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兵士はどうやってグラモフォンを修理するか エクス・リブリス
2,970円
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商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 白水社 |
発売年月日 | 2011/02/14 |
JAN | 9784560090145 |
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兵士はどうやってグラモフォンを修理するか
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商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
[ 内容 ] ユーゴ紛争の戦禍を生き抜く少年の想像力、「物語る魔法使い」が紡ぐ故郷と家族。 1992年に勃発したボスニア紛争の前後、少年アレクサンダルの目を通して万華鏡のように語られる、小さな町ヴィシェグラードとそこに暮らす人々の運命。 実際に戦火を逃れて祖国を脱出した経験を持ち、ドイツ語で創作するボスニア出身の新星による傑作長編。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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少年の純真さが、前面に出てくるように見えるものの、 それは純真を表すのではなくて、語り手として目の前にいるのが 少年であった、というだけである。 弱さゆえの狡猾さ、というのは少年アレクサンダルには酷かもしれないが。 物語は別の可能性を指し示す為ではなく、 価値の比重をずらすため...
少年の純真さが、前面に出てくるように見えるものの、 それは純真を表すのではなくて、語り手として目の前にいるのが 少年であった、というだけである。 弱さゆえの狡猾さ、というのは少年アレクサンダルには酷かもしれないが。 物語は別の可能性を指し示す為ではなく、 価値の比重をずらすために紡ぎだされる。 なにもかもが大丈夫だった、 確かに大丈夫だった。 裏表紙のあらすじに、「物語と現実との落差を知る」などという 一文があるが、そんなに彼は馬鹿ではない。 最初から分かっていたから、物語への衝動があるんだ。 絶望的な不在ののち、 ドリーナ川へとすべてが流れ込む。 その光景は希望のように見えるかもしれないが、 これもまた、いまだ手にされていない希望だ。 とはいえ立ち上がる為の希望とはこのようなものであったかもしれない。
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『ぼくはリストを作ってきた。ぼくは六階のラドヴァン・ブンダの部屋に座っている。彼の妻が、ぼくのヴィシェグラード滞在二日目で最初のコーヒーを出してくれる。いまは早朝だ。ラドヴァンとはあらかじめ約束を取りつけなくてはならなかった。朝七時というのが、彼の唯一空いている時間だった』-『ぼ...
『ぼくはリストを作ってきた。ぼくは六階のラドヴァン・ブンダの部屋に座っている。彼の妻が、ぼくのヴィシェグラード滞在二日目で最初のコーヒーを出してくれる。いまは早朝だ。ラドヴァンとはあらかじめ約束を取りつけなくてはならなかった。朝七時というのが、彼の唯一空いている時間だった』-『ぼくはリストを作ってきた』 大きな出来事を大きな物語にして語ることも大切なことだとは思うけれど、物語と呼ぶにはまとまり切れていないような小さな文章群がより大きな出来事を語ってしまうこともあるのだな、と思う。 さらりと読み飛ばしてしまえるような文章の中に、たくさんの秘められた思いがある。どこかでその思いが、もうすこしはっきりとした形で浮かび上がってくるのか、と思いながら読み進めても、一つ一つの文章はどこまでいっても淡白な、事実の羅列といった表の顔を崩すことはない。 もっとも、表現は直接的で、はっきりとしていると言えばはっきりしている。だが人は直接に表現していることの裏側で、意識的にせよ無意識にせよ、様々な思いが蠢いているものだと思う。そのことを常に意識させられる文章なのだ。一つ一つの文章の表現している事実の向こう側にどんな背景があって、その事実は何を、本当は、意味しているのだろうか、そういうことを考えさせられてしまうのだ。そもそも本当のことなんてあるのだろうか。 事実関係は混乱したまま描かれる。衝突があるが、丁寧な衝突の描写も背景の整理された記述もない。徐々に「ぼく」の人種的、文化的背景は明らかとはなり、いわゆる世界史的な事実の中にぼくの置かれた立場は落ちていく。しかし、本当はそんな風に典型的な歴史解釈の中に落とし込んでしまってはならないのだ、という声が、その混乱の中から聞こえてくる。この混乱は当事者としてとても正直な感覚なのだろうということが、読み進むほどに強くなってくる。 これほどまでにはっきりとした物語の輪郭のないままに読ませながら、読み終わった後にはすっと一つの物語が立ち現れてくる。不思議な読後感に包まれる。よかったとか、つまらなかったとか、そんな次元ではない何かにぐっと胸ぐらを掴まれたような、そんな気分になる。どうしてよいのか解らない気分のまま、放り出されたような自分が居ることを発見する。
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