ピュウ の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ピュウとは、キリスト教会の「信者席」のことです。そこで眠っている人物がいました。皆が集まる日曜日のことで、発見された人物は、年齢も性別も国籍も人種も、なにもかも不明でした。しかも一言も喋らないのです。こう書くとホラーのようだけど、実際はどちらかというとサスペンス映画のような展開です。 そして、この物語をもう一つ不気味にさせている要素が、今度の土曜日に催されるという「お祭り」です。このお祭りのために、町民はどこかソワソワしています。子どもたちの噂ではその祭りでは人間の生贄が必要になったりするそうな・・・。そこに謎まみれの人物が現れたのでした。 町民たちは、ひとまず彼(彼女)のことを、「ピュウ」と呼びます。 ピュウは、とても思慮深い人物で、町民たちを観察して分析しています。と同時に、自分の内面もかなりの精度で分析が出来ています。地の文で読者はそれを知っているので、しゃべらないんだけど、しゃべれないわけではないと読者は分かっています。 ピュウが表出する言葉は後半になると出てくるけれど、「いいえ」とか「わからない」のひとことくらいなんですが、これにはなんというか、アメリカ特有の雄弁過ぎる、議論解決型過ぎる、善良過ぎる?辺りの過剰な国民性を、えぐっているように私には思われました。 ところで、ピュウの心が激しく動いたシーンで、私がとても感動した地の文があります。 「その瞬間、あることを確信した。タミーには途方もない苦しみを人知れず抱え込む力があるのだ。」(p117) これはすごいです。なんというか、アメリカ的な考え方から飛び出して、(いやここは著者のレイシーがピュウに語らせているんだろうけど、)アジア的な諦念のような明らめのようなものすらをも、私は感じさせられました。 タミーという女性は、本音の人々みたいなところがある町民なんですが、根はとてもいいんだけど、ダメダメな不合理な存在というか、いわゆるうまくいかなかった人生の代表者みたいな存在です。でも、そんなタミーが一番強いんだ、という著者のメッセージを感じ取ってしまった私は、少しおののき、好きになってしまいました。 タミーがピュウがレイシーがです。(実はピュウが初めて口をきいた人がタミーでもあります。) ラスト、土曜日の章で「お祭り」の真相もハッキリさせられますが、やはり、作中の地の文にグッとくるところが何回かあったので、この作品はソレがとても良かったです。
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とあるYouTuberのvlogに映った本棚にあった一冊。装丁から漂う不穏な気配。大好物である。早速入手し読み始めた。 「ジャケ買い」をすると「思ってたんと違う〜」となることもあるが、こちらはすらすらと読み進んだ。はて?なぜだろうと考えてみると既読感、既視感があり、初めて触れる世...
とあるYouTuberのvlogに映った本棚にあった一冊。装丁から漂う不穏な気配。大好物である。早速入手し読み始めた。 「ジャケ買い」をすると「思ってたんと違う〜」となることもあるが、こちらはすらすらと読み進んだ。はて?なぜだろうと考えてみると既読感、既視感があり、初めて触れる世界観ではなかった気がしたからだと思う。 例えば、村に得体の知らない者が突然やってきたことで、村のみんなの暗部が段々と浮き彫りにされていく感じなんかは、ニコール・キッドマン出演の『ドッグヴィル』を思い出す。 また、連綿と続く罪や苦しみの赦しには、「生まれ変わり」「声」「語り」なんかが必要であると考えているところなんかは、トニ・モリソン著『ビラヴド』を思い出した。 そして、「祭り」といえば、なんと言ってもフローレンス・ピュー出演の『ミッドサマー』ですよね? そんなわけだけど、もっと勉強して勝手に深掘りしたくなるような作品でした。
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書いてあること全部全部大切にしたい言葉だった。何も言わなくていい。どこから来てもどこへ行ってもいいし、自分が誰だって何だっていいと思った。
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性別も年齢も、人間なのかもわからない(英語を解するので多分人間)「その人」が突如教会の信者席(PEW)に現れる。周囲の人々は「教え」に従い、その人を丁寧に遇すが、本音では困惑が滲む。表面の静かな笑顔と、腹の中の不安。教えに従ったもてなしと、損なった時の叱責への恐れ。危ういバランス...
