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健康の神秘 新装版 人間存在の根源現象への解釈学的考察 叢書・ウニベルシタス838
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健康の神秘 新装版 人間存在の根源現象への解釈学的考察 叢書・ウニベルシタス838

ハンス・ゲオルク・ガダマー(著者), 三浦国泰(訳者)

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健康の神秘 新装版 人間存在の根源現象への解釈学的考察 叢書・ウニベルシタス838

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 法政大学出版局
発売年月日 2025/05/19
JAN 9784588140891

健康の神秘 新装版

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2025/06/14

ハンス=ゲオルク・ガダマーの『健康の神秘 人間存在の根源現象への解釈学的考察』は、現代社会における健康概念を哲学的・解釈学的観点から根本的に問い直した著作です。本書の中心テーマは、科学技術の発達により専門分化が進んだ現代社会において、人間存在の全体的理解が困難になっているという現...

ハンス=ゲオルク・ガダマーの『健康の神秘 人間存在の根源現象への解釈学的考察』は、現代社会における健康概念を哲学的・解釈学的観点から根本的に問い直した著作です。本書の中心テーマは、科学技術の発達により専門分化が進んだ現代社会において、人間存在の全体的理解が困難になっているという現状への批判的考察です。ガダマーは、健康を単なる測定可能な生物学的状態や病気の不在として捉えるのではなく、人間存在の根源的な現象として理解すべきだと主張しています。 第一部「理論、技術、実践」では、現代の知識の専門分化と技術支配が人間理解を阻害している問題が詳細に論じられています。古代ギリシアの「理論」(テオーリア)が世界への自由な参与を意味していたのに対し、現代科学は実験による再現性と検証可能性を重視する「方法」(メソッドス)に焦点を当てるようになったと分析されます。さらに、医学においても身体を機械のように客体化する傾向を批判し、真の治療は患者の自己身体経験を理解し、自然治癒力を支援する「ヒーリング」であるべきだと論じています。哲学的「知性」(ヌース)の概念を通じて、人間の自己認識と自由の能力が健康理解の鍵であることが示されます。 第二部「診断と対話」では、より具体的に医療現場における解釈学的アプローチの必要性が展開されています。身体を単なる客体(ケルパー)としてではなく、生きた経験としての身体(ライブ)として捉えることの重要性が強調されます。健康な状態では身体は意識されずに一体として機能する「神秘」的な状態であり、病気はこの調和が崩れて身体が客体として意識されることで生じる自己疎外現象として理解されます。この逆説的な関係こそが「健康の神秘」の核心部分です。 医療における自然(フュシス)と技術(テクネー)の適切な関係性についても重要な議論が展開されています。現代医療が身体を技術的に操作可能な対象として扱う傾向に対し、ガダマーは古代ヒポクラテス医学のように自然の治癒力を尊重し、技術はその自己組織化をサポートするものであるべきだと主張します。また、医師の権威と患者の批判的自由は対立するものではなく、真の権威は知識と洞察の優越性に基づき、信頼と合意によって成立する相互補完的な関係であることが論じられています。 精神医学の領域においても解釈学的アプローチの導入が強く提唱されています。精神的な病気や症状を単なる生物学的・化学的異常として還元するのではなく、患者の主観的経験や生活世界の文脈の中で理解する対話的アプローチが重要だとされます。不安や心配事も単なる病理現象ではなく、人間存在の有限性から生じる根源的で不可避な感情として受け入れるべき存在論的現象として位置づけられています。 本書全体を通じて、ガダマーは現代医学の科学的合理性の限界を指摘しながら、医師と患者の間の「対話」と「理解」に基づいた人間的なコミュニケーションこそが真の治療の基盤であることを一貫して主張しています。健康は客観的に完全に把握できる状態ではなく、自己の身体と一体である「家にいる」感覚として体験される本質的に自己自明なものであり、その神秘性は測定可能なものに還元できない人間存在の根源的な表現として理解されるべきだという哲学的洞察が、本書の最も重要なメッセージとなっています。

Posted by ブクログ