パリ・ロンドン放浪記 の商品レビュー
パリ編とロンドン編に…
パリ編とロンドン編に大別できますが、前者では、貧しくても明るくてたくましい人たちがたくさん出てきて笑えます。
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ヨーロッパの2大都市…
ヨーロッパの2大都市、パリとロンドンの下層社会におけるオーウェルの体験記です。当時のパリとロンドンの下層社会の悲惨な状況が良くわかります。「ウィガン波止場への道」でもそうですが、オーウェルは下層社会を見聞するのが好きなのですかね?
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前半のパリでは、高級ホテル、高級レストランで働いていた筆者がその裏側のとんでもないカオスぶりを面白おかしく描き出す。人物描写が巧みで、活気にあふれた破茶滅茶な喧騒があたかも目の前で起きているかのような臨場感。どんちゃん騒ぎのパリ、ちょっとみてみたい。 後半のロンドンは、浮浪者に身...
前半のパリでは、高級ホテル、高級レストランで働いていた筆者がその裏側のとんでもないカオスぶりを面白おかしく描き出す。人物描写が巧みで、活気にあふれた破茶滅茶な喧騒があたかも目の前で起きているかのような臨場感。どんちゃん騒ぎのパリ、ちょっとみてみたい。 後半のロンドンは、浮浪者に身を窶した筆者の、まさしく放浪記である。魅力ある浮浪者仲間の生き様はときに明るく読める瞬間もあるが、根本的にはイギリスの制度上の問題や大衆の意識について、鋭い疑問を投げかけている。 ブレイディみかこ氏の「労働者階級の反乱-地べたからみた英国EU離脱-」でも似たようなことが述べられていた点は非常に面白い。 本書は約100年も昔に書かれたものにも関わらず、Brexitを引き起こしたイギリスの問題の本質について警鐘を鳴らしていたのである。 (というか100年あっても人間の性質なんてほとんど変わらないのだとも言える) 大衆、いわゆる一般市民と自負する人々の視点からは、”彼ら”(=浮浪者、失業者たち)は労働意欲がなく、酒ばかり飲んで、ときには暴力を振るう危険で野蛮な奴ら、というレッテルを貼って別人種だとみなされる風潮がある。自分も一歩踏み外せば失業して同じような生活になる可能性があるにも関わらず、意識の上では社会階層が完全に分断されているようだ。 オーウェルが指摘したこの分断意識の問題は、100年後のBrexitの国民投票において、”見捨てられた人々の反逆”として形に現れた。 イギリスだけじゃなく日本、というか世界中で分断が進む現代においては絶対読んでおくべき本。社会の一員として、この問題を”自分ごと”だと意識するための重要な視座を与えてくれる。
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前半はパリの貧窮生活、後半はロンドンの浮浪者生活を描くルポルタージュ。 パリのホテルの裏方現場の様子が、具体的かつとてもイキイキしていて、目に浮かぶようだ。 ロンドン生活の描写はもっとあっさりしているが、罵言の変遷や施しを受ける浮浪者の心理など、オーウェルの着目点は今読んでも新...
前半はパリの貧窮生活、後半はロンドンの浮浪者生活を描くルポルタージュ。 パリのホテルの裏方現場の様子が、具体的かつとてもイキイキしていて、目に浮かぶようだ。 ロンドン生活の描写はもっとあっさりしているが、罵言の変遷や施しを受ける浮浪者の心理など、オーウェルの着目点は今読んでも新鮮で魅力的だ。 翻訳もとても読みやすい。
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パリ・ロンドンの旅行記を想像していたら、良い意味で裏切られた。 パリのホテルについての考察はブルシットジョブとも通づる。
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外資系ホテルの設計をしているときに読んだ本。なぜ外資系ホテルがことこまかに従業員の働く環境について規定を設けているかよくわかる。こういう歴史があり、それを改善しようとした結果なのだと理解できれば、納得できる設計ができると思う。
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『屋根裏部屋の一つには、仮装舞踏会で履くようなアメリカ向けのけばけばしい靴を作っている、ブルガリア人の学生がいた。この学生は六時から十二時までベッドの上にすわりこんで十二足の靴をつくり、三十五フラン稼いだ。そして、あとの時間はソルボンヌの講義に出るのだった』 ジョージ・オーウェ...
