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十六の夢の物語 M・パヴィッチ幻想短編集
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十六の夢の物語 M・パヴィッチ幻想短編集

ミロラド・パヴィッチ(著者), 三谷惠子(訳者)

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十六の夢の物語 M・パヴィッチ幻想短編集

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 松籟社
発売年月日 2021/10/27
JAN 9784879844132

十六の夢の物語

¥2,090

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2025/09/03

『こっそりとわたしは手袋をとって、目の前に持ってきた。そこにははっきりと、噛みついた傷跡が見えた。あの夜の悪夢のあと、わたしは、あの毛布の男は誰だったのか、殺人者は誰なのかと自問した。そして思いもかけなかった、けれど明らかな答えを見つけた――あれはわたしだったのだ』―『バッコスと...

『こっそりとわたしは手袋をとって、目の前に持ってきた。そこにははっきりと、噛みついた傷跡が見えた。あの夜の悪夢のあと、わたしは、あの毛布の男は誰だったのか、殺人者は誰なのかと自問した。そして思いもかけなかった、けれど明らかな答えを見つけた――あれはわたしだったのだ』―『バッコスとヒョウ』 ミロラド・パヴィッチの紡ぎだす夢の物語は、どこかで必ず現実との繋がりが存在する。存在する現実は現在であったり過去であったりするが、夢の物語と言いながらそれはどこかしら風刺のような響きがするのはその為かも知れない。著者紹介には「小説を読む行為に読者をより能動的に関わらせる仕掛けを施した作品を多数発表」とあるので、案外とその印象は正しいもののようにも思う。セルビアという歴史的にも地政学的にも輻輳する流れの衝突する土地で、流れは自ら混濁を生み出し、何もかもが曖昧な解釈の中に流れ込んでは混じり合い混迷を演出する。夢の物語もまた、どこかそんな混迷の物語のようにも読める。例えば冒頭引用した文章をさらりと読めば、夢の中の混沌とした話のように読むことはできるけれど、これをバルカン半島の歴史になぞらえてみて「因果関係」を見出そうとする行為の風刺だと読んでみることもできるのではないか。中学生の頃に「第一次世界大戦はセルビア人青年がオーストリア皇太子を暗殺したことによって勃発した」などと矮小化された簡単な文言として習ったけれど、それは原因と結果を何も説明していない。それと似た構図を引用の中に見出すのは穿ち過ぎた解釈だろうか。 『その手はすばらしい彫像のようで、そのことはステッキの上に投げ出された手袋からも見て取ることができた。美しい指をピアノの鍵盤の上に舞わせながら、同時にピアノの上で曾祖母とチェスに興じることもできた。鹿の角製のスプーンで食事をとり、葉巻の煙を自分のポケットの中に吹き込むのが得意で、毎日昼を過ぎると、カフェに行って、時間の止まる時が訪れるのを待った。というのも、時間にはとくに、午後のカフェで止まる習慣があるからだった』―『ロシアン・ハウンド』 夢の物語と言えば、先ずは夏目漱石の「夢十夜」なのだけれど、パヴィッチの文章にも漱石のそれと似た手触りが無くもない。何か解釈のしようがあるものがそこには漂っているのだが、しかと掴むことを文章が拒む。もちろん、漱石の夢よりも固有名詞や歴史的事実への連想が多いこともあり、指し示しているものはもっと具体的な何かなのだろうけれど、歴史的教養の不足が災いしてどこまでも霞が掛かったような状態に置き去りにされる。ただ、時折、詩人特有のやや淫靡な表現に出くわして、くう、となる。ちょっとだけ癖になる。

Posted by ブクログ

2022/05/07

読書が一つのインプットあるいは体験だとします。 昨今のインプットあるいは体験は、効率的、網羅性、費用対効果、論理性、アハ体験、腹落ち、3分でわかる、寝ながら学べる、などが求められ重要視されることが多いです。 本書はそのようなものと対極にあります。 セルビア生まれで文学史が専門...

読書が一つのインプットあるいは体験だとします。 昨今のインプットあるいは体験は、効率的、網羅性、費用対効果、論理性、アハ体験、腹落ち、3分でわかる、寝ながら学べる、などが求められ重要視されることが多いです。 本書はそのようなものと対極にあります。 セルビア生まれで文学史が専門の著者の小説である本書では、日本人の我々にはほとんど馴染みのない人名、地名がかなり出てきます。バルカン半島の歴史や地理、宗教の知識も少なければ読書速度は落ちます。 そして小説の物語は理解しにくく、しばしば脈絡がないようにみえ、提示されているように思われた謎は解けません。 通常の読書体験が体に染み付いていると、違和感ーあるいは人によっては不快感ーが感じられるかもしれません。 ですがその違和感が本書の大きな魅力の一つです。 タイトルにもある夢。 寝ている間には色々な夢を見ることがあり、その中にはとても不思議なものがあります。 独特な色使いの世界、知人ではない人の出現とその関わり、物語の散在と飛躍、空間や時間の歪み、生の拡張と死の脱臼。 そういった夢の感触は、覚醒直後に急速に離れていき、その喪失感もろともすぐに失われてしまいます。 本書を読んで、そういう失われた夢が自分にはあったことが思い出されます。またそんな夢や覚醒後の喪失感にまた出会えたようななんともいえない感動、人間世界や人間の認知の可能性や不思議さを感じました。 そういう感覚をこんなに短い文章で人に与えられる著者に出会えたことに感謝です。

Posted by ブクログ