1,800円以上の注文で送料無料

格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか
  • 新品
  • 書籍
  • 書籍
  • 1209-01-12

格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか

オデッド・ガロー(著者), 森内薫(訳者), 柴田裕之(監訳)

追加する に追加する

格差の起源 なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか

2,530

獲得ポイント23P

在庫あり

発送時期 1~5日以内に発送

商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 NHK出版
発売年月日 2022/09/27
JAN 9784140819111

格差の起源

¥2,530

商品レビュー

3.9

22件のお客様レビュー

レビューを投稿

2025/02/09

前半では、なぜ19世紀以降に劇的な経済成長が生じたかを、後半では、なぜ国家間に格差が生じたかを解く。 産業革命によってマルサスの罠から解き放たれたのは、工場化によって労働者への教育の必要性が高まり、子供を増やすよりも教育に金をかけることになり、人口増加率が低下したため。工業が成...

前半では、なぜ19世紀以降に劇的な経済成長が生じたかを、後半では、なぜ国家間に格差が生じたかを解く。 産業革命によってマルサスの罠から解き放たれたのは、工場化によって労働者への教育の必要性が高まり、子供を増やすよりも教育に金をかけることになり、人口増加率が低下したため。工業が成長した産業革命の後半になると、技能を持つ労働者の需要が大幅に高まり、労働者の生産性に影響する教育、訓練、技能、健康などの改善が意識され、実施されるようになった。 土地が少数の地主に集中している地域では、地主たちは労働者が近隣の都市へ集団移動するのを食い止めるために、公的な普通教育制度の確立に反対した。 ヨーロッパの工業化によって、国際貿易は大幅に増えた。世界の総生産高のうち国家間で取引された割合は、1800年の2%から1900年には17%、第一次世界大戦直前の1913年には21%まで増えた。国際貿易の拡大は、工業国では技能を持つ労働者の需要が高まったことで、人的資本への投資が強化され、人口転換に拍車がかかった。非工業国では、技術を必要としない農産物や原材料への生産への特化が奨励されたため、人的資本に投資する意欲が抑えられ、貿易の利益は人口増加に回されてしまった。発展途上国では、19世紀の間に工業化の水準は低下し、ようやく飛躍できたのは、20世紀後半になってからだった。 貿易が行われるための重要な前提条件として、拘束力と強制力のある契約のような政治と経済の制度があることが必要。合意に対する違反を統治機関が防げなければ、貿易に大きな支障が生じるため。共通の通貨、財産権の保護、一律に課される法律など、貿易に役立つような制度を発展させた社会の方が経済成長を促進できた。一方、貿易に適した制度を整えることが遅かった社会は、後れをとることになった。 中央アメリカとカリブ海域諸島の気候や土壌は、コーヒー豆や綿花、サトウキビ、タバコを育てるのに最適だったため、プランテーションによる集約的な土地所有によって、不平等な富の分配や強制労働、奴隷制につながり、不平等を定着させ、成長を阻害した。 マルサスの時代までは、技術の発展と人口密度が直結しており、人口密度の高い地域は文明が進んだ地域だった。繁栄していた地域では、植民地政府は地元民の富を収奪する制度を作る動機が強まった。のちに植民地が独立を勝ち取ったときも、宗主国の跡を継いだ地元の有力者は、収奪的で成長妨げる制度を継続したため、一向に発展できなかった。一方、人口密度が低く、あまり発展していなかった地域では、包括的で成長を促進するような制度を樹立し、これが地域の経済発展に貢献した。 資源が豊富だと、レントシーキング型の非生産的な活動が促進され、人的資本収集集約型の部門から人材や物資や資金が奪われるため、長期的には「資源の呪い」をもたらす。 エスター・ボーズラップは、女性の役割に対する態度は、産業革命以前の農耕の手法によって異なるという仮説を提示している。土壌の性質や主な作物によって、鍬や熊手を使って耕す地域もあれば、牛や馬につないだ犂を使って耕作する地域もあった。犂を使ったり、それを引く動物を操るには強靭な上半身が必要なため、そうした地域では、その後も家庭内での男女の労働分配がはっきりしている。鍬や熊手を使っていた地域では、男女が共同で農作業を行う傾向がある。 土壌が穀物の収穫に適した地域では、複雑な階層性社会が生まれやすい。発展した古代文明では、農業は、計量も輸送も貯蔵も楽で収税も簡単な穀物を土台にしていた。主に塊根や地下茎を収穫する地域では、都市国家や国や帝国などの階層的な社会には発展しなかった。 2010年から18年の一人当たりの平均所得の国家間格差のうち、地理と気候で説明できるのは40%、病気の蔓延しやすさは14%、民族や文化の要因は20%、政治制度で説明できるのは10%(Ashraf et al. 2021)。

Posted by ブクログ

2024/12/31

比較するから、格差が可視化される。 当たり前のトートロジーだが、文明が思い思いに発展する過程で「格差がない」方が難しい。交じり合う事により差が見えて、その差を互いに利用し合う動機が生まれる事で比較優位、国同士の強弱の関係性が用いられる。本書は、その強弱の関係性が何に起因するのかを...

