モスクワの伯爵 の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
600ページ、余す事なくなんて品のある作品だろうと思った。 この朗らかさと明るさが教養なんだな。 伯爵がこの途方もない軟禁生活を余儀なくされ、悲観の念がその胸に一片たりとも去来しなかったのかと言えばそうではないのだろうけど、それでもいつも顎を引いて胸を張り、自分の境遇の主であろうとする姿勢こそが教養であり品性だと感じ入った。 人生では避けられない別れを経験しながらも、最終章に至るまで、最後の一行に至るまでに伯爵を導いた友人たちは、間違いなく伯爵の生き方がつくりあげた財産だろう。 伯爵とソフィアの、明るく尊い未来での抱擁を心から祈る。
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舞台は1922年のモスクワ。 革命政府に無期限の軟禁刑を下された伯爵アレクサンドル・イリイチ・ロストフ。 メトロポールホテルのスイートに住んでいたが、 これからはその屋根裏で暮らさねばならない。 ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。 そんな境地に陥った伯爵の32年にも及ぶ軟禁の...
舞台は1922年のモスクワ。 革命政府に無期限の軟禁刑を下された伯爵アレクサンドル・イリイチ・ロストフ。 メトロポールホテルのスイートに住んでいたが、 これからはその屋根裏で暮らさねばならない。 ホテルを一歩出れば銃殺刑が待っている。 そんな境地に陥った伯爵の32年にも及ぶ軟禁の物語。 同作者エイモア・トールズの前作『賢者たちの街』と時代設定は同時期だが、 今作の方が個人的にはかなり好みでもあり、胸に刺さるものがあった。 コロナ禍というものを体験した現代の我々も、 ある種この軟禁というものに関しては共感を抱けるであろう。 だが、我々と大きく違うのは伯爵は残りの人生全てなのである。 想像しただけでゾッとしてしまう。 読み始めた当初は、この大ボリュームを一つのホテル内だけで やりくりすることができるのかと物語の行く末を訝しんでいたが、 登場するキャラクターたちの魅力さ、 そして何よりも伯爵の人生を投げ出さないその姿勢に心打たれた。 伯爵が体験する数々の素晴らしい出会い、それに尽きるであろう。 その出会いで培った友情、愛情、そして慈愛。 それがラストに一気に花開く。この構成はお見事。 一つの場所に閉じ込められた伯爵の人生が、 決して惨めなものではなかったということが詰まった素敵な物語であった。
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ユアン・マクレガー主演のドラマと並行して読了。 ロシア革命後にモスクワの高級ホテルに軟禁された伯爵の32年間のお話。 自分の置かれた状況を悲観せず、投げやりにならず、「自らの境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる」をモットーに、毎日を一生懸命生きる姿が印象的だっ...
ユアン・マクレガー主演のドラマと並行して読了。 ロシア革命後にモスクワの高級ホテルに軟禁された伯爵の32年間のお話。 自分の置かれた状況を悲観せず、投げやりにならず、「自らの境遇の主人とならなければ、その人間は一生境遇の奴隷となる」をモットーに、毎日を一生懸命生きる姿が印象的だった。 後半にはハラハラドキドキするエンタメ的なところもあり、やはりアメリカ人の書くロシアを舞台にした小説だな、という感じもあった。
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翻訳を挟むので文のリズムに乗るまで少し時間がかかるが、乗ってしまうとあっという間に読んでしまう。ロストフ伯爵の骨の髄まで染み込んだ紳士ぶり、博識ぶり、哲学的な語り、それにいくつになってもユーモアを忘れないチャーミングなお人柄がこの本に彩りを与えまくっている! 気づいていない伏線な...
翻訳を挟むので文のリズムに乗るまで少し時間がかかるが、乗ってしまうとあっという間に読んでしまう。ロストフ伯爵の骨の髄まで染み込んだ紳士ぶり、博識ぶり、哲学的な語り、それにいくつになってもユーモアを忘れないチャーミングなお人柄がこの本に彩りを与えまくっている! 気づいていない伏線なんかもたくさんありそうですし,ロストフ伯爵にもまた会いたいので絶対また読みます。
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映画化もされた2016年のベストセラー(邦訳は 2019年)。ストーリーの奇抜さ、時代背景、登場人物の魅力、細部の描き方とどれをとっても秀逸で、十分に長い小説ではあるのだが、読み終わるのが惜しくなるほど。最近読んだ小説の中では間違いなく最も秀逸な傑作。
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人生を投げないって実はすごく難しくて、かっこよくて、魅力的!正しく、賢く、健やかに!健気に!生きたいな!
