商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 小学館 |
発売年月日 | 2022/03/15 |
JAN | 9784093866415 |
- 書籍
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コスメの王様
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商品レビュー
3.9
39件のお客様レビュー
二人の人生が丁寧に描かれたこの物語に夢中になりました。この一冊を読んで、彼らの人生と共にこの本そのものを大切にしたいと思えました。
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一言で表すなら「朝ドラチック」かな。 主人公の一人が屋形(置き屋のこと)に牛より安い値段で売られたという、現代の朝ドラ的には不適切な設定だが、作品全体に時代の風が爽やかに吹き抜けていた。 また神戸が舞台で、主人公のハナが生活する屋形の姐さんやお座敷に出入りするお大尽方特有の言葉遣...
一言で表すなら「朝ドラチック」かな。 主人公の一人が屋形(置き屋のこと)に牛より安い値段で売られたという、現代の朝ドラ的には不適切な設定だが、作品全体に時代の風が爽やかに吹き抜けていた。 また神戸が舞台で、主人公のハナが生活する屋形の姐さんやお座敷に出入りするお大尽方特有の言葉遣いが小気味よく飛び交う…といったところが、朝ドラチックだなと思った次第である。 「どんなに悲しくても憎くとも、利一には狂うことはできない。ただ、前を向いて進むだけだ。これからも、権力でもなく暴力でもなく金でもなく、たったひとつ真心だけを武器にして」(P 181) 故郷 山口から若くして神戸に出てきた少年利一と、(冒頭でも書いた)屋形に売られてきた少女ハナの甘酸っぱくてほろ苦い一代記。ひょんなことから出会いを果たした二人は驚くほど馬が合い、やがてその交流は日本を代表する商品のヒットへと繋がっていく…。 利一は貧困から中学に進学できず、お家再興のためビジネスや英語の習得にと、日夜けなげに励んでいる。独立してからも、ワーカホリックで馬鹿正直なくらい誠実なビジネスパーソン・商魂たくましいアイデアマン…と、仕事のために生きている印象だ。 「仕事の次に家族」というスタンスが「ちょっとそれまずいのでは?」と、心配にさせる。 彼の働きぶりやキャリアがあまりに克明だったので調べてみると、やはり実在の人物をモデルにしていた。 中山太一(本書は永山利一。固有名詞を変えるあたりも「ザ・朝ドラ」だな…)。本書同様、洗い粉(洗顔料)や(当時主要成分だった)鉛不使用の化粧下地が爆発的にヒットし、「東洋の化粧品王」の異名をとった。彼が一代で築き上げた会社は「クラブコスメチックス」に名称を改め、現在も続いているという。 これまた本書同様、穏やかな余生を過ごされていたのかな。 「芸妓というものはみな剣山の上に座っている、きれい事をしゃべる生け花だ」(P 73) 対するハナは、とにかく理にさとい。 長年にわたる屋形生活やお座敷での接待からか、常に私見を抑えて何もかも客観視している。ハナへの想いをなかなか果たせず、仕事への情熱にひた走る利一より何歩もリードしているように思えた。 だから彼女が感情を露わにしていくシーンでは度肝を抜かれ、同一人物だと認めるのに大分時間がかかった。しかし終盤、同じく想いを吐露した利一との対峙で「あぁ…二人はやっぱり似たもの同士だったんだな」と、その意外性が腹に落ちていったのである。 初恋の仲だと思わせといて、その実態は苦楽を共にした戦友だったのだ。 明治後期から大正・昭和初期… 民間にも西洋化が浸透していくフェーズであっても、まだまだ本当の自分を曝け出せなかった時代。 ハナや屋形の姐さんらは白粉で顔を固め、お座敷に上がればたちまち芸妓の顔になる。利一は利一で、どんなトラブルがあってもビジネスマンとしての顔を決して崩さない。それで上手くやり過ごせていても、「自分はどんな人間なのか」を二人は見失っていた。 だからこそ彼らの晩年は、永山心美堂の洗い粉を使ったようにこざっぱりとして見えた。
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馴染みのある方言で進む会話や、よく知る地名が出てくるストーリーが心地よくすいすい読めた。 また、信念を持って自分のやりたいことや目指すものに向かってひた走る人のエネルギーに圧倒された。特にハナが誰にも流されて生きたくはない、と渡米するところシーンが胸を打った。 生きていく上で大事なのは人との縁とお金なのではとうっすら思っているけれど、それらを引き寄せるには"真心"が必要なんだと感じさせてくれた。チヨと利一が最後には二人好きなようにゆっくり過ごす時間が持てて本当に良かったと思う。
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