商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | ポプラ社 |
発売年月日 | 2016/04/05 |
JAN | 9784591149881 |
- 書籍
- 文庫
アップルソング
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商品レビュー
4.8
5件のお客様レビュー
「私のてのひらの中に、一冊の雑誌がある」 この書き出しで本書ははじまる。1976年に発行されたこの雑誌「Searchlight Monthly」には、当時頭角を現しつつあった日本人の報道写真家「鳥飼茉莉江」についての記事が載っていた。「私」はこの写真家の生い立ちから亡くなるま...
「私のてのひらの中に、一冊の雑誌がある」 この書き出しで本書ははじまる。1976年に発行されたこの雑誌「Searchlight Monthly」には、当時頭角を現しつつあった日本人の報道写真家「鳥飼茉莉江」についての記事が載っていた。「私」はこの写真家の生い立ちから亡くなるまでを調べている。だが、「私」については「美和子」という名前以外、どんな人物で、なぜこの報道写真家にそれほど興味があるのかは、物語の終盤まで明かされない。読者は「私」とともに、報道写真家鳥飼茉莉江の数奇な人生をたどっていく。 1945年、岡山で激しい空襲がある。戦時動員の訓練中だった14才の鳥飼希久男は急いで家へ戻るが、家屋は跡形もなく、家族の生存は絶望的と知らされる。呆然とする希久男にかすかな赤ん坊の声が聞こえてくる。希久男はその声で、家に赤ん坊がいたことを思い出す。父の姉が神経を病んでいたため、その姉の乳飲み子を預かっていたのだ。それがその子の声だと確信した希久男は、慎重に瓦礫をどけながら、火傷を負った赤ん坊を救い出す。それが茉莉江だった。 希久男とともに親戚に預けられた茉莉江は、そこの女の子たちと姉妹のように暮らすが、やがて突然迎えに来た母親に連れられ、アメリカへ渡ることになる。船の中で出会うフルブライトの学生たち、電車の中で茉莉江を「日本鬼子」と罵倒する中国人等、当時の世界の様子を様々取り入れながら物語は進行し、ある写真に魅せられた茉莉江は写真家を志すようになる。 やがて彼女は、新宿駅西口の反戦フォーク集会、浅間山荘事件。三菱重工本社ビル前の爆弾事件、そしてニューヨーク同時多発テロ等を報道写真家として追い、人間について、世界について考えていく。 「私ののてのひらの中に、一枚の写真がある」 「私のてのひらの中に、声がある」 「私のてのひらの中に、一個のカセットテープがある」 茉莉江の人生を追う物語は、カセットテープから流れる彼女の講演で幕を閉じていくのだが、とにかく素晴らしい小説である。私は人より余計に本を読む方だと思うが、この小説は私にとっては別格だった。著者に敬意を表し、この本と出会えたことに感謝したい。是非多くの人に読んでほしい本である。
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忘れられない一冊になりました。 アメリカにいる離婚した元夫から送られてきた、自分が生まれた1976年4月発行の表紙のない雑誌『SearchlightMonthly』を手にした一人目の語り部、美和子のお話しからはじまる小説 日本の戦後、世界で終わることのない沢山の争い(戦争、紛争) 物語終盤のチェチェン紛争の取材の中で、紛争で家族を失い食料もない中、老婆が茉莉江にりんごを差し出す部分は、涙が溢れました。 そして、最後の2小節(* *) 1996年の夏、51歳の茉莉江がボストン大学で講演したお話し すべての人と戦争との関わり、人の本質 戦争について、すごく考えさせられました。 二人目の語り部は、1945年岡山で戦時動員されていた美和子の父希久男 岡山無警報空襲で家族全員を亡くした中、火傷を負いながら瓦礫の下で生きていた赤ん坊(いとこ姪の茉莉江)をみつけて助け出し、叔母の三人の娘がいる親戚の家に身を寄せ、希久男を一番上に三人の娘、一番下に茉莉江と兄妹として貧しいながらも絆を深める暮らしと戦後の混乱期が語られます。 そして茉莉江 10歳の時から実母に引き取られアメリカへ渡り、16歳、壮絶な母の死、そこからたった独りでNYへ移り住み、激動の時代に翻弄されながら自らの力で人生を切り開き報道写真家となる茉莉江の人生と その茉莉江の軌跡を辿る旅をする美和子のお話しが交互に語られる。 美和子の人生と茉莉江の人生が一瞬交錯する それが解った瞬間が凄いっ!!! https://matome.naver.jp/m/odai/2140794190016356501
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茉莉江の駆け抜けた生涯の密度の濃さにとても引き込まれて、重い読書でしたが心に刺さりました。人は醜い。争うこと、破壊することをやめられない。でも、善や美を諦められません。終戦から現代へと続く日本や世界の情勢、中でもテロや戦争の描写に、本当に茉莉江がそこにいて伝えてくれたかのような気...
茉莉江の駆け抜けた生涯の密度の濃さにとても引き込まれて、重い読書でしたが心に刺さりました。人は醜い。争うこと、破壊することをやめられない。でも、善や美を諦められません。終戦から現代へと続く日本や世界の情勢、中でもテロや戦争の描写に、本当に茉莉江がそこにいて伝えてくれたかのような気持ちになりました。美化してはいけない。一般化してもいけない。自分も無関係ではいられません。この世界で生きていく、しっかり考えていかなくては、という思いになりましました。面白かったです。何度もこみ上げるものがありました。作中にあった、「二十歳の原点」、買いました。この本は図書館から借りたのですが、購入しようかな。
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