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憲法の無意識 岩波新書
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憲法の無意識 岩波新書

柄谷行人【著】

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憲法の無意識 岩波新書

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 岩波書店
発売年月日 2016/04/20
JAN 9784004316008

憲法の無意識

¥990

商品レビュー

3.7

9件のお客様レビュー

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2024/07/05

憲法九条は無意識の超自我である。アメリカに押し付けられたものでもなく、憲法九条は、天皇体制の護持を謳う一条とセットで検討されたが、マッカーサーにとっても重要なのは第一条であり、朝鮮戦争勃発時に九条の改定を迫ったほどだ。日本人にとっては、天皇自体が集合的無意識の象徴だとも言える。面...

憲法九条は無意識の超自我である。アメリカに押し付けられたものでもなく、憲法九条は、天皇体制の護持を謳う一条とセットで検討されたが、マッカーサーにとっても重要なのは第一条であり、朝鮮戦争勃発時に九条の改定を迫ったほどだ。日本人にとっては、天皇自体が集合的無意識の象徴だとも言える。面白い切り口だ。 ー 総選挙は争点が曖昧で投票率も低く、投票者に偏りもあるから集合的無意識としての世論を表すものにはなり得ない。国民投票ならば、何らかの操作や策動が可能であっても争点がハッキリしているから、無意識が前面に出る。 九条がリアルな問題になったのは1989年の湾岸戦争。イラクによるクウェートの侵略に対する中東への自衛隊派兵。この時は平和維持活動に徹したために国際社会に評価されず。2003年イラク戦争で再度派遣したが、正当性なく、帰国後に自衛隊が多数自殺。大衆にとっては、なんとなくの戦争恐怖から第九条に手をつけたくない心理が働くが、テクニカルな問題は、解釈論ですり抜けられ実質、建前ほどの意味はないばかりか揺らぎは矛盾と葛藤を齎す。 ー 徳川時代に天皇の存在は広く知られていなかった。つまり、明治維新までは、そもそも象徴天皇のようなもの。また、明治憲法にしたって自主的に作られたものだが、不平等条約撤廃を求めて外国を強く意識したつくり。憲法解釈により、天皇主権説も天皇機関説も成り立つ。 ー 1917年に美濃部達吉の天皇機関説は追放されたが、憲法が改定されたのではなく、解釈により天皇の神格化が正当化された。 憲法の条文に対する解釈のコモンセンスは時代の文脈で変化する。そこには大衆の無意識を宿した時の政権の運用が支持率の反映において、「多少は」見て取れる。つまり、世論や代議制が無意識の照射となるなら、憲法解釈にもその思いはある程度通用していくのだろうか。

Posted by ブクログ

2023/10/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 『柄谷行人「力と交換様式」を読む』の読了後、交換様式Dは自らの意志では達成不可能なものである、しかし何もしなくてもよいわけではないという主張に、説得的な説明が不足していると感じていた。本書を読むことで、その行間を一定程度埋めることができた。  議論の出発は、人間の攻撃性を所与のものとするところにある。その攻撃性を自己に向けたとき「超自我=文化を形成する」(16頁)。この「自然の狡知」は無意識により生まれるのだから、交換様式Dは「自らの意志では達成不可能」としたのではないか。  また、歴史が示すように、ヘゲモニーは闘争によってのみ成立してきた。右の通り、人間の攻撃性はもはや否定することができないほどの根源的なものであるからこそ、少しでも戦争による犠牲を生じないよう努力することが求められるのである。  そのほかにも、日本国憲法の先行形態を徳川時代に求めたこと、カントの『永遠平和のために』は実践的な構想であったがゆえに「現実的でない」との批判を呼んだこと、120年の周期で歴史が繰り返していることなど、重要な指摘は多くあった。  しかしながら、柄谷の依拠する「自然の狡知」などフロイトの精神分析は、いったん消化したものの、自分の言葉で説明しようとすると補完すべきところの多いスピリチュアルなものとなってしまう。これは私の無学によるところであるので、より精緻な理解とするために著作を読みたい。

Posted by ブクログ

2023/04/30

柄谷さんの本は毎回期待しながら読むのですが、今回も期待を裏切らず面白く拝読しました。柄谷さんの本は、書いてあること自体正しいか正しくないか、という視点で読むのではなく、素直に「そう来たか」というところを面白がって読む方が私は好きです(正確に言えば私のレベルでは正しいかどうかなどわ...

柄谷さんの本は毎回期待しながら読むのですが、今回も期待を裏切らず面白く拝読しました。柄谷さんの本は、書いてあること自体正しいか正しくないか、という視点で読むのではなく、素直に「そう来たか」というところを面白がって読む方が私は好きです(正確に言えば私のレベルでは正しいかどうかなどわからない)。本書は複数の講演録をもとにつくられているので、章の間のつなぎというか、論理展開が飛躍している感じのある箇所もあったのですが、全体的には面白く拝読しました。憲法9条はなにか仏教で言うところのお布施、見返りを求めない純粋贈与であって、純粋贈与に対してつばを吐きかけるような国があれば世界中から非難を浴びる、よってこれこそが実は抑止力であるという視点です。ある国で市民革命が起きれば他国の干渉(領土侵攻)が起こりますが、日本の9条に関しては他国の干渉(領土侵攻)が起こらない中で導入された、これはなにか色々な偶然が重なった奇跡という感じもしました。私くらいのレベルでは、もはやこのレベルの本ですと正しい、正しくないというのが判断できる水準を遙かに超えているので、純粋に楽しんで読みました。

Posted by ブクログ

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