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万延元年のフットボール の商品レビュー

4.1

73件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    8

  3. 3つ

    13

  4. 2つ

    4

  5. 1つ

    2

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2024/01/27

「死者の奢り・飼育」が面白かったので、文学YouTubeでおすすめされていた本作を手に取ってみた。 冒頭から度肝を抜かれ、圧倒される。謎だらけの不思議な読み心地。登場人物の誰にも共感できない。なのにぐいぐい引き込まれる。 後半は怒涛の展開で、怖さもあった。 読了後は呆然。難解で解...

「死者の奢り・飼育」が面白かったので、文学YouTubeでおすすめされていた本作を手に取ってみた。 冒頭から度肝を抜かれ、圧倒される。謎だらけの不思議な読み心地。登場人物の誰にも共感できない。なのにぐいぐい引き込まれる。 後半は怒涛の展開で、怖さもあった。 読了後は呆然。難解で解説や書評を読み漁っている状況だ。 友人の凄まじい死に接し、無気力に穴に閉じこもる兄。障がいの赤子を産み、アルコールに溺れるその妻。 それに対して行動的で、人に影響を与え求心力を持つ弟。  1960年代の四国の谷間の村を舞台に 弟は谷間の若者を集め、フットボールを始め、組織化し暴動を起こすまでに至る。 お祭りのような感覚。 それを冷ややかに見つめ、批判する兄。 過去の思い出も記憶に違いが出てくるが、素直に認め合う事はせず、弟の美しい記憶を傷つけていく兄。兄の執拗な弟に対する言葉による攻撃が、次第に効いてくる。 100年前、万延元年に起きた一揆の真実に迫りながら、生き方を探していく。 戦後の復興、学生運動の終焉、土地買収、スーパーの進出、日本人と朝鮮人の対立、田舎の閉塞感、息苦しさ、生活の変化、過剰なエネルギーを持つ若者、集団の狂気、洗脳、病む若者、障がいのある子を持つという事… 拾いきれない。多くのテーマが描かれている。 読了後、この小説の意味をずっと考えている。 ただただ衝撃的で、圧倒された。 簡単ではない。答えは出ない。でも考え続ける行為を含め感じればいいのかなぁ、と思い始めている。 大江文学の転換期となった本作。とても深い。 貴重な読書体験となった。

Posted byブクログ

2023/10/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読後の衝撃たるや。それは深部に残り続けるだろうと思います。 友人の不可解な死に導かれ、夜明けの穴にうずくまる僕・根所蜜三郎。 地獄の憂悶を抱え、安保闘争で傷ついた弟の鷹四。 僕の妻・菜採子は、重度の精神障害児を出産してから、アルコールに溺れるようになった。 アメリカでの放浪を終えた鷹四が帰国したのを機に、苦悩に満ちた彼らは故郷・四国の谷間の村を目指して軽快に出発した。 鬱積したエネルギーを発散する鷹四は彼を支持する若者らの信奉を得て、谷間でフットボール・チームを結成する。やがて鷹四に率いられた青年グループを中心に、万延元年(1860年)の一揆をなぞるような暴動が神話の森に起こり…。 大江健三郎の最高傑作とも評されるのも頷ける長編。生硬かつ濃密な文体で綴られる、生きる苦しみ。 ひたすらに内省的な僕「蜜」は、27歳にしてすでに諦観の境地に達したか。 対照的に、その弟「鷹」は、自我を引き裂かれた怪物のような青年で、幕末の一揆を彷彿とさせる暴動を先導する。 「新生活」を始めるため、彼らは故郷・四国の谷間の村に行ったが、地元の青年たちの支持を集めてカリスマ性を発揮する鷹に対し、蜜は倉屋敷に閉じこもり思索に沈む。 内向的すぎてもはや何の行動も起こさない蜜にとって、鷹は血を分けた弟とはいえ、到底理解できる相手ではなく、憎悪の対象でしかない。 たしかに、幕末の一揆を引き起こした曾祖父の弟に自分を重ね、自己陶酔に浸る鷹は恐ろしい存在ですし、絶縁して当然ですが、蜜は弟の暴走を止める対話をできたのでは?しかし、そこは妻がずばり指摘してましたね。 それらすべてを抱え、蜜は再生に踏み出せるか。深遠な問いに読者も道連れにされる、果てしなく重い作品でした。

