定本 映画術 の商品レビュー
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アルフレッド・ヒッチコック 大学生のときに何度も夢に出てきて慰めてくれた心のヒーロー。娯楽作品としてのサスペンスを追い求め、「性と死」の表現を突き詰めた映像作家の父。 彼の言葉や作品のディテールを何度もなぞることで映画の正体をつかもうとしていた学生時代が懐かしい。 エンターテイナーとして美味しい味をコンスタントに提供しつづけることに執着したヒッチコックだが、それは職業監督として職人仕事をやり遂げることではなかった。あくまで表現としての映画を追求し、人間の根源的な恐怖や欲望をサスペンスという形式に昇華することに使命を抱き続けた。 同じ題材の違う作品を何度も撮ったり、形式の応用によって誰もやったことのない演出を次々と編み出した。 ヒッチコックの尽きない魅力、それは怖がりの少年が好奇心と想像力の赴くままに自分が思う「怖いとは何か」を抽象度が高いまま具現化されている奇跡にあると思う。そんなことが出来たのはもちろん歴史上アルフレッド・ヒッチコックただ一人だ。 観た作品が多すぎてひとつひとつを挙げるのは難しいので3本に絞る。 「めまい」 究極の映画のひとつ。街並を追う車のうっとりするような幻想空間を思い出すたびに映画の存在に感謝する。あまりにも有名な階段の換喩表現も勿論必見。映画言語によって内面や作品の意図が視覚的に置き換えられることこそが映画の醍醐味だが、昨今ではそれを目にすることすら珍しくなってしまった。 一度死んだはずの女の影を再現しようとする男の眩暈がこの映画でしか味わえないサスペンスの表情を生む瞬間を見逃してはならない。そう、映画とは俳優の顔、その肌合い、色気が映像として立ち現れる瞬間そのものに本質がある。 「汚名」 ヒッチコックの映画の中で最も完成度の高い作品。イングリッドバーグマンの圧倒的存在感。鳥籠に閉じ込められた女と自信のない繊細な悪役、その母親という配役の見事な関係性のサスペンスが観るものを離さない。 構成の美を追求しつくした脚本と、演出の工夫が完璧に噛み合わさった機能美の極致とでも言おうか、、、庵野秀明が言う「最小限の努力で最大限の能力を発揮する」西洋的発想の到達点だと感じる。 「ハリーの災難」 家の中で死体がどんどん増えていく滑稽を映画にしたコメディサスペンス。ヒッチコックは本の中でイギリス特有の皮肉や冷笑にこだわりがあることを公言していたが、イギリス式ユーモアを映像化した今作の魅力は尽きない。黒澤清が「蛇の道」でフォローしたのはこの映画だろう。 ホラーと笑いが表裏一体であることの根幹を表現している。死をあえて軽く扱うことによって、この世の摂理の不可思議に出会うような。形式美の頂点にいるヒッチコックだからこそ可能だった死という価値観への軽いアプローチ。しかも素晴らしいのは今作だけで表現しきろうとはせず、あらゆる作品に死の滑稽が顔を出す。 本当にあなたは素晴らしいです敬愛なるヒッチコック。
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"ハリウッドの監督は原作を裏切り、文学を台無しにするとよく言われるけれども、他の人間の創造作品に手をふれれば、それは当然そうなるにきまっている。” p.57 "〈作品〉には〈作者〉がいる。その作者が三年も四年もついやして書きあげた小説は、いわばその作者の生命そのものだ。それを、文学に取り組むなどと称して、安易に、いじくりまわし、やれ職人やら有能なテクニシャンやらが寄ってたかってでっちあげて、オスカーのノミネート作品に祭り上げたりする。真の作者がどこかに押しやられて、影もかたちもなくなってしまっているという有様。まったくわけがわからんよ。" p.57 "そう、〈愛〉というのは疑惑の影にみちた言葉だからね! 不吉な言葉だよ。" p.297 インタビュアーであるトリュフォーの、インタビュイーであるヒッチコックへの崇敬の念がまず素晴らしい。崇拝する人物を前にして果敢に切り込み、真摯に答える両者の態度も素晴らしい。 図鑑みたいにデカくて分厚い本だが一読の価値ありと覚える。ヒッチコックに詳しくなくても。映像の仕事をしていなくても。両方に該当していても。 映画監督がどのような視点を持ち、どのような考えを持っているのかを窺い知ることができる。
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ヒッチコックの作品観てこの本読んで、のルーティンでやってた。 映画の作り方を細かく述べられてて良かった。作品によって分量異なるけど。
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トリュフォーによるヒッチコックへのロングインタビューは映画製作に対する互いの敬意とこだわりが垣間見えてくる。若造元批評家が大先輩映画監督に向かう批評は時折ダメ出しを容赦なく繰り出してくるが、根底にはリスペクトがあるのでサスペンスの巨匠は憤慨する事なく解説する。これぞ映画愛なんだよ...
