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プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで 中公新書2423
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プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで 中公新書2423

深井智朗(著者)

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プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで 中公新書2423

880

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 中央公論新社
発売年月日 2017/03/01
JAN 9784121024237

プロテスタンティズム

¥880

商品レビュー

4.1

28件のお客様レビュー

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2025/04/20

本書は、16世紀のマルティン・ルターによる宗教改革に端を発し、現代に至るまで世界の歴史、政治、文化に多大な影響を与え続けてきた「プロテスタンティズム」の潮流を、その起源から現代までの変遷と多様性をたどる一冊です。単なる宗教史に留まらず、政治思想史の視点も交え、複雑なプロテスタンテ...

本書は、16世紀のマルティン・ルターによる宗教改革に端を発し、現代に至るまで世界の歴史、政治、文化に多大な影響を与え続けてきた「プロテスタンティズム」の潮流を、その起源から現代までの変遷と多様性をたどる一冊です。単なる宗教史に留まらず、政治思想史の視点も交え、複雑なプロテスタンティズムの世界を解き明かします。 宗教改革前夜の中世キリスト教: ルター登場以前、西ヨーロッパはカトリック教会によって統一されていましたが、内部には様々な問題や改革への希求が潜在していました。ゲルマン文化との融合によるキリスト教の「ヨーロッパ化」、死後の救済への強い希求に応えるためのサクラメント(秘跡)制度の整備、一方で聖人崇拝や奇跡信仰といった民衆的要素の混在、そして教皇権威への疑問(公会議主義など)やフス、ウィクリフら先駆者の存在が、改革の土壌を醸成していました。 ルターの問いと改革の始動: 1517年、ドイツの神学者マルティン・ルターは、贖宥状(免罪符)販売を批判する「九十五ヶ条の提題」を発表。これは、罪の赦しは金銭ではなく、信仰と悔い改めによるべきだという根本的な問いかけでした。彼の主張は、単なる神学論争に留まらず、領邦君主の政治的思惑や神聖ローマ帝国と教皇庁との対立といった当時の複雑な状況と絡み合い、急速に広まります。 ルターの思想とその影響: ローマ教皇との対立、ヴォルムス帝国議会での主張撤回拒否(「聖書と明白な理性」に基づく立場)、そして破門を経て、ルターはカトリック教会の権威を根本から問い直します。彼の思想の核心は、「聖書のみ」(聖書主義)、「信仰のみ」(信仰義認)、「万人祭司主義」(全ての信者が直接神と繋がる)であり、これらは中世以来の教会ヒエラルキーを覆すものでした。聖書のドイツ語訳は、文化・言語にも大きな影響を与えました。 プロテスタンティズムの多様化: ルターの改革は、他の改革者たちにも影響を与え、プロテスタンティズムは多様な潮流を生み出します。 カルヴァン主義: スイスのジャン・カルヴァンは、「予定説」を強調し、より厳格な教会規律と社会倫理を提唱。長老制などの教会組織を発展させ、後の資本主義精神にも影響を与えたとされます(マックス・ウェーバー)。 再洗礼派(アナバプテスト): 幼児洗礼を否定し、成人の信仰告白に基づく洗礼を主張。国家と教会の分離を徹底し、信者の自発的な共同体を重視。迫害を受けながらも、後のメノナイトなどに繋がる流れとなりました。 二つの大きな潮流:「教会型」と「セクト型」: 宗教学者トレルチは、プロテスタンティズムを二つの類型に分けました。 教会型(保守主義): ルター派やカルヴァン派(一部)のように、国家や領邦君主と結びつき、その保護下で体制の一部となる傾向。ドイツでは「領主の宗教がその地の宗教」原則(アウクスブルクの和議)が確立し、国家教会的な性格を強め、社会の保守層を形成。ナチズムへの曖昧な態度という負の側面も持ちました。 セクト型(リベラリズム): 再洗礼派のように、国家権力から自立し、信者の自由な意思と契約に基づいて形成される共同体。この流れは、特に政教分離を国是とするアメリカで発展しました。 アメリカにおける展開(リベラリズム): アメリカ建国の理念には、国家から自由な教会というプロテスタンティズム(特にバプテストなどセクト型の流れを汲む教派)の精神が色濃く反映されています(憲法修正第1条)。個人の信仰と自発的な結びつきが重視され、自由競争原理が宗教市場にも及びました。ピューリタンの「契約神学」もアメリカ社会の形成に影響を与えました。現代では、ペンテコステ運動など新しい潮流も大きな力を持っています。ロバート・ベラーは、キリスト教とは異なる「アメリカ市民宗教(知られざる国教)」の存在も指摘しています。 現代への影響: プロテスタンティズムは、信仰のあり方だけでなく、政治(民主主義、政教分離)、経済(資本主義倫理)、社会(個人主義、自己責任)、文化(識字率向上、国民意識)など、近代以降の世界に広範かつ深甚な影響を与え続けています。その影響は、保守主義とリベラリズムという現代政治の二大潮流にも色濃く見られます。 本書は、プロテスタンティズムという巨大な潮流を、その歴史的・地域的な多様性を踏まえつつ、現代世界を理解するための重要な鍵として提示しています。 印象的なフレーズリスト(28選)

