善い! 泉鏡花は初めてで、明治の文体につっかえながらだったけどなんとか読み切った。 現代とは異なり爵位制度が存在していて、身分違いの恋が許されなかった時代。言葉すら交わすことはなかっ...

「いいえ、あなただから、あなただから。」 『外科室』が読みたくて先にこれだけ読んだ。ん~~~ッ善い! 泉鏡花は初めてで、明治の文体につっかえながらだったけどなんとか読み切った。 現代とは異なり爵位制度が存在していて、身分違いの恋が許されなかった時代。言葉すら交わすことはなかったが密かに恋に落ちた学生と少女が歳月を経て、医者と手術を控える貴婦人として再会する。 貴婦人は夫と子供のある身で、心に抱える「秘密」をうわごとで漏らしてしまうことを恐れ、麻酔の使用を拒否し、「麻酔なしで手術を」と切々と訴える。・・・・ 句読点での台詞の区切り方が好き。1つ1つは決して長くない台詞だけど、区切り方が良いからおのおのの切々とした思いが伝わってくる。 「秘密」の美しさを「麻酔なしでの手術」という常軌を逸した状況、熟成された時間、抗えない社会構造、一言も会話をしたことがないという一種の盲目的な純情さが装飾している。すごい作品だ。

Posted byブクログ

2020/07/30

明治時代には、乃木夫婦が死を選んだように、死を美学として捉えていたのだろう。 人を愛し続けることは、時として儚く、醜い。 死で、それを包むことで、永遠の美しさに変えてしまう。

Posted byブクログ