トリュフォーによるヒッチコックへのロングインタビューは映画製作に対する互いの敬意とこだわりが垣間見えてくる。若造元批評家が大先輩映画監督に向かう批評は時折ダメ出しを容赦なく繰り出してくるが、根底にはリスペクトがあるのでサスペンスの巨匠は憤慨する事なく解説する。これぞ映画愛なんだよね。改めてヒッチコック初期作品を鑑賞すると、毎作新たな仕掛けが披露されている。趣向を凝らした映像表現は、CGが当たり前の現在においても堪能できる。言葉ではなく映像で感情を露わにする演出はまさに映画という芸術であろう。カット割りの技法も勉強になる映画読本の一級品だと豪語する。
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処女作から最後の作品まで、華麗なテクニックとその映画人生のすべてを、520枚の写真を駆使して大公開。ヒッチコックの魅力を満載した名著、待望の決定版!!(e-honより)
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SNSでちょっとした流行になった「7日間ブックカバーチャレンジ」。 趣旨は読書文化の普及に貢献するためで、好きな本の表紙を1日1冊、7日間投稿するというもの。 外出を控えたいこの頃、なかなかの好企画で、人様の投稿も楽しみながら拝見した。 自分が挙げた未読の書籍をまとめつつ、あわせ...
SNSでちょっとした流行になった「7日間ブックカバーチャレンジ」。 趣旨は読書文化の普及に貢献するためで、好きな本の表紙を1日1冊、7日間投稿するというもの。 外出を控えたいこの頃、なかなかの好企画で、人様の投稿も楽しみながら拝見した。 自分が挙げた未読の書籍をまとめつつ、あわせて名著『読んでいない本について堂々と語る方法』をご紹介。 「7日間ブックカバーチャレンジ」のルール、~好きな本かつ表紙画像だけアップ~ということを生かして、積ん読本シリーズでピックアップしてみた。つまり未だ読んでいないものを選んでみた次第。これならお手軽で、7日間毎日選び続けることができそうだったからだ。 それに名著『読んでいない本について堂々と語る方法』にはこうある。 「書物において大事なものは書物の外側にある。なぜならその大事なものとは書物について語る瞬間であって、書物はそのための口実ないし方便だからである。」 つまり大事なのは本の表紙であると(笑)。他人の書いたブックカバーチャレンジを読んでいると、本は読むものではなくて、その人とその本の関わった背景や理由を楽しんでいることに他ならない。また、その人と作家の解釈という名の対話を読み取って楽しんでもいる訳でもある。だから、本は読まなくても充分楽しめる。そう言う意味でこの「7日間ブックカバーチャレンジ」の「本についての説明はナシで表紙画像だけアップ」というルールは秀逸だと感じた。 ● 第5日目 『定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー』 フランソワ・トリュフォー、アルフレッド・ヒッチコック 著 ミルクの白さ。映画内でケーリー・グラントが真っ白なミルクをお盆に載せ階段をあがってくる。このお盆に載ったミルクへ観客の視線が集るように、ミルクの白を際立たせる。「スポットライトをあてたのか」と尋ねるトリフォー、「いや、コップの中に豆電球を仕込んだんだ」と答えるヒッチコック。この話を何かで知って、学生時代からずっと読みたいと思っていた本。 映画『ヒッチコック/トリュフォー』を観て、まあ、この本は大きく値段が下がらないし潮時かなと思って、どこかの古書店で比較的安価なものを購入した。しかし、ぶ厚すぎて、今だに未読状態。でも、数十年間も気になっていた本だけに、自宅の書棚に鎮座しているだけで安心感をもたらしてくれる。 詳細はコチラ↓ 7日間 ブックカバーチャレンジ まとめ / 『読んでない本について堂々と語る方法』 ピエール・バイヤール 著を読む https://jtaniguchi.com/7%e6%97%a5%e9%96%93%e3%83%96%e3%83%83%e3%82%af%e3%82%ab%e3%83%90%e3%83%bc-%e8%aa%ad%e3%82%93%e3%81%a7%e3%81%aa%e3%81%84%e6%9c%ac%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%e5%a0%82%e3%80%85%e3%81%a8/
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『裏窓』が大好きな私は前のめりになって読んだ。インタビュー形式なので、とても読みやすい! ヒッチコックの根底にある考え方や遊び心にとんだ伏線など、知らなかったことをたくさん吸収できた。初期の映画とアメリカに渡ってリメイクした映画があるなんて知らなかったので、敢えて初期の作品を見て...
