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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房 |
発売年月日 | 2019/05/23 |
JAN | 9784152098603 |
- 書籍
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モスクワの伯爵
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モスクワの伯爵
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商品レビュー
4.4
28件のお客様レビュー
人生を投げないって実はすごく難しくて、かっこよくて、魅力的!正しく、賢く、健やかに!健気に!生きたいな!
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読みたかった本の中の一冊。 チャーミングな小説でしたが、最後のスリリングな展開には心踊りました。ロシア版『ショーシャンクの空』?。『自分の境遇の主人とならなければ…』は良い言葉でした。 600ページ、大晦日に読み終えて良かった❗映画『カサブランカ』、観てみます
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1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を...
1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を送ることに。滞在していたスイートから狭い屋根裏へ移され、客から従業員へいつしか立場を変えながら、ホテルが全世界であるかのように味わい尽くそうとした男の半生記。 トム・ハンクス主演のスピルバーグ映画みたいな小説。装幀から漂うウェルメイド感は読者を裏切らず、古き良き時代の上品な世界に連れていってくれる。 ロストフはソ連にとって文字通り「古い時代の人間」になってしまったのだが、各国の要人も訪れる高級ホテルであるメトロポールにはまだまだ彼と同じ時代の流儀と矜持を持った人びとが残り、働き続けている。最初あくまでメトロポールの客だったロストフは、時代を経てレストランの給仕長を担うことになる。確かにそれは時代が変わろうと、「どんな喧騒のなかでも、倒れたカクテルグラスを元に戻す」という優雅な秩序回復のしぐさが求められる役職なのだ。 ロストフが客であることをやめ、ホテルで働くようになる転換点が「さらば」の章なのだが、ここで自死を選ぼうとしたロストフと、そうとは知らず話しかけてきた養蜂家アブラムとの屋上での対話が作中で一番好きだ。二人が共に懐かしく思いだすニジニ・ノヴゴロドでの平和な日々は、二人の階級差が最も開いていた時代の記憶でもある。伯爵と養蜂家は膝を付き合わせて蜂蜜を賞味し、ロストフは自殺を取りやめる。 社会主義からは取り残されたが、ホテルには居場所を作ることができたロストフと対立するのが、メトロポールに併設されている庶民派ビストロの給仕から党員のコネで出世していくビショップだ。順調に出世していくところからして彼は外の世界で上手に立ち回っているんだろうけど、ホテルには必要とされていない、だからロストフを逆恨みするという悲しいキャラクターである。 ビショップはあとで読者をスカッとさせるためにヘイトを溜めていることがわかりすぎてしまい、彼の扱いは最後まで愛がなくて悲しかった。オシプすら愛嬌たっぷりに描かれているというのに。ロストフが逆恨みを買いやすいというのは妹の死をめぐるエピソードでも念押しされていて、それは彼の身についた優雅さの強調でもあるのだろうけど、私は庶民なのでちょいちょい鼻に付いてしまう。チャールズとの「このホテルは僕たちみたいな人間のために作られてるんですよ」なんて会話を、元投資家のアメリカ人が書いてると思うとイラッとする(笑)。でもこれは『バベットの晩餐会』にも通じる、貴族文化に対する憧憬と反発という大衆の二律背反そのものなんだろう。 この小説の一番の魅力は文体だと思う。「チャーミングな文体」と評されて、作者は「伯爵が引きだしたもの」と答えたらしいが、終始ユーモラスな地の文のテンションに引っ張られて最後まで楽しく読めた。古き良き完全な神視点の三人称だけど、これは全てを見ていたメトロポールの声だったのだろうか。日本語でも「チャーミング」という言葉がぴったりな訳文に仕上げてくれた宇佐川さんに感謝!
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