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万延元年のフットボール の商品レビュー

4.1

73件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    13

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    2

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2022/02/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

前半の人間関係とか時系列イベントのつながりが複雑で理解難しかったけれど、後半は一気に読み進んだ。 蜜と鷹の兄弟を中心に、ふたりの故郷の村で生じた万延元年の一揆から朝鮮人との騒動をからめ現代の暴動へと、2人の一族の歴史とからまりながら物語は進行していく。内容の整理には少し時間かかりそう笑 最初は人間の死についてのテーマかなと思っていたけど、そうでもなさそうかなと読了して思う。万延元年の一揆の首謀者である曾祖父の弟に憧れながら自らの恥のために破滅へと向かう鷹と、現実的かつ客観的な見方で淡々と鷹を否定する心に傷をおった蜜。蜜はあてどない生をただひたすらに全うしていくネズミであり、世の中のmajorityを体現しているように思う。人生を賭して行動をおこす鷹は破滅的で無意味に思える。しかしそれはあくまで主観的であり、鷹はそうすることで自己実現を成し遂げることができた、本当のことを言うことができた。誰もが皆本当のことを言おうとしない、もしくは言うべき本当のことを持っていない。それを言おうとすれば、殺されるか自死するか気狂いしてしまうからだ。 最終的には歴史が繰り返されると同時に、破滅と再生が誘われるようなイメージが自分の頭の中にはのこりました。きれいな文体と、時間軸の混合および人物描写の巧さが魅了的で、非常に面白い本でした。

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2019/07/07

大江健三郎はあまり好きじゃないけど、これは面白かった。人が暴徒化する過程がしつこく書かれていて読み応えある。 でも、この“しつこさ”が活きたのは初期の頃までかな。後の「同時代ゲーム」とかは読んでいられなかった。 正直言って、この人がノーベル賞とったのは日本の文学界にとって不幸だ...

大江健三郎はあまり好きじゃないけど、これは面白かった。人が暴徒化する過程がしつこく書かれていて読み応えある。 でも、この“しつこさ”が活きたのは初期の頃までかな。後の「同時代ゲーム」とかは読んでいられなかった。 正直言って、この人がノーベル賞とったのは日本の文学界にとって不幸だったと思う。わかりづらいこと書けば文学的、みたいな変なイメージが広がったんじゃなかろうか。

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2018/10/29

40ページほど読み進めて私の苦手な村上春樹氏の文章と似た香りが気になり始めた時点で、ギブアップです。 これが、名文で綴られた「細雪」の谷崎賞受賞作品ですか!? やはり、選考委員の頭がどうかしてる。 ただ唯一、大江氏の一連の作品タイトル名だけは異常な才能を感じさせますが、それ...

40ページほど読み進めて私の苦手な村上春樹氏の文章と似た香りが気になり始めた時点で、ギブアップです。 これが、名文で綴られた「細雪」の谷崎賞受賞作品ですか!? やはり、選考委員の頭がどうかしてる。 ただ唯一、大江氏の一連の作品タイトル名だけは異常な才能を感じさせますが、それは小説家というよりコピーライターの領域です。 もちろん、彼がノーベル文学賞を受賞したことを知っていますが、世の評論家は主題のわかりやすさよりも難解さを有り難がる傾向が強く、こんなむつかしい小説を読みこなせている僕は特別?のような優越感のみで選んでいるような気がするのは私だけなのでしょうか?

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2018/10/18

身勝手で頭のおかしい家族とその周辺の話し。肛門に胡瓜指して縊死した友人、近親相姦、不倫(?)や朝鮮からの渡来人に対する事実誤認など盛りだくさん。

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2017/09/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

当時の大江健三郎のあらゆるエッセンスが詰め込まれた意欲作。 物語の設定とストーリーは、自身の故郷である愛媛の山間の村落、障害を患ったであろう子の誕生、戦後民主主義の中のアメリカ文化、学生運動と命をかける青春(跳ぶ、ほんとうのことなど)などの作者のバックグラウンドが複合して形作られている。 同時に、冒頭の難解な長文はロシアフォルマニズムの異化の手法、弟鷹四の村落への反乱とその消滅は当時からの有力な学説であった異人による日常への祝祭の現出を採用しており、それらをすべて一つの作品で詰め込んだ内容の濃い作品なのだ。 一度目を読むのに時間はかかるが、それだけの意味のある作者の最高傑作。

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2017/08/28

日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語...

