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万延元年のフットボール の商品レビュー

4.1

73件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    13

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

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2015/06/15

日本文学に疎いため、恥ずかしながら初めて読む大江作品。出だしから重く、暗く、救いのない状況の主人公。アメリカから帰った弟たちと、実家の売却のために久しく帰らなかった郷里の部落を訪れる。そこで見聞したのはさらに忌まわしい歴史と現状。そうしたおどろおどろしい村社会の人間関係をどこか他...

日本文学に疎いため、恥ずかしながら初めて読む大江作品。出だしから重く、暗く、救いのない状況の主人公。アメリカから帰った弟たちと、実家の売却のために久しく帰らなかった郷里の部落を訪れる。そこで見聞したのはさらに忌まわしい歴史と現状。そうしたおどろおどろしい村社会の人間関係をどこか他人事のように眺める主人公と、そこに深く関わり万延元年の一揆を再現しようとする弟。その時代性なのか、なんともやりきれない重苦しさが苦々しく残る。作者は何を伝えたかったのか、真意が分からぬままに読み終えた。今は読むべき時ではなかったのかもしれない。

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2014/10/04

下手な翻訳文のような、注意深く選びとられて長々と装飾された言葉の羅列に息が詰まる。 会話になると急に世界が矮小になったと感じる。五感でさえ人間を中心に存在しているわけではない、この退廃的で重苦しい空気が表現されています。

Posted byブクログ

2014/07/29

隠喩に富んで、いたのだろうか。 大江に先にはまったのは、私の方だった。ただ、万延元年のフットボールだけは友人が先で、とにかく感銘を受けたからと、こちらの積ん読を一つずつ崩す楽しみを無視して割り込まんとしてきたのである。しかし、このような義務感から、技巧的にもテーマ的にも考え抜か...

隠喩に富んで、いたのだろうか。 大江に先にはまったのは、私の方だった。ただ、万延元年のフットボールだけは友人が先で、とにかく感銘を受けたからと、こちらの積ん読を一つずつ崩す楽しみを無視して割り込まんとしてきたのである。しかし、このような義務感から、技巧的にもテーマ的にも考え抜かれたであろうこの著書をあらぬことか斜め読みしてしまったのである。 含蓄やギミックの多い物語を斜め読みすることは、一夜の夢を見るようだ。思考は途切れ、飛び、気まぐれに繋がり、そしてまた散る。同じくノーベル文学賞を受賞した莫言との比較や、スーパーマーケット襲撃を百姓の一揆と重ねたようなストーリーを、次には関東大震災時の朝鮮人差別に重ねたり…。そしてまた、大江自らの障害児の子がここにも登場するという事や、バードと鷹の関係性など…。全て、思考は夢の中で、途切れ途切れ。

Posted byブクログ

2014/07/21

 1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。  今まで読んだ著者の作品の中で一...

 1967年発表、大江健三郎著。友人が死んだ主人公、アメリカから帰ってくる弟、障害児を生んだ主人公の妻。彼らは故郷である四国の村へ向かう。そこで弟の主導の元、スーパーへの略奪が起こり、万延元年の一揆をなぞるように、村全体を巻き込んだ暴動が始まる。  今まで読んだ著者の作品の中で一番面白かった。思想や人間心理や土着的な知識が混然となっていて、何だかラテンアメリカ小説に似た熱を感じる。  著者が本小説の前に書いた「個人的な体験」では少し荒さが目立った気がしたが(特にご都合主義的なラストシーン)、この小説ではそういった欠点がしっかり取り除かれている。序盤は確かに少し退屈だが、ストーリーが村に行き着くと、大食病の女、隠遁者ギー、スーパーマーケットの天皇、それに村の伝説など、興味深い要素が次々飛び出してくるため読んでいて飽きない。そしてその勢いを保ったまま最後には、弟の持っている破滅的思想があらわになり、村の伝説に関する種明かしもあり、主人公と妻が村から旅立つ爽やかなシーンで終わる。  時代を象徴した暗喩として解釈もできそうだし、神話的な美しさもあるし、大江健三郎的だとしか言いようのないオリジナリティ溢れる文体を楽しめるし、純粋にキャラクターや物語自体が面白い。総合的に見て、理想的な小説だと思う。