『屋根裏部屋の一つには、仮装舞踏会で履くようなアメリカ向けのけばけばしい靴を作っている、ブルガリア人の学生がいた。この学生は六時から十二時までベッドの上にすわりこんで十二足の靴をつくり、三十五フラン稼いだ。そして、あとの時間はソルボンヌの講義に出るのだった』 ジョージ・オーウェルといえば「1984」で、全体主義を揶揄するディストピア小説ということになるのだろうけれど、近未来として描かれたその年は既に過去の時となり、危惧されていた第三次世界大戦も起こらず、現実の世の中はオーウェルが極端に描いて見せた世界とは異なっている。しかしそこに描かれた人々の暮らしは、実のところ絵空事ではなく、少しだけ見方を変えれば直ぐにでも現実味を帯びて迫ってくるもの。それどころか、1930年代に紀行文として書かれたこの「パリ・ロンドン放浪記」で炙り出された貧困層の生活からは、世間という大きな機構の中にがんじがらめに絡め捕られてマトリックスの中で生きるしかない仕組みが透けて見えて来る。 興味深いのは労働党の、煎じ詰めれば社会主義の、支持者であったオーウェルが、そのイデオロギーが容易に行きつく先であろう全体主義を否定していること。オーウェルがどのような社会主義の善良なる世界を夢想していたかは理解していないけれど、本書の中で吐露される社会観は、既存の社会制度の歪を凶弾しより良い仕組みがあるのではないかと問い掛けているように読める(例えば、何故イギリスでは放浪者が放浪し続けなければならないのかを問うくだり、など)。ただし、本書はそのような提言が主題ではなく、優れたルポルタージュ文学作品として認識されているようだ。 確かに、公務員の職を辞して執筆活動に専念するため自ら不自由な暮らしに飛び込んでいったとは言え、行き着いた貧困の境遇について自己憐憫の泣き言を書き連ねることはない。むしろ貧乏生活を分かち合う人々との交流を楽しんでいるような(特にパリ編は、まるでほら吹き男爵の冒険譚のような)雰囲気すら感じさせる文章は読んでいて楽しい。もちろん、きらびやかな表舞台の裏側で人々が目を逸らしたくなるようなおぞましい、だがそこで生きる人々にとっては当たり前過ぎる現実の世界が存在することもきっちり描いていて、その意味では後年「1984」のような社会の歪をディストピアとして描き出すような作家の視点は既にあったのだとも言えるのかも知れない。 パリの市井にどっぷりと浸かって生活していたとはいえ、やはりフランスがどこまでも異国であったのとは異なり、イギリスへ戻ってからの放浪生活の描写には社会的な矛盾に対する憤りのようなニュアンスが所々で顔を出す。野に在ってもジェントルマンとして社会的責任を感じるよう育ったパブリックスクール出身者の矜持のようなものが疼くのだろうか。翻訳者はその部分は「無くもがな」とするけれど、むしろその部分が肝心なようにも思うのだが。 『物乞いの暮らしと、世間的に体裁のいい生活を送っている無数の人びとのそれとのあいだには、何ら「本質的な」相違などありはしない。物乞いは働かないと言っても、では、「働く」とはどういうことなのか? 土工はつるはしを振るって働く。会計士は計算をして働く。物乞いは晴雨にかかわらず戸外に立ち、静脈瘤や気管支炎になりながら働いているのだ』
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凄い内容ではあったんですが勝手に想像してた放浪記と乖離していて重め暗めでした。この日々を見てジョージオーウェルは作家性を増したのですね。
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『1984年』、『動物農場』と、政治思想を前面に押し出した作品を書いた著者が、どのような旅の記録をまとめるのかと身構えつつ読んでみたけれど、これは面白い……。 いえ、面白いと言ってはいけないのかも。 パリとロンドンでの浮浪者生活を描いたものなのだから。 パリでは道端で人が死んでも...
『1984年』、『動物農場』と、政治思想を前面に押し出した作品を書いた著者が、どのような旅の記録をまとめるのかと身構えつつ読んでみたけれど、これは面白い……。 いえ、面白いと言ってはいけないのかも。 パリとロンドンでの浮浪者生活を描いたものなのだから。 パリでは道端で人が死んでも驚かないほど無気力な窮乏生活を送り、皿洗いの仕事を得る。 食堂の裏側のおぞましいほどに不潔で、ちょっとおかしな話を読み、外食はしたくないと思わせられた。 英国では仕事が得られず各種の収容所を巡る。 その実体験を通じて、浮浪者は特別な存在でないと論じる箇所は説得力があった。 他のルポルタージュも読んでみたい。
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ジャック・ロンドンと違い、著者はイギリス人=ヨーロッパ人であること、そして、必要に迫られて貧乏暮らしをしたことなど、貧しさが他人事ではない印象。 そして面白いのは、母国については批判的なのに、パリに対しては友人のような気安さがある。 「金が人間を労働から解放してくれるように、貧...
ジャック・ロンドンと違い、著者はイギリス人=ヨーロッパ人であること、そして、必要に迫られて貧乏暮らしをしたことなど、貧しさが他人事ではない印象。 そして面白いのは、母国については批判的なのに、パリに対しては友人のような気安さがある。 「金が人間を労働から解放してくれるように、貧乏は人間を常識的な行動基準から解放してくれる」 そして、考えないようになっていく。 本当の貧乏の中で、革命は生まれないのではないかという気づきが新鮮だった。 そういう意味で、今の日本は全体的に貧しいと思う。誰も自分で考えず、誰かが考えてくれるのを待ち、それが気に入らないと「批判」する。 そんな仕組みの中で、埋もれないようにしたいものだ。
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