コスメの王様 の商品レビュー
一言で表すなら「朝ドラチック」かな。 主人公の一人が屋形(置き屋のこと)に牛より安い値段で売られたという、現代の朝ドラ的には不適切な設定だが、作品全体に時代の風が爽やかに吹き抜けていた。 また神戸が舞台で、主人公のハナが生活する屋形の姐さんやお座敷に出入りするお大尽方特有の言葉遣...
一言で表すなら「朝ドラチック」かな。 主人公の一人が屋形(置き屋のこと)に牛より安い値段で売られたという、現代の朝ドラ的には不適切な設定だが、作品全体に時代の風が爽やかに吹き抜けていた。 また神戸が舞台で、主人公のハナが生活する屋形の姐さんやお座敷に出入りするお大尽方特有の言葉遣いが小気味よく飛び交う…といったところが、朝ドラチックだなと思った次第である。 「どんなに悲しくても憎くとも、利一には狂うことはできない。ただ、前を向いて進むだけだ。これからも、権力でもなく暴力でもなく金でもなく、たったひとつ真心だけを武器にして」(P 181) 故郷 山口から若くして神戸に出てきた少年利一と、(冒頭でも書いた)屋形に売られてきた少女ハナの甘酸っぱくてほろ苦い一代記。ひょんなことから出会いを果たした二人は驚くほど馬が合い、やがてその交流は日本を代表する商品のヒットへと繋がっていく…。 利一は貧困から中学に進学できず、お家再興のためビジネスや英語の習得にと、日夜けなげに励んでいる。独立してからも、ワーカホリックで馬鹿正直なくらい誠実なビジネスパーソン・商魂たくましいアイデアマン…と、仕事のために生きている印象だ。 「仕事の次に家族」というスタンスが「ちょっとそれまずいのでは?」と、心配にさせる。 彼の働きぶりやキャリアがあまりに克明だったので調べてみると、やはり実在の人物をモデルにしていた。 中山太一(本書は永山利一。固有名詞を変えるあたりも「ザ・朝ドラ」だな…)。本書同様、洗い粉(洗顔料)や(当時主要成分だった)鉛不使用の化粧下地が爆発的にヒットし、「東洋の化粧品王」の異名をとった。彼が一代で築き上げた会社は「クラブコスメチックス」に名称を改め、現在も続いているという。 これまた本書同様、穏やかな余生を過ごされていたのかな。 「芸妓というものはみな剣山の上に座っている、きれい事をしゃべる生け花だ」(P 73) 対するハナは、とにかく理にさとい。 長年にわたる屋形生活やお座敷での接待からか、常に私見を抑えて何もかも客観視している。ハナへの想いをなかなか果たせず、仕事への情熱にひた走る利一より何歩もリードしているように思えた。 だから彼女が感情を露わにしていくシーンでは度肝を抜かれ、同一人物だと認めるのに大分時間がかかった。しかし終盤、同じく想いを吐露した利一との対峙で「あぁ…二人はやっぱり似たもの同士だったんだな」と、その意外性が腹に落ちていったのである。 初恋の仲だと思わせといて、その実態は苦楽を共にした戦友だったのだ。 明治後期から大正・昭和初期… 民間にも西洋化が浸透していくフェーズであっても、まだまだ本当の自分を曝け出せなかった時代。 ハナや屋形の姐さんらは白粉で顔を固め、お座敷に上がればたちまち芸妓の顔になる。利一は利一で、どんなトラブルがあってもビジネスマンとしての顔を決して崩さない。それで上手くやり過ごせていても、「自分はどんな人間なのか」を二人は見失っていた。 だからこそ彼らの晩年は、永山心美堂の洗い粉を使ったようにこざっぱりとして見えた。
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馴染みのある方言で進む会話や、よく知る地名が出てくるストーリーが心地よくすいすい読めた。 また、信念を持って自分のやりたいことや目指すものに向かってひた走る人のエネルギーに圧倒された。特にハナが誰にも流されて生きたくはない、と渡米するところシーンが胸を打った。 生きていく上で大事なのは人との縁とお金なのではとうっすら思っているけれど、それらを引き寄せるには"真心"が必要なんだと感じさせてくれた。チヨと利一が最後には二人好きなようにゆっくり過ごす時間が持てて本当に良かったと思う。
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19世紀初頭〜戦後にかけて、激動の時代を生き抜いた、利一とハナ。 利一は、山口から丁稚奉公で、ハナは、上の兄の進学費用がかさみ、花街に売られて、神戸へたどり着いた。 そこで2人は出会い、一度は交錯しながら、別離へと向かう。 コスメの王国を創り上げる利一の物語は、ハラハラしなが...