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2014/01/12

圧倒された。一文が長く熟語が多い、からみつくようなゴツゴツした文体に巻き込まれてすっかり虜になってしまう。 それでいてあらゆる葛藤が盛り込まれ歴史にも搦め捕られて……

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2013/09/30

ところどころ面白いと感じた。が、難しかったけどやはり。戦後文学の代表作とも言われる本作が今ではあまり読まれていないのは、新潮社ではなく講談社から出ていることも理由だと思う(講談社さんごめんなさい)。

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2013/09/24

再読。何度読んでも、一種の難解さが立ちふさがるようだ。それは、ひとえにこの小説が、大江の極めて個的な体験と、その時期の思想に立脚しているからだろう。大江文学の重大な転換点にもあたると思う。『個人的な体験』は、第3者を仮構したバードを主人公として語られていたが、ここでは大江を思わせ...

再読。何度読んでも、一種の難解さが立ちふさがるようだ。それは、ひとえにこの小説が、大江の極めて個的な体験と、その時期の思想に立脚しているからだろう。大江文学の重大な転換点にもあたると思う。『個人的な体験』は、第3者を仮構したバードを主人公として語られていたが、ここでは大江を思わせる「僕」が主人公であり、物語の語り手である。もちろん、「僕」は大江自身ではないし、何重にも時間と空間が重層したメタフィクションの中でのフィクションとしての「僕」である。自己処罰、恥辱、絶望と物語世界はひたすらに沈鬱だ。

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2013/08/14

この人の文章って、一文が長い。主語から述語まで何行にも渡り、あれ?主語誰だっけ?と読み直さなければならないことしばしば。だからめちゃくちゃ時間がかかる。俺だけ? もう何冊目かになるんだけど、いつもゲンナリして、でもまたしばらくすると、いや、我が国の誇るノーベル賞作家(カッコワラ...

この人の文章って、一文が長い。主語から述語まで何行にも渡り、あれ?主語誰だっけ?と読み直さなければならないことしばしば。だからめちゃくちゃ時間がかかる。俺だけ? もう何冊目かになるんだけど、いつもゲンナリして、でもまたしばらくすると、いや、我が国の誇るノーベル賞作家(カッコワライ)なんだからきっと何かあるはずなんて考えてまた次の本を手に取りまたゲンナリ(笑) ありがちな主人公成長もの。すったもんだの末成長した主人公(カッコワライです。あくまでも)。最後の10ページぐらいは、なんか(著者らしくない)すがすがしさだった(笑)

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2013/05/28
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

レビューすることを放棄したくはないけれど、 この作品を的確に言い表すのは難しい。 中盤まで文章は深く淀み、息苦しい。 得体の知れない嫌悪、不安がまとわりつく。 後半は物語が展開して文章的には読み進めやすくなるが 不安はますます確信めいて目を離すことも出来ない。 寝取られとか読んでるだけでも辛いよ。 これ以上苦しめないで!苦しまないで! 登場人物より読者のほうは思い悩むのは何故だ。 しかし最後前向きに終わるのに違和感がある。 どこに希望があったの……?

Posted byブクログ

2013/04/06

彼自身の状況を象徴するような「どん詰まり」の谷間の中で、最後に思いもかけない地下室を発見するところがなんとも言えず爽快。この頃から円環の要素が出てくるのか?万延元年の出来事に似たことが再び繰り返されるならば、出来事というものが反復されるならば、万延元年の事件の思いもかけない「抜け...

彼自身の状況を象徴するような「どん詰まり」の谷間の中で、最後に思いもかけない地下室を発見するところがなんとも言えず爽快。この頃から円環の要素が出てくるのか?万延元年の出来事に似たことが再び繰り返されるならば、出来事というものが反復されるならば、万延元年の事件の思いもかけない「抜け道」であった「地下室」は同時に閉塞した今の自分を励ますという…。そして「スーパーマーケットの天皇」のスーパーであるようなものが後の『燃え上がる緑の木』などで川沿いのスーパーまで行って来たのよ、などと登場するところも面白い。

Posted byブクログ