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オーリエラントの魔道師たち 創元推理文庫
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オーリエラントの魔道師たち 創元推理文庫

乾石智子(著者)

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オーリエラントの魔道師たち 創元推理文庫

836

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 東京創元社
発売年月日 2016/06/24
JAN 9784488525057

オーリエラントの魔道師たち

¥836

商品レビュー

4.3

16件のお客様レビュー

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2024/12/30

シリーズの中における短編を集めた作品集なのもあり、大きな物語が展開されるわけではない。描かれるのは魔道に通じる者たちの暮らしぶりや生き方についてであり、「魔法」は登場するものの何でも簡単に解決できる万能の力なんてことは無く、その力に振り回されぬよう慎重に真面目に向かい合う職業小説...

シリーズの中における短編を集めた作品集なのもあり、大きな物語が展開されるわけではない。描かれるのは魔道に通じる者たちの暮らしぶりや生き方についてであり、「魔法」は登場するものの何でも簡単に解決できる万能の力なんてことは無く、その力に振り回されぬよう慎重に真面目に向かい合う職業小説的な側面が強い。それもあってか魔道師を主役としていても彼らを特別扱いすることは無く、違う職能を持った人たち同士が関わる、くらいの意味合いとなっている。そんな、”市井の人々の一員として魔導師のことを知ってもらう”というフラットな視線が新鮮だった。 「呪(まじな)い」を良心の呵責と繋げている点が特徴的で、誰かに対して害となる魔法は使うことによって自分自身の良心が傷つき、その先の人生に悪影響を与える、といった意味で「人を呪わば穴二つ」的なことを描こうとしている点も面白い。ではどのようなモラルを持って魔法を使うべきなのか、という部分が読みどころになっており、その意味で、作者が意識していたかどうかはわからないけれど、本書はメタ倫理学的な側面を持っている。善と悪について、というよりも、その基準を決めるためにはどのように物事を見つめるべきか、といった道徳を説くことより"一段階高い視座"が感じられた。 読んでいて気持ちのいい話ばかりでは無い(と私は思う)し、気持ちのいい人物ばかりが出てくるわけでもない。しかしそのことは本小説の価値を減じるものでは全くなく、物事が簡単に白黒付くようなものではないことや、自分自身の思考や見方もまた一面的でしかないこと、そしてそれを自覚することで視界を広げて物事を見る可能性について描くことに成功している。 大きな物語は語られないけれど、合間合間でこのファンタジー世界における歴史や国の成り立ちが見えてくるのも良かった。たぶんこの辺の話は他作品で語られているのだろうけど、英雄以外の人物に焦点をあてた本作の良さを引き立てる役割となっていたから。 好きな話は【陶工魔道師】。上記した感想の要素がひとまとまりとして納められている。【闇を抱く】は秘密結社として結束する魔女たちの話。長編向きの題材がごろごろしてた。

Posted by ブクログ

2024/11/28

四編の短編集で四つの異なる魔法を操る者たちの話ですが、いずれの話にも共通しているのは日々の手仕事を惜しまずに己の技能に研鑽を重ね行動を省みて、力を得た者が成すべき事を見据えている、覚悟と肝の座りかたが実に好ましく、清々しい人たちの話でした 『陶工魔道師』は陶芸の工房を構えながら...

四編の短編集で四つの異なる魔法を操る者たちの話ですが、いずれの話にも共通しているのは日々の手仕事を惜しまずに己の技能に研鑽を重ね行動を省みて、力を得た者が成すべき事を見据えている、覚悟と肝の座りかたが実に好ましく、清々しい人たちの話でした 『陶工魔道師』は陶芸の工房を構えながら、その焼き物に呪力を込めることのできる、陶器の魔法使いの話 粘土を掘り出し、呪言を込めて練り上げて、釉薬を調合して焼き上げるその過程の描写がすごく面白い 『闇を抱く』は生まれた家でも嫁ぎ先でも、理不尽な境遇に耐えることを強いられた傷付いた女性たちが、お呪(まじな)いと魔法をもって互いを救っている しかし魔法は当世においては禁忌であり、社会からそれを秘匿する組織も作り上げている 『黒蓮花』はかつて故郷を滅ぼされた魔法使いが、その仇を探し出し、復讐を成し遂げる話 途中から語り手が変わり、誰が復讐の魔道師なのかとざわつく展開になる上に、前二篇とも違う魔道師対魔道師の戦いの描写も面白く、昏い復讐譚だけど読後感は晴れやかな話 『魔道写本師』は元々魔道に縁の無い写本師の出来の悪い見習いだった少年が魔道書の写本を手がけたことにより、己の技術を磨くこと、たゆまぬ研鑽を積むことの面白さに目覚め、文字を綴る事で発する魔法の術をも身につけた話 他三編にも共通する、“その力を使って何を成すべきなのか”という、力を得た者の使命と責任に踏み込んだ話でもあり、そして日本の怪異譚にも通じる風味もある、力強く楽しい話です なお、ある一編で、猫に暴力を振るう人物が登場するのですが「にゃんこを蹴るなんて人間じゃねえ」と忌々しそうに罵る文言が4、5回繰り返し出てくるので、うっかりほっこりしてしまった ちなみにその蹴られたにゃんこは、本物のにゃんこではなく魔法使いが変身したものなので、実際には生にゃんこは蹴られてません でも、いくらフィクションでも、本物でなくても、猫が蹴られる場面を書くのは、作者さんはすごくしんどく感じていたんだろうな、絶対猫好きだな、とニヤニヤしちゃった 乾石智子さんの作品は初読みだったのですが、これはすごい、素晴らしく面白い ご紹介が無ければ読む機会が持てなかった作家さんでした 

Posted by ブクログ

2022/03/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

オーリエランドの魔道師シリーズの第四作。 いろいろな魔法と魔道師が描かれていて良かった。 ひとりひとりが1冊の本になるほど、 綿密な人物背景があって、 それを次々と読めるとはなんて贅沢。 ホールケーキと同じぐらい、 いや小さい分だけそれ以上に手間がかかっている美味しいプチフールを ひと口で食べてしまうようなもの。 しかも細長いお皿に並べて、次々ぱくぱくと。 人生を自分の手に取り戻した三人の魔女の話も面白かったし、 復讐のために漂うように生きる魔道師の生き方も、 本を与えて性根を直すチャンスを与える夜の写本師の話も面白かった。

Posted by ブクログ