商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 河出書房新社 |
発売年月日 | 2020/09/10 |
JAN | 9784309029160 |
- 書籍
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推し、燃ゆ
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推し、燃ゆ
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商品レビュー
3.3
1877件のお客様レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
生きていく上で求められる「普通」をこなせずに、その苦しさを言葉にすることもうまくできない女子高生あかり。アイドルグループ「まざま座」の一員上野真幸を推すことで、社会生活を辛うじて送っていた。ある日、その真幸がファンの女性を殴ってしまいネット炎上してしまう。 本文内ではっきりと書かれてはいないものの、主人公は精神的障害を抱えていて、家族間でも共有しているにもかかわらず、良い方向にいかなかった点にリアルな人間の脆さと弱さを感じた。生きづらい、と言葉で表すのは簡単だが、その中身について具体的に描けば描くほど怠けや甘えとの境界線がぶれていき、「ああ、これこそ苦しさの原点なんだろうな」と思えた。 推し活という言葉を与えられて、昨今のオタ活は随分とライトなものになったが、中にはこの主人公のように文字通りの生命線の人もいるのだろう、と微笑ましい気持ちだけでは済まない苦いものを感じた。 それにしても、作者のオタクに対するスタンスには感心した。オタ活の様々なスタイル(恋愛的に好き、作品が好き、すべてを信奉する等等)を全部肯定し「みんな違ってみんないい」を最後まで貫いている。登場するアンチすら、直接批判することもなく「『アンチ』という存在」として認めている気がする。真のオタク気質だと思った。
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読み進めるうち、主人公に『マイ・ブロークン・マリコ』やいただき女子りりちゃんが重なった。現実の生きづらさ、もどかしさ、バイト、家族関係、たくさんの「うまくいかないもの」の中で自分を支えた、推し。それがなくなる恐さ。
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控えめにいっても、これは傑作。 どんな本を読んだらこんな文章が書けるのか、いや、どれだけの本を読めば書けるのか。 何か、次元が違うような気がした。 面白いというか、すごい。すごい感性だなと。 これは純文学である。 大衆小説は、スラスラと一気読みできることが、一つの面白さの基準だ...
控えめにいっても、これは傑作。 どんな本を読んだらこんな文章が書けるのか、いや、どれだけの本を読めば書けるのか。 何か、次元が違うような気がした。 面白いというか、すごい。すごい感性だなと。 これは純文学である。 大衆小説は、スラスラと一気読みできることが、一つの面白さの基準だと思っている。 一方で、純文学は1ページ1ページをめくるのが重い。本書はそのような1ページの重さを感じさせる。 ラストシーンにもあるように、 「背骨」がなくなれば、這いつくばって生きていくしかない。重い体を引きずりながら。 “推し”は、アイドルに限らない。 自分の支えとなるもの、“背骨”となるものを、“推し”と呼ぶことができる。 恋人への依存、 仕事に対する強い自信、 熱心な宗教心、 ある分野を極めようとする行為… 私の中に、“背骨”となるような何かがなければ、立っていられないのかもしれない。 彼女にとっての“推し”はアイドルだったけど、誰しも、それにかわるものを持っている。 しかし、それは突然、偶然、目の前から消えて無くなる。 私の中にある、私だけのものーーそれがなくては生きていけないが、それは実に脆い。 作者の書くものを今後も追っていきたいと思った。 まだ若い作家さんである。よく、たくさんの経験をしなければいけないなどというが、本作の表現をみれば、それが大嘘であることに気付く。一つの経験に対する向かい合い方、広さよりも、深さが表現力を養う。 これは所属するコミュニティについても同じことで、コミュニティの大きさや所属数は、知見を広げるには役立つが、最小単位の家族の中だけでも、深く潜れば、宇宙のごとく果てがない。 巻末の金原ひとみさんの解説もまたよかった。 色々な解釈があるだろうが、「まさにこれ」という感想、解釈が書かれている。
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