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リンカーンとさまよえる霊魂たち
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リンカーンとさまよえる霊魂たち

ジョージ・ソーンダーズ(著者), 上岡伸雄(訳者)

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リンカーンとさまよえる霊魂たち

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2018/07/24
JAN 9784309207438

リンカーンとさまよえる霊魂たち

¥3,740

商品レビュー

4.1

10件のお客様レビュー

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2024/05/26
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【生と死の狭間での気づき】 御話の進め方が新感覚の本でした。 お話は、アメリカ大統領のリンカーンが幼い息子のウィリーを病気でなくしてしまう実体験をもとに繰り広げられています。 お話の進め方が独特で、 実際にある文献資料と架空の資料を引用する形で、現実世界の文章が構成されています。 一方、生と死の狭間にある亡霊たちの世界では、彼らの会話劇のような形で構成されています。 ・・・ その世界では、 自分が死んだことを認められない亡霊たちの、未練や執着を顕にされています。 父リンカーンが息子の棺を訪れた際に、 亡霊ウィリーが父の身体にたまたま入り込んで、その心の声を聴くことになります。 そんな目新しい状況に、古参の亡霊者たちが少し興味を示します。 リンカーンの心の内には、 現実に自らの指揮により、多くの犠牲者が出ていることとの矛盾も省みられます。 息子の埋葬の日は、南北戦争でのドネルソン砦の戦いで、勝った北軍も負けた南軍も両軍1000人以上の兵士の死が発表された日でした。 「彼は一人だけだ。それなのに、この重みに私は死にそうになる。 …」 息子という一人をなくしたことで悲嘆にくれている自分に気付き、戦争の犠牲者への捉え方を少し変えることとなったのかもしれません。同時に生まれるのは、自分は何をしているのか、という避けられない問い。 ・・・ 亡霊者の世界では、最後の審判のシーンも出てきました。 ここでの行動はもう意味を持たない。 実世界での行動はもう変えられない、手遅れだ、と嘆きながらも、 審判での報いを恐れ、未だ死を先延ばしする人々。 虚栄心、他者の評価、運命という言い訳、尽きない欲、すべての利己心を克服できないでいる幽霊たち。 でもウィリーが来て、そして死んだ息子を見捨てずに棺を訪れる父リンカーンと交流する中で、幽霊の世界でも少し変化が。 父リンカーンがまた棺を訪れた際、今度は古参亡霊者の2人(ハンス・ヴォルマンとロジャー・ベヴェンズ3世)が、リンカーンのなかに入り込み、心の内を知ることから、新しい展開が生まれます。 もう一度、ウィリーを父の身体に入り込み、父の思いが息子に伝わることで、ウィリーがここに留まることなく、旅立つことが大事だ、と。 父と子の再交流というミッション! そして、偶然にもウィリーをなんとかしようという集団行動(みなでリンカーンの身体に入り込む!)が起こったときに、 自己の拡張を感じる体験をします。 そう、幽霊たちが気付いたことは、 個々での行動は必ずしも無意味ではないということ。幽霊となっていたウィリーを助け、実世界の父リンカーンをも助けることに貢献していたのです。 ___彼の心は新たな悲しみへと傾斜していった。世界は悲しみに満ちているという事実へ。すべての人が悲しみの重術を背負って努力している。すべての人が苦しんでいる。どのような道を進もうと。 すべての人が苦しんでいるという事実を忘れてはならない(満足し切っている者は一人もいない。すべての人が不当に扱われ、無視され、見過ごされ、誤解されている)。ゆえに、人は関わりのある人々の重荷が少しでも軽くなるように全力を尽くさなければならない。自分のいまの悲しみは自分特有のものではまったくない。これに似た気持ちを多くの人々が味わってきたのだし、これからも味わうことだろう。あらめる時代に、どんな時においても。だからこれを長引かせたり。誇張したりしてはならない。というのも、こういう状態にいると、自分は何の役にも立たない。そして、この世界における自分の地位からすると、大きく役に立つか害になるかのどちらかなのだから、沈み込んでいるわけにはいかないーーそれを避けることができるのなら。(本文より、ハンス・ヴォルマン) 皆に悲しみがあり、皆に悲しみに寄り添い、他者を助けられるー生きる意味の話もありました。 ・・・ キリスト教圏の、生と死の狭間、という設定は、やっぱり独特の雰囲気が漂い、引き込まれました。

Posted by ブクログ

2024/02/25

これは彷徨える悲しい死者の物語。 この世に未練を残した死者たちは、それぞれ利己的で偏屈で卑屈で、だけど愛嬌もありユーモラスに溢れている。 そんな彼らのもとに、幼くして亡くなったリンカーンの息子ウィリーがやってくることから、物語は動き出す。 彼らは、幼い子どもがこの世に留まろうとす...

これは彷徨える悲しい死者の物語。 この世に未練を残した死者たちは、それぞれ利己的で偏屈で卑屈で、だけど愛嬌もありユーモラスに溢れている。 そんな彼らのもとに、幼くして亡くなったリンカーンの息子ウィリーがやってくることから、物語は動き出す。 彼らは、幼い子どもがこの世に留まろうとすることでおこる醜悪な変化から守ろうと、一致団結してリンカーンの中に入って奮闘する。 息子を失う悲しみと、南北戦争の対比や、1860年代当時の黒人差別と貧困が見事に、死者の世界を通して描かれている。 死者はどこまでも自己中心的で、承認欲求に溢れ、生前の行為を正当化しようと歪んだ認知の中にいる。 しかし、それらはどれも私を共感させてギクリとする。 誰だって、こんなふうに死んだらこうなるんじゃないだろうか?と死者を擁護したくなる。

Posted by ブクログ

2021/10/10

こういう書かれ方珍しくない!!? へえ~~~~~~~~~となった リンカーンへのディスりって訳ではないんだろうが…凄いな…

Posted by ブクログ

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