パリ・ロンドン放浪記 の商品レビュー
「1984年」で知られるイギリスの作家である著者の、有名になる前の経験を下敷きにした作品。 名門校を出て公務員になったのに、安定した人生を捨ててパリとロンドンの貧民街で暮らす人生に。結構悲惨な暮らしなのですが、その中でも彩り豊かな登場人物や著者の余裕のある語り口が読みやすい作品に...
「1984年」で知られるイギリスの作家である著者の、有名になる前の経験を下敷きにした作品。 名門校を出て公務員になったのに、安定した人生を捨ててパリとロンドンの貧民街で暮らす人生に。結構悲惨な暮らしなのですが、その中でも彩り豊かな登場人物や著者の余裕のある語り口が読みやすい作品にしています。 例えば、「いたるところで、買い手のない山のような食べ物がわたしを侮辱する」という表現、困窮している割に何ともユーモラスです。 時代感をあまり意識せずに読み始めたら、暮らしぶりの酷さに「産業革命後かな?」とも思ってしまったのですが、メトロもタクシーも走ってるし、1927年からの世界恐慌前夜だったんですね。 GEが電気冷蔵庫を作り始めていた時代にも、着る物も満足になく、寒さに凍えながら寝る人々が多くいたというのは、きっといつの時代でも多かれ少なかれこういう要素は残っているもので、もちろん今でも同じことで、忘れてはいけないことなのだと思います。 ちなみに、表紙のあらすじには「自らに窮乏生活を課す」って書いてあるのですが、読んでいて受けた印象としては、どうにもやむにやまれずに貧民街に腰を落ち着けて、そのうち抜き差しならなくなったようにも見えます。。 しかし、47歳の若さで結核で亡くなられた著者。どうにもこの生活が影をさしていたのではないかと…。
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オーウェルが体験した窮乏生活を描くルポ。 パリでは一日十七時間の激務なのに食べていくのが精一杯の奴隷的な生活、そして、ロンドンでは救貧院や安宿を転々としてパンと紅茶の施しを求める浮浪生活…。 浮浪者をたんに"働かざる者"とする社会の偏見を反駁し、その存在理由を明らかにする考察には後に優れた評論を残す著者らしさが発揮されています。 貧しさが人の精神を荒廃させ、それはいかに社会全体の責であるのか、考えさせられます。現代の日本にも多く当てはまるのは言わずもがなです。 自分の恵まれた環境を顧みて、恥入らずにはいられないショッキングな内容でした。ちょっと残業が続いたくらいで泣言を並べる自分が恥ずかしい(笑)。自分が今後どうなろうと、"金があろうがなかろうが同じ生き方ができる"と言う大道絵師ボソのように矜持をもって生きたいです。
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1984年の著者で有名なジョージ・オーウェル。 若い時に、あえて貧乏生活を自分に課して どんぞこの生活をする。 3日に1日のパン。寝る暇もない労働。浮浪者となりイギリスを彷徨う。。 自分が見ている世界とまったく違う世界。 それが目の前にあるように感じられるように書いている。 ...
1984年の著者で有名なジョージ・オーウェル。 若い時に、あえて貧乏生活を自分に課して どんぞこの生活をする。 3日に1日のパン。寝る暇もない労働。浮浪者となりイギリスを彷徨う。。 自分が見ている世界とまったく違う世界。 それが目の前にあるように感じられるように書いている。 純粋に面白い。 これを読んだ後にいまの自分の生活を省みるとどんだけ恵まれてるんだと思う。
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あまりに飄々としていてユーモラスなんで、 フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。 いや、それくらい楽しい本ではあるんです。 フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、 ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、 20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいで...
あまりに飄々としていてユーモラスなんで、 フィクションかと思えてくるんですけどルポタージュなんですよね。 いや、それくらい楽しい本ではあるんです。 フランスでの変人に囲まれた貧乏暮らしにしても、 ロンドンでの浮浪者暮らしにしても、 20世紀のヨーロッパの裏側が見える感じがいいですね。 それにしたって陰鬱な雰囲気ではなく、 どこか異世界の物語を読んでいるように感じられます。 軽妙なタッチで書かれているので読んでるときは気づきませんでしたが、 これが実体験だというのは、なかなか凄いことだと思いますよ。 こういう人になりたいもんだと思います。
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自らに貧乏生活を課し、パリとロンドンで浮浪者となった作者の生活と、出会った人々達とのエピソード集。 文体から彼の誠実な人柄が伝わってきて面白い。パリ編はコミカルだが、ロンドンでは浮浪者に対する扱いの差が起因しているのか、重々しい。 一人一人の浮浪者達が生き生きと描かれていた。...
