ホテル・ニューハンプシャー(下) の商品レビュー
よくある暖かいホームドラマと思いきや、登場人物は皆変人。夢に取り憑かれた父さんに盲目のフロイト。ホモのフランク、小人症のリリー、難聴のエッグ、勝ち気でレイプに悩むフラニー、熊のスージー。僕、ジョンはそんな変人の中では中立であり、それ故にこの小説の語り手になっているが、実の姉を愛し...
よくある暖かいホームドラマと思いきや、登場人物は皆変人。夢に取り憑かれた父さんに盲目のフロイト。ホモのフランク、小人症のリリー、難聴のエッグ、勝ち気でレイプに悩むフラニー、熊のスージー。僕、ジョンはそんな変人の中では中立であり、それ故にこの小説の語り手になっているが、実の姉を愛している。 アメリカ、オーストリアそれぞれのホテルを舞台に織りなす物語は悲しみが常に漂っている。しかしその悲しみは三月に降る静かな雨のように心をかき乱すことはなく、むしろ優しく寄り添っている。 そんな悲しみに向けて祖父であるアイオワボブやスージー、リリーときにはフランクの言葉がどう対処すればいいのか教えてくれる。 それぞれの人生論、人生観を描いた傑作だった。特に私はアイオワボブ定められた運命には逆らえない、だけどなるようになるさという人生論に助けられた。 「ソローは漂う」 「開いた窓の外を見ずに通り過ぎなさい。」 「一生ネジで固定されているんだよ」 名言が多いのも印象的
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全体的にどこかおとぎ話のようにふわふわしていながら、家族間のやり取りなどは非常に繊細でリアルに感じられました。ときに面食らうような場面も多いけれど、物語の持つ大きな力を感じた作品です。ずっと読みたいと思っていたけれど、やはり読んでよかった!
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いろいろなことが起こる話だ。 およそ想像できるいろいろな幸せと、悲しみ。 だからこそ、僕たちは心に熊をもつことが必要だ、とまとめてある。 自分だけの、熊。 強くて大きくて無邪気なよりどころ。 話の散らかり方、そして最後の収束の仕方がすごく鮮やかだった。 お伽話、といわ...
いろいろなことが起こる話だ。 およそ想像できるいろいろな幸せと、悲しみ。 だからこそ、僕たちは心に熊をもつことが必要だ、とまとめてある。 自分だけの、熊。 強くて大きくて無邪気なよりどころ。 話の散らかり方、そして最後の収束の仕方がすごく鮮やかだった。 お伽話、といわれるのもわかる。 個人的な問題を、普遍的なテーマとして描く。 創作物の本質的なところを、アイオワボブは言っていた。 夢を見続け、漂い続けるしかないとして、 そこにゴールはないとしたら、 僕も熊を見つけなければならないわけで、 僕自身それがなんなのかがまだわかっていない。
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まさに言葉の洪水、 感情の洪水。 印象に残る言葉がたくさん出てきて どれを取り上げていいか分からないという感じだね。 物語の始まりから、この終わり方は全く想像がつかない。 それでいて、本当に落ち着いていて 静かないい終わり方。 こんなにたくさん悲しいことが起こる小説なのにね...
まさに言葉の洪水、 感情の洪水。 印象に残る言葉がたくさん出てきて どれを取り上げていいか分からないという感じだね。 物語の始まりから、この終わり方は全く想像がつかない。 それでいて、本当に落ち着いていて 静かないい終わり方。 こんなにたくさん悲しいことが起こる小説なのにね。 一言で感想を申し上げるにはあまりに長くて、 あまりにいろんなものを含んだ小説。 いい小説です。
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後半は怒涛の展開だった。前半で嫌というほど主要人物の説明がされていたため、キャラがどんどん運命に飲み込まれていく展開に引きこまれて一気に読んでしまった。でも、悲惨というにはちょっとユーモアとサービス精神が多すぎて、泣いたらいいんだか笑ったらいいんだか。多分一生忘れない類の物語だっ...
後半は怒涛の展開だった。前半で嫌というほど主要人物の説明がされていたため、キャラがどんどん運命に飲み込まれていく展開に引きこまれて一気に読んでしまった。でも、悲惨というにはちょっとユーモアとサービス精神が多すぎて、泣いたらいいんだか笑ったらいいんだか。多分一生忘れない類の物語だった。全てお気に入りのシーンといっても過言ではない。でも、一つだけ選ぶなら、ウィーンでのお父さんの活躍が痛快で好きだ
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辛いできごとが多いのになぜこうも幸せな気持ちに満ち溢れているのだろう。なんの疑いもなく家族を愛せる心。さみしいのにあたたかい。残酷とユーモアの調和。 まるで人生のような小説。この小説は荒唐無稽な「おとぎ話」なのだろうか。実はわたしが生きる現実の人生も、そう変わりなく数奇なのでは...
辛いできごとが多いのになぜこうも幸せな気持ちに満ち溢れているのだろう。なんの疑いもなく家族を愛せる心。さみしいのにあたたかい。残酷とユーモアの調和。 まるで人生のような小説。この小説は荒唐無稽な「おとぎ話」なのだろうか。実はわたしが生きる現実の人生も、そう変わりなく数奇なのではないか。
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一人一人が、ゴツゴツといびつで、切り立っていたりざらついていたり、 手のひらですくい上げると色も形もさまざまな、そんな石を連想してしまったペリー家の人々。 次々襲い来る悲惨なできごとに、互いに関わり合いながら、向き合うすべを探しだしてゆく。 家族物語ではあるけれど、ありがちな甘...
一人一人が、ゴツゴツといびつで、切り立っていたりざらついていたり、 手のひらですくい上げると色も形もさまざまな、そんな石を連想してしまったペリー家の人々。 次々襲い来る悲惨なできごとに、互いに関わり合いながら、向き合うすべを探しだしてゆく。 家族物語ではあるけれど、ありがちな甘ったるさや湿っぽさはない。 だからこそか、かえって深いつながりを感じた。 過激で痛々しくて、でもユーモラスで哀しく暖かい物語。 彼らみな、愛おしい。 いつの日か、また読み返しそう。
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2012.07.12 読むのにだいぶ時間がかかってしまった。 ホテルを経営する一家の話、と簡単に書いてしまうわけにはいかない。 しかし、どのような言葉でこの本を説明していいのかもわからない。 シンプルなようで複雑。 複雑なようでシンプル。 読後感が、さわやかな内容ではないの...
2012.07.12 読むのにだいぶ時間がかかってしまった。 ホテルを経営する一家の話、と簡単に書いてしまうわけにはいかない。 しかし、どのような言葉でこの本を説明していいのかもわからない。 シンプルなようで複雑。 複雑なようでシンプル。 読後感が、さわやかな内容ではないのに、ちょっぴりさわやかな感じがするのは何故か。 映画があるみたいなので、そちらも観てみたい。
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これから先、何が起こっても平気になれるような気がする。 どんなことも“処理”できるような気がする。 人間なんて、いくつになっても不安になったり、自信を失くしたり、おじけづいたりするけど、この本がそういうことをすべて拭い去ってくれそうな気がする。
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