商品詳細
内容紹介 | |
---|---|
販売会社/発売会社 | 岩波書店 |
発売年月日 | 2023/09/01 |
JAN | 9784000245531 |
- 書籍
- 書籍
ピュウ
商品が入荷した店舗:店
店頭で購入可能な商品の入荷情報となります
ご来店の際には売り切れの場合もございます
お客様宅への発送や電話でのお取り置き・お取り寄せは行っておりません
ピュウ
¥3,080
在庫あり
商品レビュー
3.7
13件のお客様レビュー
閉鎖的な田舎町に突如現れた謎の人物。 信仰深い人たちに信徒席(ピュウ)と名付けられ、保護される。 田舎町という大きな生き物のようなうねりの中で、人々は努力して善人であろうとする。 しかし、人生とは思い通りにならず、人間はみなすべからく弱く愚かなので、本当の善人であるのは無理な話...
閉鎖的な田舎町に突如現れた謎の人物。 信仰深い人たちに信徒席(ピュウ)と名付けられ、保護される。 田舎町という大きな生き物のようなうねりの中で、人々は努力して善人であろうとする。 しかし、人生とは思い通りにならず、人間はみなすべからく弱く愚かなので、本当の善人であるのは無理な話だ。 人々はよそ者のピュウを警戒しその素性を探ろうとし、同時に、なにも語らぬピュウには他の住人には言えないようなことを打ち明ける。 過去に虐げられ踏みつけられた人間たちのことを、覚えているのに、忘れたように生活する人々。 そのことを語る時には、もう十分償ってあまりある恩恵も与えた事を併せてでないと語れない人々。 暗い歴史を持つ異国のクリスチャンの話のように語られながら、私たちの話でもある。私の話だ。街の住人でありピュウだ。 わたしは不確かで、空は確かで、地面は確かで 空は不確かで、全ては静かで、地面は灰色で 空は濡れていて、わたしは静かで 空は静かで、地面は沈黙していて わたしは歩き続けているんだって。 最後の段落が本当に素敵で好きだ。 特に、終わり方が気持ちいい。 『空は決してわたしたちを区別しない。わたしたちは借り物の空気で話をする。空はまるで、青く果てがあるように見える。』 ※訳者あとがきで、訳者が自分の政治的主張を混ぜてきたので、一気に気分が悪くなった。そういうのは、自身が主催する媒体でやってくれよ。あの町の住民のように、自ら善人であろうとしてるんだろうけどね…そこがイヤで⭐︎がマイナス1です。
Posted by
記憶を失い、町を彷徨っていた語り手は教会に潜り込み、礼拝にやってきた家族に引き取られることになった。「信徒席」を意味するピュウと名付けられたものの、風貌からは性別も年齢も人種も見定められず、自らを語らないピュウは町の人びとを戸惑わせる。土曜に開かれる「お祭り」に向け、町は徐々に緊...
記憶を失い、町を彷徨っていた語り手は教会に潜り込み、礼拝にやってきた家族に引き取られることになった。「信徒席」を意味するピュウと名付けられたものの、風貌からは性別も年齢も人種も見定められず、自らを語らないピュウは町の人びとを戸惑わせる。土曜に開かれる「お祭り」に向け、町は徐々に緊張感を増していくが……。アメリカ南部とおぼしい町を舞台に、他人をラベリングしようとする欲望を描いた寓話的小説。 エピグラフがル=グウィンの「オメラスから歩み去る人びと」から引用されていて、町の名前もそこから付けられている。私は当該作を読んでないのだが、この小説はSFというジャンルを必要とする人のことを書いた作品なのではないかと思った。 保守的な田舎町の一見善良な人びとのなかに異分子が入り込み、欺瞞が暴かれていくと書けばありふれた話だが、本書は異分子側であるピュウの一人称で書かれている。ピュウは読者にも最後まで出自を明かさない(そもそも記憶がほとんどない)が、地の文で語られる感情は豊かで、応えるべき言葉と応えたくない言葉の選択も共感できる。「自分の中心にある数本の細い路地のような場所が、斜めに傾いたような感覚」のように、身体感覚と心象風景を結びつけた表現が巧みで、ピュウの心の声を聞ける読者にとっては町の人からの「無口」という評価に違和感をおぼえるほど。 ピュウの存在は周囲を居心地悪くさせる。けれど、ピュウは確かにそこに存在している。ピュウを匿った家の人びとは、ピュウが存在するということをそのまま受け入れることができない。ピュウは常に「他者をラベリングしたい、そして安心したい」という欲望の目に晒されている。町の人びとや読者にとってピュウは〈謎〉だ。けれど、〈謎〉にラベリングされた側から見れば既存社会こそ〈謎〉なんじゃないだろうか。そして〈エイリアン〉の側から世界を眺め、価値観を転覆させようとする試みこそSFじゃないだろうか。 本書はキリスト教の信仰を主題にした小説と考えると弱いと思う。祭での懺悔はショボすぎるし(隠し事がしょうもないということにこそ意味があるという考え方もあるが)、途中まで期待した、人間の暗部を抉りだしてみせるような結末ではなかった。けれど、私たちが常に身体という「カヌー」に縛り付けられ、ピュウとして生きることの難しさと、ピュウであるがゆえにSFの方法論を必要とする人びとがいることを考えさせてくれる読書体験だった。
Posted by
アメリカ南部の(時代はよくわからないが現代)閉鎖的な土地に流れ者のピュウ(教会の椅子だったかな)がやってくる。最後まで何も喋らない。白人でも黒人でも女性でも男性でもない。しかし何故だか人々は勝手に憐み保護する。結構カトリックが厳格な土地で、それほど文化的に活発でないので、理由もな...
アメリカ南部の(時代はよくわからないが現代)閉鎖的な土地に流れ者のピュウ(教会の椅子だったかな)がやってくる。最後まで何も喋らない。白人でも黒人でも女性でも男性でもない。しかし何故だか人々は勝手に憐み保護する。結構カトリックが厳格な土地で、それほど文化的に活発でないので、理由もなく信心ぶかいのがよし、とされているが。 皆がピュウに口に出すのを憚られる心の吐露を吐き出す。教会に関係なく、そして喋らないから。そして次第にピュウこそが神様なんではないか、という空気に。なんでしょ、今の宗教感がゆがんでるんではないか?というのがテーマ。
Posted by