自らに貧乏生活を課し、パリとロンドンで浮浪者となった作者の生活と、出会った人々達とのエピソード集。 文体から彼の誠実な人柄が伝わってきて面白い。パリ編はコミカルだが、ロンドンでは浮浪者に対する扱いの差が起因しているのか、重々しい。 一人一人の浮浪者達が生き生きと描かれていた。浮浪者も、金持ちも、同じ人間であると作者は伝えている。
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大した家柄の筆者が身をやつして、戦間期のパリとロンドンで最下層の生活をレポートする。戦勝国にもロクでもない生活があったという当たり前の事実に気付かされるとともに、ロクでもない生活を最大限に楽しむ心意気を感じられる。 この筆者はなぜここまでやるのだろうという興味がムクムクと湧く。筆者がこの後にスペイン内戦に身を投じるのは当然の流れなのか。なんにしても密かにあこがれのルポライターである。
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シュール。とか言っちゃいかんのかな。いやなんかでも馬鹿馬鹿しさが湧いてくるっていうか漂っているっていうか。なんだろね。
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『1984』や『動物農場』で知られるジョージ・オーウェルは、世界恐慌の余波がまだ残るパリ、ロンドンを放浪していた。そのときの悲惨な貧困生活をユーモア溢れる文章で記したのが、この『パリ・ロンドン放浪記』。 特に興味深いのが、オーウェルがどんなに貧しくなっても、虚栄心を捨てきれな...
『1984』や『動物農場』で知られるジョージ・オーウェルは、世界恐慌の余波がまだ残るパリ、ロンドンを放浪していた。そのときの悲惨な貧困生活をユーモア溢れる文章で記したのが、この『パリ・ロンドン放浪記』。 特に興味深いのが、オーウェルがどんなに貧しくなっても、虚栄心を捨てきれないという描写。例えば、お金あるときにはレストランで外食することができたが、困窮極まってそれが不可能になってしまってからも、見栄をはるためにレストランへ行く振りをして公園で時間を潰し、帰りにパンをポケットに忍ばせてこそこそとアパートに帰る。他にも、ルームメイトと食べ物を譲り合って、結局相手に食べ物の取り分を多くとられてしまったりする。それでさらに可笑しいのは、ルームメイトがその譲り合いで食べ物を多くとってしまうことに、密かにオーウェルが腹を立ててるということ。それだったら最初から見栄を張らなかったらいいのに!人間は虚栄心のために愚かで不合理なことをしてしまう、そんな滑稽さがとても可笑しい。 もう一つ興味深かったのは、オーウェルがホテルのレストランで皿洗いをしていたときの話。レストランの食事をするところでは、華やかな社交場が展開されている。それとは対照的に、オーウェルが働く厨房はというと、ゴミの山が積まれ、ネズミが我が物顔に走り回る始末。そんな環境から出される料理に表の客たちは舌鼓を打つ。さらにひどいことに、忙しさや客に腹を立てた従業員は、華やかな世界の人々へのささやかな復讐として、スープにつばを吐く。こんな状況は、映画『ファイトクラブ』でも描かれていた。監督は、『パリ・ロンドン放浪記』を読んでいるのだろうかと気になる。飲食業で働いていた人たちは、ここまで極端ではないにしても多かれ少なかれ、共感を持てるのではないだろうか。僕が高校のとき、バイトしていたところでも、例えばラーメンの麺がのびすぎたら冷麺にまわすといったことなどが行われていた。「自分が働いていた店では、自分は決して食事しようなどとは思わない」、そう思う人は多いと思う。オーウェルはこう皮肉を言う、飲食業で働くという経験をした「おかげで幻想のひとつ、すなわちフランス人は見ただけで料理のよしあしが分かるという妄想を打破することができた」。 この作品は、ドキュメンタリーという体裁をとっているけれど、小説としても十分楽しめることができる。
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オーウェルによるパリ・ロンドンでの貧乏放浪ルポ。貧乏は人間を動物的にする。「人間性」とは、或る程度の豊かさの産物か。悲惨な境遇の中でも自分の哲学を作り上げて笑いながら暮らしているボゾという人物が面白い。動物的であれ、ともかく、逞しく生きていくこともできるのが人間か。
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パリ編は面白いけれど、ロンドン編は少し面白さが地味,ジャックロンドンの奈落の人々への言及が一ヶ所あるのも興味深かった。この本は傑作、でも広く読まれる事はもう無いかな
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