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アンコール セミネール第ⅩⅩ巻 講談社選書メチエ698
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アンコール セミネール第ⅩⅩ巻 講談社選書メチエ698

ジャック・ラカン(著者), 藤田博史(訳者), 片山文保(訳者)

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アンコール セミネール第ⅩⅩ巻 講談社選書メチエ698

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 講談社
発売年月日 2019/04/12
JAN 9784065153406

アンコール

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2020/10/21

ジャック・ラカンの本を読むことは、類のない快楽の体験である。比較的分かりやすいこの「セミネール」のシリーズですら、そのほとんどの文意は「分からない」。しかし、謎に満ちた言述を辛抱強く良い進めていくと、あるときふっと「分かった」ような感触が得られたりもする。だから「全然分からない」...

ジャック・ラカンの本を読むことは、類のない快楽の体験である。比較的分かりやすいこの「セミネール」のシリーズですら、そのほとんどの文意は「分からない」。しかし、謎に満ちた言述を辛抱強く良い進めていくと、あるときふっと「分かった」ような感触が得られたりもする。だから「全然分からない」のではなく、「なんとなく、分かってくるような気がする」というステージへの移行のプロセスが、何とも言えない冒険の愉悦なのだ。 少なくとも「語り」の面において、ジャック・ラカンは大変アタマが良いものの、もの凄い奇人変人で、どんどん独自の思考を推進しつつ、言語学上の概念を乱暴に精神分析に持ち込んでは、さらにそれらの概念を独自のものに変容させ、ひとつひとつ辞書に掲載するような明確さで定義することは避けるから、誰も彼の語りについて行けない。この頭脳明敏な変人はやたらとおしゃべりで、人に構わず自分の欲求で一人で延々と喋り続けるわけで、話はやたらと脇道にどんどん逸れまくり、いちいち持って回ったような言い回しで煙に巻いてしまう。 いつも定義のはっきりしないラカンの独特な用語は、それでも、ずっと読んでいるうちにだんだんと(漠然とながら)「分かってくる」。 この迷宮的な文章をさまようことは、私にとっては一つの大きな快楽である。 「セミネール」シリーズは岩波書店のハードカバーで最初のほうから和訳が刊行されているが、まだ前期の部分までしか出ていない。本書『アンコール』は全27タイトルに及ぶうちの第20巻目にあたり、後期のものに属する。こんな風にフライング的に出版されたら、岩波書店としては困るのではないか? それに、ラカンのセミネールはよく「前年の講義」あるいは「以前の講義」に言及するので、まだ訳されない第19巻んいついて語られても、こちらは何のことだかわからないから困る。このセミネールシリーズは、ラカンの思考の段階的発展を跡づけているので、かなり「積み重ね」の部分がある。だから、やはり最初から順に読んでいくのが正しいと思われる。 本書がかなり刺激的な内容であることは確かだが、できれば詳細な訳注をつけて、読者の理解を助けて欲しかった(岩波のもそうだ)。 これを読んでまた前期の「セミネール」を再読したくなった。幾つかの概念は、本書によってようやく分かった部分もあるので。 何度も何度も繰り返し読めば、ラカンの思想への理解は深まるだろう。フランス語は読めないから研究者にまではなれないが、マイペースで迷宮を楽しむ学習者にはなれるかもしれない。ただ、そこまでして、時間をかけて、取り組むほどの価値が、ラカンの思想にあるのかどうかはよく分からない。官能的な魅力を放っていることは確かなのだが。

Posted by ブクログ

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