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希望荘
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希望荘
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商品レビュー
3.9
121件のお客様レビュー
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杉村三郎が会社を辞め、離婚してから私立探偵となって調査を引き受けていく顛末記。今作には4つの事件が描かれている。 杉村の一人称で書かれる物語なので、杉村の感情の変化が見て取れるのは勿論、今までの事件に重ねながら読める解釈がある。是非シリーズを順番に読んでみてほしい。 探偵として成長した杉村の話を長編で読みたいという気持ちが大きくなったので今回は⭐︎3で! ①聖域 杉村探偵事務所の初めての事件。 コーヒーショップで早苗の悪意を聞いたあと、当分コーヒーの香りを嗅ぐのも嫌だと思った杉村に、これこれこれこれこれ!杉村のこういうところがいいんだよ!と何度も頷いた。 事件の依頼者でもなんでもない、途中で聞き込みをした相手でしかないベルにフォローを入れる性分が杉村の良さなのだ。 最初の事件を最後まで終わらせた(解決のその先)とき「探偵など、所詮その程度の存在なのだった。」とかける言葉を思いつかないところに安心した。 探偵になるべきと言われたことが何度もあって、紆余曲折はあったが結果として探偵になって、事件を解決しても全能官に浸るような人間でないとこが信頼できる由縁。 ②希望荘 寛二氏の置かれていた状況を自分と重ねて動揺する杉村三郎は、今までにいなかった彼だなと思った。 離婚する前、逆玉の輿だとかゲシュタポだとか色々と噂されても、ましてや目の前で立ち位置のことをどう言われても本人は掌中の幸福を眺めるばかりで傷付いている自覚はなかったから、自分の感情に気付けるようになってよかったと思う。 犯人なのでは、という考えが頭をよぎったとき、あくまで疑惑でそこからひとつずつ確認していく作業を読んでるときが気持ちいい。 夜遅くへの電話の対応もヒヤヒヤしない。探偵を始めたばかりの杉村に探偵としての貫禄とかはないんだろうけど、この人になら話しても大丈夫、この人なら話を聞いてくれると思わせる何かがあるんだろうな。 ③砂男 姉と巻田夫妻の話をしていたとき、最初は自身の離婚を済んだことだから大丈夫と言っていたけど、浮気が話題にあがったときには「やっぱり傷つくよ」と杉村が言った。 希望荘のとき動揺という言葉で済ませていた杉村が自身が傷つくと明確に気付いて、それを口にしたのに感激した(終わりもなければ自覚もない自己犠牲を続ける男だったんだから!) 広樹の話、読者は原田いずみのことを知っているから杉村の想像に説得力がある。広樹(仮)の話は、ペテロの葬列にあった「真実は美しいものではない。この世で最も美しいのは、終わらない嘘の方だ。」を思い出した。そして自身の評価を間違え続けてしまった広樹(仮)はまともな人間だった。だから嘘をつき続けることができなかった。皮肉。 正義感、公平さがシリーズ通して一貫していて助かる。 杉村が姪の言葉を大事にしてるのも素敵。老若男女関係なく同じような心持ちで向き合えるのは彼の長所である。 テーマに合った歌が流れるのは久しぶりな気がして懐かしかった。 ④二重身 これまでの3作では結婚生活のことを彷彿させるシーンで杉村が何度も瘡蓋を作り直していたけれど、昭見兄と対峙したときに、「企業のトップに検分されることになら、私は経験値を積んでいる。」と過去のことが糧になっていて拍手してしまった、杉村かっこいいぞ! 犯人が分かった高揚感で突っ走ることなんかしないで、昭見兄にも丁寧に説明するし、蛎殻所長に相談して慎重にお膳立てする。杉村の真面目なところが出ていて安心して読める。 真相はほぼ分かっていても実際目にすると「人が蒼白になる瞬間というのは、あまり目撃したいものではない。」「人が崩壊する瞬間というのは、さらに目撃したいものではない。」と感じる杉村は、謎を解きたくて探偵をしているわけじゃないのがよく分かる。 その喫茶店で流れていたBGMが嫌いになるような、人間らしい探偵である。最初は〈結果〉であって〈動機〉ではありませんように、と祈るような優しい男。 松永の殺意については希望荘で寛二氏が言っていた「悪いもんに取り憑かれた男がやったんだよ。」が頭をよぎる。 松永のそれは色恋沙汰ではなくて、今まで積み重ねてきた不幸が取り憑いたんだろう。 名もなき毒にあった「不幸ってのは、たいていの場合そうなんだな。あちらを立てればこちらが立たずというふうに噛み合っちまってる。こんがらがってほどけない紐みたいに」という秋山氏のセリフがまた頭をよぎった。
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'24年11月21日、AmazonAudibleで、聴き終えました。杉村三郎シリーズの、4作目だそうで… シリーズ順を無視して、アタックしてしまいましたが…とても面白かったです。 以前にドラマを何作か観たせいで…主人公のイメージが、「あの役者さん」から離れられなくて...
'24年11月21日、AmazonAudibleで、聴き終えました。杉村三郎シリーズの、4作目だそうで… シリーズ順を無視して、アタックしてしまいましたが…とても面白かったです。 以前にドラマを何作か観たせいで…主人公のイメージが、「あの役者さん」から離れられなくて、長編は読む気がせず、短編(というか、中編?)集である本作を聴きました。僕的には、大正解でした。 「聖域」のラストの、主人公の人柄がよく表れた優しい言葉に、胸打たれました。他の3編「希望荘」「砂男」「二重身」、どれも良かった!タイトルは?だけど…「二重身」も、上手いなぁ、と思いました。東北の震災時の大混乱を、思い出して…こちらも胸打たれました。 宮部みゆきさん、流石!
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離婚して、探偵業を始めた杉村三郎のお話。 いわゆる普通の探偵もののような、華麗なトリックとかはなかったけど、杉村三郎が依頼者に寄り添っていく形で、読ませる話だなあと感じた。 最後の「二重身」では、東日本大震災の話なども出てきて、当時の関東の話がリアリティをもって語られていたのが印象的だった。 私は、タイトルにもなった「希望荘」と「砂男」が一番心に残ったかも。 希望荘では、杉村三郎の老後か?って思うようなおじいさんが出てきたし、「砂男」ではいや、サイコパスにそこまで罪悪感を抱くか?って思いはしたけど。 杉村三郎シリーズもあと1冊。ここまで来たら見届けるしかないでしょ!
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