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爆弾 講談社文庫
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爆弾 講談社文庫

呉勝浩(著者)

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爆弾 講談社文庫

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 2024/07/12
JAN 9784065363706

商品レビュー

4

863件のお客様レビュー

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2026/03/11

何度も何度も結末を予想しては違うと感じさせられた。そのくらい読み応えがあり、次々へとトリックに操られる。現代社会の闇とそこから自分を保つためにぜひ読んでほしい作品である。

Posted by ブクログ

2026/03/11

「身から出た錆といわれたらぐうの音も出やしません。けども冤罪ってのは、ほんとにつらいものですね。わかりますか、刑事さん。身に憶えのない犯罪を押しつけられて疑われて、白い目で見られてね。そうしているうちにむくむくと、くろーい感情がわだかまってくるんです。おれは何もしてないのに、なん...

「身から出た錆といわれたらぐうの音も出やしません。けども冤罪ってのは、ほんとにつらいものですね。わかりますか、刑事さん。身に憶えのない犯罪を押しつけられて疑われて、白い目で見られてね。そうしているうちにむくむくと、くろーい感情がわだかまってくるんです。おれは何もしてないのに、なんでこんな目に遭わなくちゃならないんだ。これならいっそ、おれが犯っておけばよかったなって」 「なんだって?」 「おれが犯っておけばよかった。だってそうでしょう?あの可愛いミノリちゃんに、けっきょくわたしは指一本ふれちゃいないんですからね」 あらためて実感する。時限爆弾とは、なんとやっかいな代物だろう。いったん「ある」と思わせられたが最後、「ない」と証明できるまで恐怖につきまとわれる。どこかでひっそりとその瞬間を待ち、時を刻んでいるのかもしれないという想像がぬぐえない。 「目立たない子どもってのはほんとです。誰もわたしに注意を払いやしませんでした。空気みたいな存在です。山とか湖畔の、さわやかな空気じゃないです。ゴミ置き場の空気です。なんとなく臭う程度の、嫌だけど、目くじらを立てるほどじゃないくらいの。だからストーカーみたいな真似も、こっそりつづけられたんだと思います」 「人の心をのぞける能力があるとします。サトリって妖怪がもつような力です。これは一見、とても便利に思われますが、よくよく考えるとだいぶ怖い。相手の心をのぞけるってことは、相手の汚い部分から逃げられないってことですからね。常人の何百倍、毎日のように仲間が抱える汚物のような本音にさらされて、失望しつづける人生を想像してみてください。わたしなら、正気でいられる自信がない」 「清宮さんだってそうでしょう? わたしと奥さんなら、奥さんを助けるでしょう? そうじゃなきゃ変ですもん。それはきっと、嘘ですもん。人間はそんな風にできてませんもん」 「乱暴すぎます。極限の状況を、一般化はできません」 「でも似たようなこと、どこでも起こっているでしょう?学校でも職場でも、芸能界でも役所でも。きっとあらゆる場所で、あらゆる人が、いつもいつも、他人の命のランク付けにいそしんでいるんです」 「おそらく、そうなんでしょう」清宮は同意し、スズキを見据えた。「だからこそ、社会がある。法律や制度があるんですよ、スズキさん」好奇心を隠さずに、スズキがつづきをうながしてくる。 「わたしたちが身勝手だからです。平気で他人に優劣をつけるからです。それを野放しにしていたら平穏な生活が守れそうにないから、だからルールをつくったんです。長い時間をかけて、知恵をもちよって、完璧でなくとも、妥当なルールを。人の命の平等を、実現するために」清宮は力を込めた。「それをわたしは、信じている」 「でも最近、困ったことがあるんです。家の外から、平日の昼間、元気な歌声が聴こえるようになったんです。幼稚園か保育所か、そういうのができたんですね。ふだんはべつにいいんです。楽しいですよ、子どもの歌声に耳をかたむけるのは。何せ奴ら全力ですから。遠慮なんて知りません。ぶんぶんぶん、蜂が飛ぶ。男の子も女の子も、全力でビームを放つように歌うんです。音程なんておかまいなしに、ただただ口を大きく開けて、青筋立てて、身体の奥から酒き上がるエネルギーを爆発させているんです。彼らの躍動する生命が、びんびんに伝わってくるんです。だから苦情なんていいません。もとよりわたしなんぞ、異議申し立てできる身分じゃない。あっちは可能性の塊です。こっちはしがみついてるだけです。でも、甲子園のときだけはつらくてね。酒を飲んでまどろんで、おまえらのがんばりなんか知らねえよってつぶやくまぎわ、聴こえてくるわけです。ぶんぶんぶん、蜂が飛ぶ。全力のぶんぶんぶんです。可能性の塊です。未来ある命の軍歌です。それを聴くとね、たまらなくなるんです。昼間っからのんべんだらりとしちゃってる我が身の情けなさを突きつけられて、おれはどこでおれの可能性を失っちゃったんだろうって、考えてしまうんです。もう二度と、それは手に入らないんだなっておののくんです。そして眠れなくなるんです。眠りたいから、眠ってしまいたいから、だから酒を増やすんです。するとそのうち頭がぐるぐるしてきて、胃の中もぐるぐるしちゃって、トイレに駆け込んでげーってしてね。気分は良くなるんですけどね、代わりに眠気が、すっかり消え去っているんです。テレビからカキーンで澄んだ音がして、外からは陽気なピアノに全力の合唱です。わたしは部屋の中央の、電灯の真下に立って、ああ、今日は何曜日だったかな、スーパーのポイント還元の日だったかな、それは来週だったかな、なんて、現実が腐っていくのを、見て見ぬふりするんです」

Posted by ブクログ

2026/03/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

忙しい時期に、ちまちま読んだのは失敗だった。絶対一気読みする方が楽しく読めたとおもう。 命の価値、平等、心の形のところは相当面白かった。 スズキタゴサクが「バケモノ」であることは確かだが、命は平等ではないし、人それぞれどうでもいい存在がいることは確かである心苦しさを感じる。 スズキが本当のところ何だったのか、あえてわからないまま終わらせているのだと思うが、そこは知りたかったところ。

Posted by ブクログ