19世紀初頭〜戦後にかけて、激動の時代を生き抜いた、利一とハナ。 利一は、山口から丁稚奉公で、ハナは、上の兄の進学費用がかさみ、花街に売られて、神戸へたどり着いた。 そこで2人は出会い、一度は交錯しながら、別離へと向かう。 コスメの王国を創り上げる利一の物語は、ハラハラしながら、石鹸やオシロイは、こうして産まれたのかと面白く。 戦争で全てを奪われて、やがて年老いて、また2人の人生は、付かず離れず。 真心を失わずに生きた利一は、間違っていなかったと思う。 ハナがアメリカに渡った決断には、あっぱれ。
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ハナと利一のひたむきに生きている姿に胸を打たれる。 利一には実在のモデルがいるとのこと。物語はもちろんフィクションだけど、こんなふうに事業に情熱を注ぐ人たちがいたのだろうなとこの時代に思いを馳せた。
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流し読みで1.5時間くらいで読んでしまったが、結構話が読めた。 似た顔の2人の全く別の人生の話。表紙にいくつか伏線があって楽しめた。 化粧品を愛する人にはぜひ読んで欲しい作品。
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時代物はちょっと苦手で、なかなか読み進まなかった(汗) 子どもが売られる、にわかに信じがたいが、ほんの100年ほど前にあったこと。その事実を私たちはどう受け止めるのか。そこから始まっているように思えた。 お互いに売られて神戸の街で出会ったハナと利一。家族がどうしようもない人だ...
時代物はちょっと苦手で、なかなか読み進まなかった(汗) 子どもが売られる、にわかに信じがたいが、ほんの100年ほど前にあったこと。その事実を私たちはどう受け止めるのか。そこから始まっているように思えた。 お互いに売られて神戸の街で出会ったハナと利一。家族がどうしようもない人だということはこんなにも残酷なことなのか。二人の生き方は努力そのもの。
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パラパラ読んだときに花隈の地名が目に入って、学生時代を神戸で過ごしたので懐かしくなって読んでみることに。 飛行機で自身の会社を宣伝するという大胆な導入場面。利一が興した会社はまさに発展していくその時でそれを見ながらハナはいっそう利一が愛おしくなるのだった この場面が疾走感と希望いっぱいのキラキラ感がすごい 高殿円さんが描写すると眼の前に浮かんでくるよう 全部読み終わってから思ったけど、この場面は利一と離れることを決めているところなんよね ほんまに愛おし!と言いながらもう一生会うことはないって決めている 自分はこれからどんどん大きくなる利一の邪魔にしかならないから… 切ない!! この本には色々と対になっている部分があると思った 整った顔立ちがよく似ているハナと利一 大家族を支えたいと都会で頑張る利一と朝生 仏様とキリスト教 ハナと利一の関係はもちろんのこと、利一と朝生も気になった 境遇も想いも似ていたのに2人の生き方はまるで違ってて 朝生は聖書を利用して私欲のために人々を陥れ、利一は真心を大事にみんなを幸せにする… お寺の掃除に疲れて寝転がると、金色の仏様の飾りに囲まれているようだった いつも仏様が見ている、だから真心を大事にしなくては、みんなを幸せにしなくちゃという気持ちで育っていけたのかもしれない 例え、学校に行けないほど貧しくても… ハナも利一も心に大きな鉄の箱を持ってて、その中に自分の気持ちを入れてきた 花街に売られたくない、上の学校に行きたい… 年を取った2人が自分の気持ちを全部言うことができて、ただの狸の子だった小さな頃に戻れてよかった
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高殿円さんの作品はたまに面白くないなと思ってしまうものもあるけれど、こちらの作品は面白かった。 子どもの頃に出会ったふたりの大恋愛?物語。 プロポーズ的な雰囲気のシーンはちょっと泣けた。 一時は上手くいくように見えたけれど、様々な事情や時代の流れのために離れ離れになりそれぞれの人...
高殿円さんの作品はたまに面白くないなと思ってしまうものもあるけれど、こちらの作品は面白かった。 子どもの頃に出会ったふたりの大恋愛?物語。 プロポーズ的な雰囲気のシーンはちょっと泣けた。 一時は上手くいくように見えたけれど、様々な事情や時代の流れのために離れ離れになりそれぞれの人生を歩んでいく2人。 最後はハッピーエンドでよかった。 残念な点は、出来事が淡々と語られてる印象が強くてなかなか感情移入しづらい。 三人称視点だからかもしれないけど、もっとふたりの感情や葛藤とか考えていることがより詳しく描写されていて、人間味がもっと読み手が感じることができればよかったかもしれない。 ドラマティックな時代背景、人情溢れる花街、分かりやすい成功展開、これだけ間違いない題材が揃っているのにもったいない。
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利一もハナもたがいの背中を見つめながら 前へと進んでいっているなと思った。 ハナのためにから始まり、 大衆が使える化粧品をと品質や材料をこだわって作る。 利一の世の中を読み取る力が凄くて、 これほど頭が回れば物も売れるだろうなと思ったが それよりも、ハナを想う気持ち、大衆を想う気持ちが 人を引き付けたんだろうなと思った。 ハナも利一を見ながら花街で技術を磨き、 利一にこれだという助言をして何度も助けてきた。 いつかおたがいに…と思っていた利一がハナに送った 「僕が大阪の堺町あたりに家を買うたら… その家に銀杏の木があったとしたら、 いや、なくてもや。 もうお座敷にはでんで、 僕の前だけでたぬきを踊ってくれる?」 というプロポーズが ハナのことをとても想っているなと 心が温かくなった。 恋愛小説をてんで読まないけど これにはきゅんとしてしまった。 ハナが泣く泣く利一と日本に分かれを告げるところも 涙が出てしまった。 芸妓はただ男に媚びをうっているものだと思っていたけど 実は、仕事と仕事や人と人の縁をうまく結ぶ そんな役も買っていたんだなとこれを読んで知った。 それも踏まえたうえで、大金を積んでいるんだよなあ。 最後、二人ですき焼きを食べれて良かった。
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