日本人でありながら、自国からのノーベル賞受賞作家作品を読んだことがないのもいかがなものか、と思いまして。で、その大江作品の中、例の福田書評集で最も高評価だった本作をチョイス。勝手な印象だけど、何となく読み心地は村上春樹風。それをもっと小難しくした感じというか。あと思ったのは、英語みたいな日本語だな、ってこと。何を言っているのかというと、一文あたりがやたら長くて、文の途中まで意味が掴めないと思ったら、最後まで読んで腑に落ちる、みたいなあの感覚。なので読解に骨が折れる部分も少なくないけど、意外にリーダビリティは悪くない。内容は、タイトルからはイマイチ想像が出来なかったけど、江戸時代の一揆を、現代において再現してみました、的な。弟の自殺とか、その子を身籠った我が妻とか、かなりドロドロなクライマックスで、読み終わった後、ちょっと疲労感を覚えちゃいました。良い作品とは思えたので、評価は高めで。

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2017/08/21

「万延」と「フットボール」というミスマッチな単語を重ね合わせた軽妙な題名とは異なり、推敲に推敲を重ね無駄を排した独特な文章と、段落を極力無くし畳み掛ける緻密な描写は読者に緊張さえ与える。初めての大江健三郎作品であったが、いやはや鬼気迫る作品であった。 日本人に古来より根付く暗澹...

「万延」と「フットボール」というミスマッチな単語を重ね合わせた軽妙な題名とは異なり、推敲に推敲を重ね無駄を排した独特な文章と、段落を極力無くし畳み掛ける緻密な描写は読者に緊張さえ与える。初めての大江健三郎作品であったが、いやはや鬼気迫る作品であった。 日本人に古来より根付く暗澹たる気質を浮き彫りにし、万延元年の一揆と鷹四が隆起する暴動の共通項による事件性を謳いながらも、結局は大江自身の自己反芻の物語であるのかもしれない。内包する狂気性が自己に向かった場合に起こることを鷹と蜜という対立軸で思考実験を重ねた産物のように思えた。

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2017/08/04

読み応えあります。分厚い! 内容はたんたんとそして近親相姦があったりした。しかし、鷹四の妹は死んでしまう、、、

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2019/02/20

「破滅と再生の物語」だと思います。1 死者にみちびかれて で、浄化槽の穴にうずくまる「僕」には、「破滅」の兆候が見られました。13 再審 で、倉屋敷の地下倉にうずくまる「僕」には「再生」の兆しが見られます。もちろん作者は、1と13で描かれる「地下室」を、対比させて描いていると思い...

「破滅と再生の物語」だと思います。1 死者にみちびかれて で、浄化槽の穴にうずくまる「僕」には、「破滅」の兆候が見られました。13 再審 で、倉屋敷の地下倉にうずくまる「僕」には「再生」の兆しが見られます。もちろん作者は、1と13で描かれる「地下室」を、対比させて描いていると思います。1と13での「僕」が、「地下室」で過去を回想している時の人々の会話文の冒頭が、――で始まっています。「僕」が「地下室」から地上に戻ってきた時、会話文は通常の「」に戻っています。1では、たまたま牛乳配達人が「地下室」にいる「僕」を見つけますが、13では、「僕」の妻が「地下室」から「僕」が出てくるのを「期待」を込めて待っていました。1と13でのこれらの類似と対比が上手く、小説は再生の「期待」が満ちた状態で終わります。また、これと似た手法は「個人的な体験」でも用いられています。「個人的な体験」も、「破滅と再生の物語」だと思います。けれど、この作品の「僕」が、再生の啓示を受けるのは唐突で、原因もよくわかりませんでした。「万延元年のフットボール」の「僕」が、再生の啓示を受けるのは、今までの「僕」の考えを覆すものを「僕」が発見したからです。僕は、「万延元年のフットボール」の原型は「個人的な体験」だと思います。  

Posted byブクログ

2015/09/26

大江さんの作品は難解と言われたり、考察しながら読むべきとの見方があるかもしれないが、私にとってこの小説は感情にまかせて読んでしまうものだった。集団行動の不条理さや、行動的であることへの嫉妬心のようなもので、感情がかき乱され続けた。エネルギーに満ちた小説。

Posted byブクログ