『裏窓』が大好きな私は前のめりになって読んだ。インタビュー形式なので、とても読みやすい! ヒッチコックの根底にある考え方や遊び心にとんだ伏線など、知らなかったことをたくさん吸収できた。初期の映画とアメリカに渡ってリメイクした映画があるなんて知らなかったので、敢えて初期の作品を見て見ようと思う。
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本書制作時は、映画監督50本目と大々的に公開された引き裂かれたカーテンが興行的に恵まれず、ハリウッドでは既に過去のヒト扱いされ、意気消沈の本人の前に現れたフランス人若手監督。自分に対する昨今の厳しい風評とは間逆の“ヒッチコック愛”にそうとう本人も気を良くしたのだろう普段ならジョー...
本書制作時は、映画監督50本目と大々的に公開された引き裂かれたカーテンが興行的に恵まれず、ハリウッドでは既に過去のヒト扱いされ、意気消沈の本人の前に現れたフランス人若手監督。自分に対する昨今の厳しい風評とは間逆の“ヒッチコック愛”にそうとう本人も気を良くしたのだろう普段ならジョークではぐらかすのにかなり手の内の詳細を明かしている。ましてセルズニックの軟禁状態から脱し、自身で独立プロを立ち上げ制作されたロープ、山羊座のもとに が惨敗した件では、自分は当時思い上がっていた。と素直に反省の弁を述べるなどあまり本心を明かさない彼にしては珍しい。 一時代を築いた人間は、歴史を学べと言う。つまるところ、自分をもっと崇めよ褒め称えよと云うことなのだが、ヒッチコックもトリュフォーのこのインタビューで映画作家としての自分をもっと評価してもらいたかったのかもしれない。 またヒッチコック本人も忘れているような細いシークエンスに対するトリュフォーの鋭い質問は、サスペンスの巨匠を単なるおざなりのインタビューではなく本気にさせたのかもしれない。 読み進めてゆくと二人の関係が師弟のように感じられるのが微笑ましい。 エリック・ロメールだったか、「トリュフォーの夢はパトリシアと結婚することだ。」と言っていたそう、その話を聞いた時少し背筋が冷んやりしたものだが、ヒッチコックの愛娘と婚姻関係を結ぶことでサスペンスの巨匠の(義理の)息子になることを夢見た若き映画監督の過剰なまでのヒッチコック愛に圧倒される。 本書は、手元置いておきヒッチコックの映画が繰り返し観るように読まれる本であると思う。 巻末の山田、蓮實対談は本書を補完する意味でとても重要。
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図書館で借りたが、あまりにも量が多くて2週間では読めなかった。流し読みをしたが、それでもヒチコックの映画は計算されて作られた映画であったのだと理解できた。
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漫画家の荒木飛呂彦氏も作品作りの参考にしていると言う、映画作家のフランソワ・トリュフォーと、映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの対談集。トリュフォーがヒッチコックにインタビューを行い、ヒッチコックがそれに答える形式となっています。 映画のプロットの根源にある幼年期の体験。観...
漫画家の荒木飛呂彦氏も作品作りの参考にしていると言う、映画作家のフランソワ・トリュフォーと、映画監督のアルフレッド・ヒッチコックの対談集。トリュフォーがヒッチコックにインタビューを行い、ヒッチコックがそれに答える形式となっています。 映画のプロットの根源にある幼年期の体験。観客を惹きこませる映像の撮り方。映画に対するこだわりまで、ヒッチコックが赤裸々に語っています。「敵役が魅力的な映画は良い映画」「写実的に撮るばかりが良いとは限らない」「観客は皆のぞき魔である」など、語られた当時撮影に用いられた撮影技法や心理トリックは、今でも通じるものがあると実感します。 厚く、重いですが、映画が好きな人、映画業界に憧れる人、その他小説に漫画にゲームに3DソフトにMikuMikuDanceに、創作活動に携わっている人、興味がある人に全てにオススメしたい一冊です。
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