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読みたかった本の中の一冊。 チャーミングな小説でしたが、最後のスリリングな展開には心踊りました。ロシア版『ショーシャンクの空』?。『自分の境遇の主人とならなければ…』は良い言葉でした。 600ページ、大晦日に読み終えて良かった❗映画『カサブランカ』、観てみます
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1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を...
1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を送ることに。滞在していたスイートから狭い屋根裏へ移され、客から従業員へいつしか立場を変えながら、ホテルが全世界であるかのように味わい尽くそうとした男の半生記。 トム・ハンクス主演のスピルバーグ映画みたいな小説。装幀から漂うウェルメイド感は読者を裏切らず、古き良き時代の上品な世界に連れていってくれる。 ロストフはソ連にとって文字通り「古い時代の人間」になってしまったのだが、各国の要人も訪れる高級ホテルであるメトロポールにはまだまだ彼と同じ時代の流儀と矜持を持った人びとが残り、働き続けている。最初あくまでメトロポールの客だったロストフは、時代を経てレストランの給仕長を担うことになる。確かにそれは時代が変わろうと、「どんな喧騒のなかでも、倒れたカクテルグラスを元に戻す」という優雅な秩序回復のしぐさが求められる役職なのだ。 ロストフが客であることをやめ、ホテルで働くようになる転換点が「さらば」の章なのだが、ここで自死を選ぼうとしたロストフと、そうとは知らず話しかけてきた養蜂家アブラムとの屋上での対話が作中で一番好きだ。二人が共に懐かしく思いだすニジニ・ノヴゴロドでの平和な日々は、二人の階級差が最も開いていた時代の記憶でもある。伯爵と養蜂家は膝を付き合わせて蜂蜜を賞味し、ロストフは自殺を取りやめる。 社会主義からは取り残されたが、ホテルには居場所を作ることができたロストフと対立するのが、メトロポールに併設されている庶民派ビストロの給仕から党員のコネで出世していくビショップだ。順調に出世していくところからして彼は外の世界で上手に立ち回っているんだろうけど、ホテルには必要とされていない、だからロストフを逆恨みするという悲しいキャラクターである。 ビショップはあとで読者をスカッとさせるためにヘイトを溜めていることがわかりすぎてしまい、彼の扱いは最後まで愛がなくて悲しかった。オシプすら愛嬌たっぷりに描かれているというのに。ロストフが逆恨みを買いやすいというのは妹の死をめぐるエピソードでも念押しされていて、それは彼の身についた優雅さの強調でもあるのだろうけど、私は庶民なのでちょいちょい鼻に付いてしまう。チャールズとの「このホテルは僕たちみたいな人間のために作られてるんですよ」なんて会話を、元投資家のアメリカ人が書いてると思うとイラッとする(笑)。でもこれは『バベットの晩餐会』にも通じる、貴族文化に対する憧憬と反発という大衆の二律背反そのものなんだろう。 この小説の一番の魅力は文体だと思う。「チャーミングな文体」と評されて、作者は「伯爵が引きだしたもの」と答えたらしいが、終始ユーモラスな地の文のテンションに引っ張られて最後まで楽しく読めた。古き良き完全な神視点の三人称だけど、これは全てを見ていたメトロポールの声だったのだろうか。日本語でも「チャーミング」という言葉がぴったりな訳文に仕上げてくれた宇佐川さんに感謝!
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めっちゃ好き…… 大変な境遇だけどずっと陰鬱とした雰囲気じゃないので読んでて元気が出るし、出てくる人が親切で良かった…… ソフィアが好きです。
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「優雅な生活が最高の復讐である」という言葉を地でいったような、ホテルという箱庭の中のめくるめく日々。限られた環境の中でも知性と明るさで朗らかに乗り切る伯爵の姿にこれこそが教養だ、という感じがした。
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