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モラルの起源 実験社会科学からの問い 岩波新書1654
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モラルの起源 実験社会科学からの問い 岩波新書1654

亀田達也(著者)

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モラルの起源 実験社会科学からの問い 岩波新書1654

924

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2017/03/01
JAN 9784004316541

モラルの起源

¥924

商品レビュー

3.9

18件のお客様レビュー

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2025/01/06

文系学問が生き残る道を探る。 科学実験で立証されたことや仮説を利用して『実験社会科学』という方向性を見出そうとする試み。 だが、この本だけではその価値や意味を見出すのは難しい。 脳科学などの研究成果を社会学の視点で見直して行くような方法論のように見受けられるが、元の成果のデータの...

文系学問が生き残る道を探る。 科学実験で立証されたことや仮説を利用して『実験社会科学』という方向性を見出そうとする試み。 だが、この本だけではその価値や意味を見出すのは難しい。 脳科学などの研究成果を社会学の視点で見直して行くような方法論のように見受けられるが、元の成果のデータの扱い方やデータの解釈の仕方には残念ながら『科学』と名を付けるには程遠いものがある。 答えが先に有って、それを支えるのに都合の良い研究成果ばかりを集めてくれば『科学的』には見えるかも知れないが、それでは科学にはならない。 文系学問の側や共同研究からの発想や方法論が出て、それに協力して必要な理系学問分野が実験を行うような形式にならない限りは『実験社会科学』は達成されないのではないか。 文部科学大臣よりの通知に危機感を抱く著者の模索の道に理解は出来るが、まだ前途は厳しいというのが読んだ実感でした。 ただ、このように学際的な研究方法を模索して行くのは大切。今後も様々な方法で進む道を見出して行って欲しいと願う。

Posted by ブクログ

2021/08/08

人文科学と自然科学の接続をめざす野心的な試みにも見えるが、どうも周辺分野の学説を浅く広く紹介するにとどまり、終盤では人文寄りの話に終止している。「実験」社会科学を掲げているものの、社会心理学では昔から実験はごく当たり前だしね。 最後通告ゲームの結果に見られるように、ヒトの社会行...

人文科学と自然科学の接続をめざす野心的な試みにも見えるが、どうも周辺分野の学説を浅く広く紹介するにとどまり、終盤では人文寄りの話に終止している。「実験」社会科学を掲げているものの、社会心理学では昔から実験はごく当たり前だしね。 最後通告ゲームの結果に見られるように、ヒトの社会行動にも進化的な基盤を持つ(=概ね人類共通)ものとそうでもないものがあるみたいなので、もっとその境界を探ったりしてくれれば面白そうなのに。

Posted by ブクログ

2020/12/12
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

たとえばミツバチの群れが集合知を実現している例から、ではなぜ人間社会では集合知が実現しないか(あるいは、しにくいか)についての考察があります。ミツバチの社会は血縁社会で、個人が生き抜けばよいというよりも群れが生き抜けばよしとします。よって、次の営巣地(ハチの巣の構築候補地)を探しその候補地を集合知でもって決定するとき、各々のミツバチは個人の利害なくフラットな目で候補地を判断するようなのです。そして八の字ダンスでのプレゼンを繰り返しながら、群れの多数決で決められた次の営巣地は、客観的に見てもベストなところに落ち着くのだそうです。他方、人間社会では「情報カスケード」と呼ばれる、無条件で他者の情報を優先する心理状態によってたとえばエラーである情報が連鎖してしまうことが多々あります。これは集合知ならぬ、その反対の集合愚にあたるケースです。つまりミツバチにくらべて人間のほうは自分の目で判断していないから上滑りするような情報共有になってしまう。それも無自覚にそうだし、そのような傾向も強い。そのあたりを深掘りして考えると、人間は非血縁社会で生きているがゆえに、「まわりとは独立に、自分の判断で評価を下す」ことが当の本人にとって不利益になる可能性があり、その可能性が少しでもあるならば空気を読んでそれを避ける心理が働く、という機制の存在が浮かび上がってきます。つまり、ほんとうは実体のない「世間」というものへの意識が、人間社会での集合知を実現させにくくしている。本書では、「だから、それをやめよう」というスタンスではありません。人間のありようを深くまでみつめて、「そのうえでベターを考えられたなら」というようなスタンスでした。なので、啓もう的ではなく科学的な態度の本であって、それゆえに客観的に、それこそデリケートな概念である正義やモラルを考える地点に近づくことができるのです。 後半部では、「最大多数の最大幸福」を掲げる功利主義や「最不遇の立場を最大に改善すること」を掲げるマキシミン原則を扱います。著者としてはその折衷点を考えていく実用主義を探る方向へと光を投げますが、この折衷(妥協)の落とし所がむずかしいんですよね。ある意味、おおざっぱな見立てをする人には「ダブルスタンダード」に見えてしまうくらいの、すっきりと洗練されていないところからまず始めないと到達できそうにない気が個人的にしますし、もしかすると現実的な実用主義はそういったゴツゴツして洗練されていない状態を受け入れることを要求してくるのかもしれない、なんていうイメージもふくらみました。 ページ数のすくない、ぎゅっと凝縮された論考といった新書なので、読んでいて難しかったりもっと広く扱ってほしいと思う箇所も少なからずありました。それでもぐっと視野が広まる良書です。著者はあとがきで、批判的に読んでほしいと書いています。この分野を活発にするためにはそういった態度での読み方が大歓迎なのでしょう。そのためには読みこんでしっかり把握しなければなりません。社会学に足をつっこみたい人にはぜひとも手にとっていただいて、がんばって批判をひとつでもぶつけてみるとおもしろいと思います。

Posted by ブクログ