比較するから、格差が可視化される。 当たり前のトートロジーだが、文明が思い思いに発展する過程で「格差がない」方が難しい。交じり合う事により差が見えて、その差を互いに利用し合う動機が生まれる事で比較優位、国同士の強弱の関係性が用いられる。本書は、その強弱の関係性が何に起因するのかを探る。 本書は、強い方の理由に着目する所から始まる。前段としてマルサスの人口論における生産性の成長速度に対する人口増大の限界を引き、それを突破する事が強者の条件を満たす事を説明する。技術の発展が人口増加を持続させ、人口増加が技術を発展させるという好サイクルが必要だった。しかし、技術の進歩と土地の生産性の高さはたいてい人口増加を招くだけで、生活の豊かさにはつながらなかった。 ー ホモ・サピエンスの出現から30万年近く、1人当たりの所得が生存に最低限必要な水準を超えることはほとんどなく、疫病や飢催が多発し、乳児の4人に1人は1歳の誕生日を迎えられず、多くの女性が出産時に命を落とし、平均寿命が40年を超えるのはまれだった。ところがその後、すでに述べたように、西ヨーロッパと北アメリカではさまざまな社会層で突如、生活水準が急速に未曽有の向上を始め、続いて世界のほかの地域でも同様の現象が起きた。驚くべきことに、19世紀の初め以降、長かったマルサス時代に比べればまさに一瞬のうちに、世界全体で1人当たりの所得は14倍に急上昇し、平均寿命は2倍以上になったのだ。人類はどのようにして、マルサス説が想定している力の支配からついに抜け出すことができたのだろうか。 数々の技術革新や教育の普及がシンギュラリティを起こす。化学肥料による収穫量向上だけではなく、蒸気機関による生産性の向上や移動時間の短縮、医療向上、コンテナの規格化などもそうだ。こうした技術により19世紀以後、飛躍的にヨーロッパや北アメリカは発展する。 2018年の農業従事者1人当たりの生産性で比べると、アメリカはエチオピアのほぼ147倍、ウガンダの90倍、ケニアの77倍、インドの46倍、ボリビアの48倍、中国の22倍、ブラジルの6倍。他方で、こうした技術の恩恵から置き去りの国はまだまだ多い。 こうした格差の理由として、勤労意欲における文化の違いとその宗教的背景についても触れる。あるいは政治制度の違い。更には、気温も湿度の影響、それによるツェツェバエやマラリアが人的資本を衰えさせたという説。 『国家はなぜ衰退するのか』を引用しながら、収奪的制度の弊害を説明するが、グローバルサウス問題に対しては触れない。格差には先進国に責任があるという議論は単純化し過ぎていると思うし、繁栄という物質主義的な価値観の押し付けも誤りだと思う。しかし、移民問題や資源獲得に絡む人権問題等に関し、格差とどう付き合うかが先進国に問われている事は間違いなさそうだ。

Posted by ブクログ

2024/10/01

ー 人類の旅は、魅惑的なエピソードに富んでいる。ディテールの大海原に漂い、波にもまれていると、水面下の強力な流れはつい見過ごしてしまう。本書の第1部では、これらの底流、つまり技術の進歩と人口の規模や構成との相互作用に焦点を当ててきた。こうした力が人類の発展―脳の進化、農業革命と産...

ー 人類の旅は、魅惑的なエピソードに富んでいる。ディテールの大海原に漂い、波にもまれていると、水面下の強力な流れはつい見過ごしてしまう。本書の第1部では、これらの底流、つまり技術の進歩と人口の規模や構成との相互作用に焦点を当ててきた。こうした力が人類の発展―脳の進化、農業革命と産業革命という二つの重大な革命、人的資本への投資の増加と人口転換など、私たちを地球上でもっとも有力な種にした主な出来事にどんな貢献をしたかを把握せずに人類の歴史を理解するのは、事実上不可能だ。 これらの底流はすべてを統合する概念の枠組みを提供し、人類の旅を理解する明確な軸を与えてくれる。それがなければ、人類の発展の歴史は単に事実を年代順に羅列した一覧になってしまい、文明が栄えては滅ぶことを繰り返す不可解な光景が広がるばかりだろう。 そうは言うものの、生活水準はどこでも同じように改善したわけでもなければ、向上の速さが一つに決まっていたわけでもない。それどころか、現代の人類の状況は、世界の人々の生活水準が主として出生地に左右されるという点で過去に例を見ない。現代の国家や地域のあいだに存在する貧富の巨大な差の根本原因は、何なのだろう? 人間の社会はみな、それぞれ発生した場所の歴史と地理の制約を受け続けざるを得ないのか? 現在の格差は、おおむね起こるべくして起こったのか、あるいは偶然だったのか? 深く根づいた制度や文化や社会の特性は、国家間の豊かさの相違が生まれる過程で、どのような役割を果たしたのだろうか? ー 「歴史の準自然実験」の論証の正当性は詳しくは学んでいないので分からないが、第一部の“何が成長をもたらしたのか”、は刺激的で面白かった。 第二部の“なぜ格差が生じたのか”、はうまくはぐらかされている感じがした。何故かはここでは議論しないが、未来志向、教育、技術革新、男女平等、多元主義、ダイバーシティが普遍的な繁栄のカギ、というのが結論のようだ。 ん〜、結論の前までは良かったのに、結論の後に、未来は明るい、気候変動も何とかなる、我々は解決出来る、と結ばれると、急に胡散臭くなる。 これは彼のマルサスへの評価と同じで、過去はうまく説明出来たが、未来予想はイケてなかった、と同じような気がした。

Posted by ブクログ