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雨の島 苦雨之地
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雨の島 苦雨之地

呉明益(著者), 及川茜(訳者)

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雨の島 苦雨之地

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2021/10/23
JAN 9784309208398

商品レビュー

4.1

13件のお客様レビュー

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2025/04/30

 誠実な筆致から描き出される、細密でありながら時に滲んだような陰影と広がりのある世界が美しい。ただ、大切な人の喪失というテーマをいくらかでもエモーショナルに描く作品について、私はどうも一線を引きがちであり、あまりいい読者ではなかったかもしれない。(これはあまり人には言いにくい理由...

 誠実な筆致から描き出される、細密でありながら時に滲んだような陰影と広がりのある世界が美しい。ただ、大切な人の喪失というテーマをいくらかでもエモーショナルに描く作品について、私はどうも一線を引きがちであり、あまりいい読者ではなかったかもしれない。(これはあまり人には言いにくい理由からだし、この作品が感傷的だという気は全くないけれど。)  そして喪失と再生の物語だと思って読んでいたら、作者後記で「私は小説という形式を借りて、人間と環境の関係の変化、人間と種との関係について想像し、一つの生物としての人間の精神の進化を、特にこの私が生まれ育った島国である台湾において感じとろうとした。」とあってちょっと混乱。  愛する人を喪った登場人物たちは、彼らとのつながりを追い求めるように自然の中に分け入り、交感し、そこに徴を読み取り、世界と新たな関係を築き直す。最後の「サシバ、ベンガル虎および七人の少年少女」のなかで出てくるプロローグでは、はるか昔、人間と動物は同じ言葉を話していたと語られる。しかし、象徴を読み取る生き物は恐らく私たちだけであり、そのため私たちは私たちの言葉を発達させていった。そういった過程のことを指しているのだろうか。

Posted by ブクログ

2025/04/13
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※このレビューにはネタバレを含みます

読み始めてからだいぶ間が空いてしまったので忘れてしまったけれど… ゆるく関連した短編集。クラウドの裂け目というウイルスが、人のSNSを分析して、個人のファイルを閲覧する鍵を知人に交付する近未来。でもその鍵を使って今は亡き人の足跡に触れ、何かが解明される、というのが主軸ではなく、それぞれの主人公が自然との関わりの中で、あるいはその他者に思いを馳せたり追憶したりしながら生きていく姿がメインだった気がする。亡き妻が残した小説から、幻の雲豹を探しにいくとか。傷を抱えた個人が自然の中でもがきながら、その傷を見つめて乗り越えていこうとする話、というか。そこまですっきり解決するわけではないんだけど、その葛藤が描かれている感じ。

Posted by ブクログ

2024/05/18

明晰で硬質な言葉によって書き留められた自然描写のなんと素晴らしいことだろう。 自然は、うちに秘めた合理性と、完璧な精緻さによって僕等をいつだって驚嘆させる。 顕微鏡が捉えたかのような完璧さを、柔らかく滲ませて、水彩絵の具を何層も重ねていったかのように透かして見える奥行きを与える...

明晰で硬質な言葉によって書き留められた自然描写のなんと素晴らしいことだろう。 自然は、うちに秘めた合理性と、完璧な精緻さによって僕等をいつだって驚嘆させる。 顕微鏡が捉えたかのような完璧さを、柔らかく滲ませて、水彩絵の具を何層も重ねていったかのように透かして見える奥行きを与えるのは、ひっそりと降る雨だけではない。 細密画には書き込めない、網膜に映らないものが自然の中には確かにあるのだ。 季節や天候の移ろいに、動植物の営みに、人は意味や徴しを見いだし、記憶や自己を重ねてゆく。つまりそれは、世界に物語りを付与するということ。 そうやって人は、目に映るあるがままの自然から、己のためだけに差し出された特別な美しさを受け取ることになるのだ。 それはまた、己が歩む道標を見つけるということ。 泥土を喰む雨虫に導かれて辿りついた西の果ての地で、ルーツである台湾の山々に想いを馳せる。 かつては唯一の言葉だった鳥のさえずりを、聴力を失ったのちの世界で手話という新しく獲得した言語 ー それは発せられることも書かれることもない詩のようだ ー で伝える。 欠落を抱えて人々は自然の中へと深く足を踏み入れてゆく。揺れる巨樹の樹冠。雲海が湧き上がる高山。煌めく陽光が瞬く間に暴風雨へと変わる海洋。 “昨日は過ぎ去ったが、明日がくるとは限らない”場所で、失ったものを探し求めるかのように。 “クラウドの裂け目”が本当に意味するところは、僕にはわからない。美しくあれ醜くあれ、受け取ったkeyで開けられるのは他者の記憶であり、他者の目に映った自分だ。 keyは旅の始まりの扉を開けるに過ぎない。扉を抜けて人は、自然の中に自分自身で己を見つけるのだろう。

Posted by ブクログ