Posted byブクログ

2023/09/30

積読5年、意を決して3ヶ月かけて読了。 フットボールの祭典が終わった後のような、達成感と疲労感。 雪の降り始めとともに起こった暴動が、雪が溶け始めるとともに崩壊に向かう。難解な文体にようやく慣れた頃に、その文学的表現に気づいて鳥肌が立つ。 愛媛の松山から宇和島までJR予讃線で...

積読5年、意を決して3ヶ月かけて読了。 フットボールの祭典が終わった後のような、達成感と疲労感。 雪の降り始めとともに起こった暴動が、雪が溶け始めるとともに崩壊に向かう。難解な文体にようやく慣れた頃に、その文学的表現に気づいて鳥肌が立つ。 愛媛の松山から宇和島までJR予讃線で旅をして、内子駅も通過。その車中でもこの本を読んでいたのだが、「谷間の村」が内子のさらに奥にあったとは!

Posted byブクログ

2023/09/09

大江健三郎さんの最高傑作との呼び声がある、この「万延元年のフットボール」を読了。難解と評判あったので、楽しく読了できるか不安だったが、独特の考えられた美しい比喩を交えた長い文体(悪くいえばまどろっこしいけど)に最初は戸惑うが、だんだんそれが病み付きになってくる。 もうこれは、ノー...

大江健三郎さんの最高傑作との呼び声がある、この「万延元年のフットボール」を読了。難解と評判あったので、楽しく読了できるか不安だったが、独特の考えられた美しい比喩を交えた長い文体(悪くいえばまどろっこしいけど)に最初は戸惑うが、だんだんそれが病み付きになってくる。 もうこれは、ノーベル文学賞を取るべくして取ったとしか言いようがない。 四国の万延時代の一揆と現代の暴動をクロスさせ、独特の登場人物たちが繰り広げるリアリティな物語に飲み込まれてしまった。後半の展開は衝撃すぎて言葉もない。ラストわずかな希望で終われたのはとても救いがあった。

Posted byブクログ

2023/06/02

大江健三郎の最高傑作と評されていたので、温めて置いていましたが、現時点では個人的にもやはり最高傑作でした。読み終わってすぐ2周目を始めてしまったほどです。 重厚な構成、有機的で現実的なメタファー、極限状況からの脱出、魂の浄化。巧みな文章力に、自室で1人でため息を漏らしていました...

大江健三郎の最高傑作と評されていたので、温めて置いていましたが、現時点では個人的にもやはり最高傑作でした。読み終わってすぐ2周目を始めてしまったほどです。 重厚な構成、有機的で現実的なメタファー、極限状況からの脱出、魂の浄化。巧みな文章力に、自室で1人でため息を漏らしていました。 「魂の浄化」という点だけでいえば、「懐かしい年への手紙」の方が深く掘り下げていますが、全体としての完成度はこの作品が飛び抜けている気がします。 第1章の、蜜三郎が穴にこもり、自身を徐々に「穏やか」にし、精神の下降の斜面へと滑り落としていくシーンが1番好きです。このシーンの情景を大切に心の芯に持って生きていきたいです。 僕は、蜜と鷹、どちらの生き方を目指すのか…

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2023/05/20

2023/05/20 なんとか読み終わった。しかし、まったく読めていない。 やや難解であるのと、ちょっと読書に集中しにくい状況が続いたため。 また改めて読もう。 歴史にルーツがある大きな話だったり、穴や地下蔵で過ごしたりするところなど、村上春樹が影響を受けていそうな要素が見られた...

