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雨の島 苦雨之地
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2021/10/23 |
JAN | 9784309208398 |
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雨の島
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商品レビュー
4.2
12件のお客様レビュー
明晰で硬質な言葉によって書き留められた自然描写のなんと素晴らしいことだろう。 自然は、うちに秘めた合理性と、完璧な精緻さによって僕等をいつだって驚嘆させる。 それを柔らかく滲ませて、水彩絵の具を何層も重ねていったかのように透かして見える奥行きを与えるのは、ひっそりと降る雨だけで...
明晰で硬質な言葉によって書き留められた自然描写のなんと素晴らしいことだろう。 自然は、うちに秘めた合理性と、完璧な精緻さによって僕等をいつだって驚嘆させる。 それを柔らかく滲ませて、水彩絵の具を何層も重ねていったかのように透かして見える奥行きを与えるのは、ひっそりと降る雨だけではない。 細密画には書き込めない、網膜に映らないものが確かにあるのだ。 季節や天候の移ろいに、動植物の営みに、人は意味や徴しを見いだし、記憶や自己を重ねてゆく。つまりそれは、物語りを付与するということ。 そうやって人は、目に映るあるがままの自然から、己のためだけに差し出された特別な美しさを受け取ることになるのだ。 それはまた、己が歩む道標を見つけるということ。 泥土を喰む雨虫に導かれて辿りついた西の果ての地で、ルーツである台湾の山々に想いを馳せる。 かつては唯一の言葉だった鳥のさえずりを、聴力を失ったのちの世界で手話という新しく獲得した言語 ー それは発せられることも書かれることもない詩のようだ ー で伝える。 欠落を抱えて人々は自然の中へと深く足を踏み入れてゆく。揺れる巨樹の樹冠。雲海が湧き上がる高山。煌めく陽光が瞬く間に暴風雨へと変わる海洋。 “昨日は過ぎ去ったが、明日がくるとは限らない”場所で、失ったものを探し求めるかのように。 “クラウドの裂け目”が本当に意味するところは、僕にはわからない。美しくあれ醜くあれ、受け取ったkeyで開けられるのは他者の記憶であり、他者の目に映った自分だ。 keyは旅の始まりの扉を開けるに過ぎない。扉を抜けて人は、自然の中に自分自身で己を見つけるのだろう。
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草や木、海や山、鳥や獣や昆虫に混じって、人が物語を奏でる。 背景ではなく物語のkeyとして…… 六つの中短編と挿し絵が一冊の物語としてまとまる。 これは、「ネイチャーライディング(自然書写)とフィクションの融合」だそうです。 でてくる自然は台湾由来のものを示すが、登場人物の名前...
草や木、海や山、鳥や獣や昆虫に混じって、人が物語を奏でる。 背景ではなく物語のkeyとして…… 六つの中短編と挿し絵が一冊の物語としてまとまる。 これは、「ネイチャーライディング(自然書写)とフィクションの融合」だそうです。 でてくる自然は台湾由来のものを示すが、登場人物の名前は一様に漢字表記ではない。これも台湾という土地の歴史が物語ること。 少し現実に引き戻される事柄として「クラウドの裂け目」「鍵」がどの物語にも登場する。 主人公をもう一つ不思議な事へ誘うkeyとなる。 ……正直、なんだか安易で、よくわからないかな〜 お気に入りの作者だけに、やや不満。
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雨が降らなくなってしまったために、餌となる虫を食べられなくなってしまった知り合いの鳥「胖胖」のために語った、とされる六つの物語が入った長編小説。 人とうまくコミュニケーションを取れないミミズ研究者と鳥類行動学者。恋人を失ったツリークライマーと、無差別殺人で妻を失った弁護士。絶滅し...
雨が降らなくなってしまったために、餌となる虫を食べられなくなってしまった知り合いの鳥「胖胖」のために語った、とされる六つの物語が入った長編小説。 人とうまくコミュニケーションを取れないミミズ研究者と鳥類行動学者。恋人を失ったツリークライマーと、無差別殺人で妻を失った弁護士。絶滅したクロマグロを探す男と、囚われた虎を解放しようとした青年。それぞれの物語では、対になる似た傷を負った人たちの傷が癒されるまでが語られる。 プロローグでは、雨が多かった島に、雨が降らなくなってしまったことで、畑が死にかけていることが語られる。そのため、この物語において雨は、命を救う恵みの雨として描かれる。 「雲は高度二千メートルに」では、妻を失った弁護士が、妻の書きかけた小説の続きを自ら書くことを決意する。「それは雲の上の雨で、雨の上の雨、往時が化した雨だった」という小説の終わりは、どことなく未来へと繋がる明るさを持っていて、好きだった。 一番印象的だったのは「アイスシールドの森」だった。ツリークライマーだった恋人が、木から転落したことで植物人間になってしまったことに負い目を感じる主人公は、高所恐怖症でありながら、自分も恋人と同じツリークライマーとなる。植物人間となってしまった恋人を、再び木の上に吊り上げ、一緒に過ごすラストが、とても印象的だった。
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