性別も年齢も、人間なのかもわからない(英語を解するので多分人間)「その人」が突如教会の信者席(PEW)に現れる。周囲の人々は「教え」に従い、その人を丁寧に遇すが、本音では困惑が滲む。表面の静かな笑顔と、腹の中の不安。教えに従ったもてなしと、損なった時の叱責への恐れ。危ういバランスの上に成り立っているのが伝わり、こちらも不安になる、なんとも不思議な小説。
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閉鎖的な田舎町に突如現れた謎の人物。 信仰深い人たちに信徒席(ピュウ)と名付けられ、保護される。 田舎町という大きな生き物のようなうねりの中で、人々は努力して善人であろうとする。 しかし、人生とは思い通りにならず、人間はみなすべからく弱く愚かなので、本当の善人であるのは無理な話...
閉鎖的な田舎町に突如現れた謎の人物。 信仰深い人たちに信徒席(ピュウ)と名付けられ、保護される。 田舎町という大きな生き物のようなうねりの中で、人々は努力して善人であろうとする。 しかし、人生とは思い通りにならず、人間はみなすべからく弱く愚かなので、本当の善人であるのは無理な話だ。 人々はよそ者のピュウを警戒しその素性を探ろうとし、同時に、なにも語らぬピュウには他の住人には言えないようなことを打ち明ける。 人々は詮索し噂しながらも、自分の見たいようにピュウを見る。ピュウの人種・性別・年齢、ピュウをみて人々が心に思う事は様々にバラバラだ。 そして、過去に虐げられ踏みつけられた人間たちのことを、覚えているのに、忘れたように生活する人々。 そのことを語る時には、もう十分償ってあまりある恩恵も与えた事を併せてでないと語れない人々。 暗い歴史を持つ異国のクリスチャンの話のように語られながら、私たちの話でもある。私の話だ。街の住人でありピュウだ。 わたしは不確かで、空は確かで、地面は確かで 空は不確かで、全ては静かで、地面は灰色で 空は濡れていて、わたしは静かで 空は静かで、地面は沈黙していて わたしは歩き続けているんだって。 最後の段落が本当に素敵で好きだ。 特に、終わり方が気持ちいい。 『空は決してわたしたちを区別しない。わたしたちは借り物の空気で話をする。空はまるで、青く果てがあるように見える。』 ※訳者あとがきで、訳者が自分の政治的主張を混ぜてきたので、一気に気分が悪くなった。そういうのは、自身が主催する媒体でやってくれよ。あの町の住民のように、自ら善人であろうとしてるんだろうけどね…そこがイヤで⭐︎がマイナス1です。
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記憶を失い、町を彷徨っていた語り手は教会に潜り込み、礼拝にやってきた家族に引き取られることになった。「信徒席」を意味するピュウと名付けられたものの、風貌からは性別も年齢も人種も見定められず、自らを語らないピュウは町の人びとを戸惑わせる。土曜に開かれる「お祭り」に向け、町は徐々に緊...