2023/05/20 なんとか読み終わった。しかし、まったく読めていない。 やや難解であるのと、ちょっと読書に集中しにくい状況が続いたため。 また改めて読もう。 歴史にルーツがある大きな話だったり、穴や地下蔵で過ごしたりするところなど、村上春樹が影響を受けていそうな要素が見られた。 とりあえずメモ。 蜜三郎:主人公。友人を奇妙な自殺で亡くす。生まれたばかりの子供に障害がある。安保闘争で片目を失う。 鷹四:蜜三郎の弟。アメリカ帰り。一揆を主導した曽祖父の弟と自分を重ねている節がある。 キーワード:草の家。蔵屋敷。万延元年の一揆。明治の一揆。曽祖父。曽祖父の弟。スーパーマーケットの天皇(白なんとかという朝鮮人)。朝鮮人との争いで殺されたS兄さん。地獄絵。在。竹藪。

Posted byブクログ

2022/12/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

仕事上のパートナーでもあった親友の自殺に苦しむ主人公の密三郎。思い障害児を産んだことで悩む妻の菜摘、学生運動の活動後に渡米先で精神を病み帰国した弟の鷹四。各々が心に重荷を抱えながら、四国の故郷に向かう。 鷹四は、地元の若者を集めフットボールチームを組むが、そのグループは過激さを増し、朝鮮人の経営するスーパーマーケットを襲うまでになる。ちょうど100年前の万延元年に、彼らの曾祖父の弟が関わった一揆や、S次兄さんが戦後の混乱期に虐殺された過去の真実などを絡めながら物語は続き、略奪行為が展開される。しかし、扇動者である鷹四は、親近相姦や姦通、強姦を犯しながら、最終的には自殺し、「スーパーマーケットの天皇」と呼ばれる経営者が雪解けの村に入り、全ては現状回復される。密三郎夫妻も和解し、我が子を施設から引き取って育てることを決意し、東京に戻っていく。 ノーベル賞受賞作家の代表的作品ということですが、図書館には古すぎてブッカーのかかっていない昭和42年発行の古い本が閉架にあるだけでした(本作品が収められた全集は開架でありました)。先日読んだエッセイに紹介されていた筆者の故郷が舞台になっているようですし、息子さんの障害と重なるような場面設定もあり、複雑な思いで読みました。先のエッセイは若い人が理解しやすいように書かれたものであり、本書は筆者の渾身の代表作なので、かなり筆致は異なりました。愛読書とはなれなそうですが、ようやく本書を読破できて、経験としては良かったです。

Posted byブクログ

2023/08/16

文学的な位置でも自身の中の位置でも最重要な一冊。 この特濃の内容とゴテゴテの文体を1人の人間が描いているのが恐ろしい。 初オーケンでこれを選ぶと胸焼けする可能性があるが、本作以降も擦られ続ける主題であり向き不向きを決める上でも必読書だと思う。

Posted byブクログ

2022/08/27

なぜこれを読もうと思ったのか? ノーベル賞受賞の根拠となったらしい作品だから、というミーハーな動機・・・ 冒頭だけ読んだ時点では、蛭子能収のマンガみたいな不条理作品なのかこれは?と思ってしまい、文章の読みにくさもあってげんなりしてしまったけど、読み進めていくにつれて意外と普通に...

なぜこれを読もうと思ったのか? ノーベル賞受賞の根拠となったらしい作品だから、というミーハーな動機・・・ 冒頭だけ読んだ時点では、蛭子能収のマンガみたいな不条理作品なのかこれは?と思ってしまい、文章の読みにくさもあってげんなりしてしまったけど、読み進めていくにつれて意外と普通に理解していけばよい作品なんだと気づいた。 乱暴に要約するなら、主人公兄弟が「本当のこと」を自他に認められるようになるまで、という至極真っ当な話、ではある。 加えて、60年安保闘争の空気感とか、歴史的事件を踏まえた神話的ストーリー展開とか、開化されゆく地方の習俗とか、重層的なテーマが絡み合ってとても読み応えがある。人類学や構造主義哲学の素養があればより楽しめる作品なのかもしれない。

Posted byブクログ

2022/03/24

集中力が足りず読むのを諦めた。 一文が長くて何度か読まないと意味が取れない。 国語の先生のうちの誰かが、人生で一番面白かった本って紹介してた記憶があって図書館で借りたけど、読むのに体力を使うので今回はパス。 いつか娯楽たりうるタイミングが来れば読み切りたい。

Posted byブクログ