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ウエストウイング 朝日文庫
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ウエストウイング 朝日文庫

津村記久子(著者)

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ウエストウイング 朝日文庫

990

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 朝日新聞出版
発売年月日 2017/08/05
JAN 9784022648532

ウエストウイング

¥990

商品レビュー

4.2

17件のお客様レビュー

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2024/04/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ネゴロ、フカボリ、ヒロシ。 会社員ふたりと小学生。本当だったら出会う可能性のない3人が、ビルの忘れられたような空間ですれ違いながら出会う。仕事や勉強からの、ほんの少しの隠れ場所。全編通して名前は知らない誰か同士だ。 三人ともなんとなく先を見通せず、それでもなげやりになはならず、日々を生きている。このぎりぎりな真面目感が好きだ。同じビルに集う人たちも魅力的。 すごく大きな出来事は起こらない。とも見えるけれど、実際に起こったら確実に人生を終えるまで覚えていそうなことが起こる。その描かれ方がやっぱり面白いなと思う。何が起きても、世界も自分もどうにかして対処し、そのときもその後も淡々と時を刻んでいくんだ、という強烈なメッセージ。 いちばんの大きな出来事は何より、隠れ場所の古い配水管にたまった水から発する菌を吸った3人が、徐々に体調を崩していくことだ。隠れ場所はついに発見され、未知の菌騒動となり、3人は検疫で陽性となってしまう。入院で隔離される3人。ビルも解体されそうに。 自分の責めではなくとも、奪われていくこと。ここも本当に淡々と奪われていく過程が描かれる。そんなときも、時は同じように刻まれる。一緒に絶望的になる。 絶望からのラストの解放感。やっぱり劇的ではないところが最高だ。3人が顔を合わせる。隠れ場所の人たちかなと推測しあう、でもそれを明かすなんてことはしない。ビル解体のための重機は動かない。 3人と一緒にほっと息をついて物語を終える。やっぱり最高だ。

Posted by ブクログ

2024/03/24

津村さんの作品は、これまで楽しく読んできた。 長編はこれが初めてかもしれない。 解体が噂される古びた雑居ビル「椿ビル」が舞台。 そこに入っている会社の事務員ネゴロ。 給料が安く、嫌みな上司や困った後輩に翻弄される以外は不服もないが、そのぬるさに不安も感じている。 そこに入っ...

津村さんの作品は、これまで楽しく読んできた。 長編はこれが初めてかもしれない。 解体が噂される古びた雑居ビル「椿ビル」が舞台。 そこに入っている会社の事務員ネゴロ。 給料が安く、嫌みな上司や困った後輩に翻弄される以外は不服もないが、そのぬるさに不安も感じている。 そこに入っている学習塾に通う小学六年生のヒロシ。 去年いじめにあったせいで、母は母子家庭で大変なのにヒロシの中学受験を望んでいる。 ヒロシは絵を描くことに才能があり、勉強には全く身が入らない。 母親の心配をうっとうしがりながらも、母親の意思を理解し、それに合わせていこうとする大人な面を持っている。 そして、そこに入っている検査会社に勤める若手サラリーマンのフカボリ。 社会人生活も数年目で仕事に大きな不満もないかわりに、特段熱意も感じていない。 一人暮らしの家をシェルターのように感じている一方、ふと一人で暮らしていることに不安を感じたり、結婚についてもやもや考えたりしている。 こんな三人が、それぞれの持ち場からビルの倉庫の物置に息抜きにやってくる。 三人は直接顔を合わせることがないまま、そこにあるものを貸し借りしたりして、お互いの存在を知っていく。 水害が起こったり、そのせいで給水タンクの水が汚染され検疫の対象になったり、取り壊し工事がはじまりそうになったりと、いろいろな事件が起こる。 そして最後に、三人はお互いの存在と顔が一致する形で出会うことになる。 …ということなのだが。 私が津村さんの作品に惹かれるのは、自然なところ。 プロットや語りの技術で読者をひきずりまわしたり、ドラマチックなできごとが連続するするような派手派手しいことがないことが好きなのだ。 自分の読む状況がよくなかったせいかな? 他の本を読む合間に、切れ切れの時間で読んでいったせいで、あまり集中しきれなかったことがあるのかもしれない。 けれど、豪雨で屋上の貯水タンクが壊れ、雨水が入ったことでビルに菌が蔓延するという件がどうも腑に落ちない。 タンクの水が飲み水になっていたというならわかるけど。 雨水で病原菌が蔓延するなら、普段雨が降るたびに病人が出てしまうことになる。 これまで読んだ作品に比べ、ちょっと自分の波長には合わなかった気がする。

Posted by ブクログ

2024/03/21
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

面白かった。津村先生の長編の物語です。 特別な事件やハラハラするような出来事は起こらないのですが、日常をこんなに面白く物語に出来るのが好きで、他の作品も好きだなと感じています。 今回も登場する人物それぞれに物語があって、ネゴロが新人に対して感じる苛立ちや ヒロシの大人な考え方や絵が上手なところ、はたまたフカボリの不幸な出来事に立ち合ってしまう体質など、、読んでいてクスクスと笑ってしまいました。特に、地下道が水没してしまった際に「渡し」がいるというシーンが可笑しかったです。 3人は最後まで出会わずに終わってしまうのかと思いましたが、無事に会えてビルを遠くから見守るような姿が想像できました。消しゴムはんこをヒロシから貰ったときのシーンも心を打つような感じがして印象に残りました。

Posted by ブクログ

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