記憶を失い、町を彷徨っていた語り手は教会に潜り込み、礼拝にやってきた家族に引き取られることになった。「信徒席」を意味するピュウと名付けられたものの、風貌からは性別も年齢も人種も見定められず、自らを語らないピュウは町の人びとを戸惑わせる。土曜に開かれる「お祭り」に向け、町は徐々に緊張感を増していくが……。アメリカ南部とおぼしい町を舞台に、他人をラベリングしようとする欲望を描いた寓話的小説。 エピグラフがル=グウィンの「オメラスから歩み去る人びと」から引用されていて、町の名前もそこから付けられている。私は当該作を読んでないのだが、この小説はSFというジャンルを必要とする人のことを書いた作品なのではないかと思った。 保守的な田舎町の一見善良な人びとのなかに異分子が入り込み、欺瞞が暴かれていくと書けばありふれた話だが、本書は異分子側であるピュウの一人称で書かれている。ピュウは読者にも最後まで出自を明かさない(そもそも記憶がほとんどない)が、地の文で語られる感情は豊かで、応えるべき言葉と応えたくない言葉の選択も共感できる。「自分の中心にある数本の細い路地のような場所が、斜めに傾いたような感覚」のように、身体感覚と心象風景を結びつけた表現が巧みで、ピュウの心の声を聞ける読者にとっては町の人からの「無口」という評価に違和感をおぼえるほど。 ピュウの存在は周囲を居心地悪くさせる。けれど、ピュウは確かにそこに存在している。ピュウを匿った家の人びとは、ピュウが存在するということをそのまま受け入れることができない。ピュウは常に「他者をラベリングしたい、そして安心したい」という欲望の目に晒されている。町の人びとや読者にとってピュウは〈謎〉だ。けれど、〈謎〉にラベリングされた側から見れば既存社会こそ〈謎〉なんじゃないだろうか。そして〈エイリアン〉の側から世界を眺め、価値観を転覆させようとする試みこそSFじゃないだろうか。 本書はキリスト教の信仰を主題にした小説と考えると弱いと思う。祭での懺悔はショボすぎるし(隠し事がしょうもないということにこそ意味があるという考え方もあるが)、途中まで期待した、人間の暗部を抉りだしてみせるような結末ではなかった。けれど、私たちが常に身体という「カヌー」に縛り付けられ、ピュウとして生きることの難しさと、ピュウであるがゆえにSFの方法論を必要とする人びとがいることを考えさせてくれる読書体験だった。
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アメリカ南部の(時代はよくわからないが現代)閉鎖的な土地に流れ者のピュウ(教会の椅子だったかな)がやってくる。最後まで何も喋らない。白人でも黒人でも女性でも男性でもない。しかし何故だか人々は勝手に憐み保護する。結構カトリックが厳格な土地で、それほど文化的に活発でないので、理由もな...
アメリカ南部の(時代はよくわからないが現代)閉鎖的な土地に流れ者のピュウ(教会の椅子だったかな)がやってくる。最後まで何も喋らない。白人でも黒人でも女性でも男性でもない。しかし何故だか人々は勝手に憐み保護する。結構カトリックが厳格な土地で、それほど文化的に活発でないので、理由もなく信心ぶかいのがよし、とされているが。 皆がピュウに口に出すのを憚られる心の吐露を吐き出す。教会に関係なく、そして喋らないから。そして次第にピュウこそが神様なんではないか、という空気に。なんでしょ、今の宗教感がゆがんでるんではないか?というのがテーマ。
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読みながら、結末はハッキリしないんだろうなーとどこかで思いながらも読み急いでしまった。 “現代”(コンテンポラリー)物語ですね。 物語として読むべきではないかもしれないけど、物語として読むことでしか感じられないこともある気がした。 ゆっくり読まないといけない。 訳者のあとがき...
読みながら、結末はハッキリしないんだろうなーとどこかで思いながらも読み急いでしまった。 “現代”(コンテンポラリー)物語ですね。 物語として読むべきではないかもしれないけど、物語として読むことでしか感じられないこともある気がした。 ゆっくり読まないといけない。 訳者のあとがきで判明したこともあり。
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翻訳本でこの内容だとついていけない。でも日常の描写はよく思い浮かんで好き.年末年始忙しかったからゆっくり時間取れる時に読もう
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文学ラジオ第137回紹介本https://open.spotify.com/episode/3hbE5pDELD19IyTJitjp6q?si=8f77f2d7f93f4f94 怖いくらいに引きこまれた一冊。 設定とあらすじを聞いただけで面白いのは間違いないと思った。 読んでみ...
文学ラジオ第137回紹介本https://open.spotify.com/episode/3hbE5pDELD19IyTJitjp6q?si=8f77f2d7f93f4f94 怖いくらいに引きこまれた一冊。 設定とあらすじを聞いただけで面白いのは間違いないと思った。 読んでみたら何を人は信じていて、何を正しいと思っていて、 それはもう人それぞれなのだということを感じた一冊。 この閉鎖的な町に自分はいたくないと思ってしまった・・・ ピュウが正体不明で不思議な小説だけど、おもしろい。 ピュウの前で人々は話し出すと止まらなくなる。 この人々の語りにそれぞれのドラマがあり、悲しい。 善意がある人が多いように思えるけど、実はその裏には…町の恐ろしい一面が隠れていた。けっこうゾッとした。
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