商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 集英社 |
発売年月日 | 2020/10/26 |
JAN | 9784087735048 |
- 書籍
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バグダードのフランケンシュタイン
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バグダードのフランケンシュタイン
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商品レビュー
3.6
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2005年、自爆テロが頻発するバグダードで、テロ犠牲者の遺体の欠片から造られた一人分の遺体に魂が宿り、自分たちを殺した者たちへの復讐を開始する。相棒をテロで喪ったショックから〈名無しさん〉を生み出してしまった古物屋、息子の戦死を受け入れず20年以上帰りを待ち続けている老婆、地元の有力者を敵に回し故郷を逃れた若きジャーナリスト、そして占星術師たちを使って治安維持を図りつつ権力中枢への返り咲きを夢見る元バアス党政権情報局将校―――〈名無しさん〉と彼に関わった人々、それぞれの正義の行方と人生に訪れた変化を街の喧騒とともに描いた群像劇。 衝撃的な設定にイラクの現状に対する作者の怒りと悲しみを感じるが、筆致はどこまでも軽妙で、ときに戦慄すべきシーンにもおかしみが漂っていたりする。登場人物は大勢いるが主人公はバグダードの街かもしれない。死と破壊が至る所に転がっていて市民が次々逃げ出していくのに妙に活気があって訪れてみたいとすら思えてしまう。 幕切れは苦い。いつの日か〈名無しさん〉=イラクの彷徨に終止符が打たれますように。
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粗筋に書いてある内容ではあるし、イラクという文化背景やその展開は、決して読み易いとは言い難いのだが、虚実不明な語り、それぞれ勝手な登場人物、現実と魔術的な内容が入り混じり、つい読み進む。 文学的にも自爆テロの位置付け、名無しさんの存在の根源的意義など、文学的に追求すべきものはありそう。 「百年の孤独」とか「悪魔の詩」「哀れなるものたち」とか、記憶にある感じだとそんな系統。
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2005年、イラク、バグダード。爆弾テロが多発する町に住む人々と、「名無しさん」と呼ばれる怪物の話。 息子の帰りを待つ老婆ウンム・ダーニヤール。爆発で友を失ったほら吹きの古物屋ハーディー。雑誌社で働き、社長のサイーディーに強く憧れるマフムード。占星術師を雇っている追跡探索局のスルール准将。 それぞれの身に起こった出来事の裏で、ハーディーが爆発でばらばらになった遺体を寄せ集めて作った「名無しさん」の犯罪が全編に渡って描かれる。 造主であるハーディーが単なる通過点でしかない、と断じられていたのが良かった。 罪なき人の寄せ集めであり、それぞれの復讐のために行動していたはずの「名無しさん」が、意義を見失っていく過程がグロテスクだった。魂よりも存在に執着していく。死にたくないと強く思う。 「完全な形で、純粋に罪なき者はいない。そして完全なる罪人もいない」 訳者あとがきがとても分かりやすかった。顔のない人々。魂を圧倒する肉体=存在。それらが2005年のイラクの混乱を表している。 愛する人や思い入れ深い場所なんかへの追憶は確かにあるが、そうした記憶は弱いもので、目の前に存在し直面する物体や状況に簡単に圧倒されてしまう、というのが良かった。端的に言うと心の弱さ、不確かさ、が前提にある。
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