Posted by ブクログ

2024/09/29
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※このレビューにはネタバレを含みます

マックス・ウェーバーの「プロ倫」を読む前に、プロテスタントについて少し詳しく知っておきたいと思い読了。 本書による、プロテスタント登場からの流れの概略は… ・中世ヨーロッパで、教会は「贖宥状」(免罪符と呼ばれるが、本来は罰を代行したことの証書のため贖宥状が正しいらしい)を販売することにより莫大な収益を上げており、このような聖書の教えにもないカトリックの腐敗に疑問を持ったのがルター。 ・プロテスタントは、教皇ではなく聖書が基準となり、ルターは、神がなすことを信頼することこそが信仰と考え、それ故に、救われるためには人間の側の努力ではなく信仰のみが必要と考えた。 ・ただ、教皇の解釈が絶対となるカトリックとは異なり、プロテスタントは、聖書の解釈が異なれば分裂してしまうという問題を孕むことに。 ・そのことにより宗教改革は、ルターやカルヴァンなどの「古」プロテスタントと、改革の改革を進める「新」プロテスタントという2つの異なるプロテスタンティズムを生み出すこととなった。 ・「古」は、一つの政治の支配単位には一つの宗教、というもので、一つの教区に一つの教会といういわば公立学校のような位置付けにあり、教区における宗教的市場を独占していた。 ・一方、「新」は信じる自由を求めた人々の自由な宗教的結社として登場したものであり、こちらはいわば私立学校のようなもので、自分たちで信者を獲得する必要があったことから、今日の企業家精神に似たものが芽生えてきた。 ・このように、「新」は市場における自由な競争、という仕組みを社会に持ち込むことになった。 というもののようです。 これが資本主義の発展にもリンクしていくこととなるのですが、そのあたりの経緯が本当に分かりやすく書かれており、一気に読むことが出来ました。 ただ、この著者は、後に研究上の不正行為により大学を懲戒解雇され関係書籍も絶版とされたようで、本書の内容については特に捏造などはなかったようですが、ちょっとミソがついたのが残念。 とはいえ、中世以降のキリスト教及び社会に与えた影響を理解するための非常に良いテキストであることは間違いないと思います。

Posted by ブクログ

2021/04/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 第1章から第6章まではプロテスタンティズムの歴史について、わかりやすく書いてあります。そのため、世界史やキリスト教についての知識がなくても理解できます。  第7章のリベラリズムとしてのプロテスタンティズムが興味深かった。以下、個人的に関心を持った文章を抜粋(「」内は編集しました)。   ・ピューリタンたちがアメリカに移住し、最終的には国   営の教会によって独占されていた宗教市場を自由化、  あるいは民営化しようとした。 ・ヨーロッパの宗教市場は独占であるのに対し、アメリ  カは競争市場である。新プロテスタンティズムは競争  を制し、市場で勝利を収めた。巨大化していく姿はさ  ながら、市場を独占する「GAFA(Google、Amazon、  Facebook、Apple)など」の大企業のようだ。   ・…宗教における自由競争がアメリカ社会の深層構造を規  定しているのだろう。 ・この世での成功がアメリカでは宗教的な救済の証明と  なった。…アメリカでは与えられた人生で成功した者こ  そが神の祝福を受けた者だと諭された。 ・…市場で成功し、勝利した者こそが正義であり、真理で  あり、正統になる。これがアメリカ的なイデオロギー  に宗教が与えた影響であろう。  現在ある政治や社会、経済の姿に宗教も大きな影響を与えている。宗教や慣習といった観点からも社会を考察できるように、関連図書を読みたい。   

Posted by ブクログ