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庭、灰/見えない都市 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集Ⅱ-06
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庭、灰/見えない都市 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集Ⅱ-06

ダニロキシュ(著者), イタロカルヴィーノ(著者), 山崎佳代子(訳者), 米川良夫(訳者)

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庭、灰/見えない都市 池澤夏樹=個人編集 世界文学全集Ⅱ-06

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 河出書房新社
発売年月日 2009/09/30
JAN 9784309709581

庭、灰/見えない都市

¥3,080

商品レビュー

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2026/01/29

○庭、灰 少年の視点から、第二次世界大戦前後の旧ユーゴスラビアを描く自伝的作品。 「庭、灰」というタイトルからも連想されるように物語全体を暗いイメージが纏っており、あらゆる物・価値観が戦争によって崩壊し、灰のような取るに足らない存在になる様子が描かれる。 その中でメインに語られる...

○庭、灰 少年の視点から、第二次世界大戦前後の旧ユーゴスラビアを描く自伝的作品。 「庭、灰」というタイトルからも連想されるように物語全体を暗いイメージが纏っており、あらゆる物・価値観が戦争によって崩壊し、灰のような取るに足らない存在になる様子が描かれる。 その中でメインに語られるのが、「父」という存在。実際に著者の父はアウシュビッツで死亡しており、本作では、断片的な回想を通して消えた「父」について再考する試みをしている。その他にも、少年時代の夢や初恋、飼っていた犬、家族を支える母、親戚、家にあった家具など、様々な要素が懐古的に語られる。 下記は、「灰」というフレーズを使いながら、それらが文字通り灰に還る(喪われる)様子を表現する象徴的な箇所である。 (p.47-48) かつては鏡のように光っていたはずの線路の上面は、かさぶたのような灰色がかった朱色の膜に覆われていた。錆は鉄を何か孔だらけの腐った組織、髄を蝕まれた骨に変え、脇の表面をすべて剝ぎとって煉瓦色の灰に砕き、その灰は地面にしみこんで、雑草の心臓に吸収される。枕木は縦に割れ、その酸のような赤いペスト菌に蝕まれていた。 この引き込み線は、言うならば、僕たちの最後の幻想を打ち砕いていたのだ。 (p.146) ディンゴ(犬)は、僕の父に敬意を抱き、父のことが好きで、父の崇高な汎神論的な態度をけっして忘れなかった。父の出発を前に一晩中、ディンゴがぞっとするほど痛々しく遠吠えしたという事実がそれを物語っている。失ったものがどんなに大きいかを理解し、家の中庭に灰のように降り積もる静けさを予感していたのだ……。 (p.172) そのころの僕たちの家は、湿気と緑色や灰色の徴だらけだったから、その血だけが、その崩壊の色だけが、僕たちの家で唯一の色だった。すべての不幸は台所の鉄製のレンジに火があかあかと燃えあがったためしがなかったという事実にあり、だから僕たちには炎らしい炎が、輝きが足りなかった。 おそらく翻訳が物凄く難しい作品であることは容易に想像できるものの、全体的に読みにくかった。特に途中の少年視点での宗教解釈が語られるシーンなんかは、知識の素地がないとかなり難解だと感じた。 ものすごく説明が難しい作品。 ○見えない都市 世界中の様々な都市について、マルコ・ポーロがフビライ・ハンへ報告する様子を描く幻想小説。 登場する都市はいずれも空想上の都市と思われ、現実と幻想の境界線を曖昧にしながら、「都市」という存在の本質や人間の営みについて問いかける作品。 登場する都市は55個にも登り、それぞれが独立した特徴を持っている。現実に存在しそうなものから、半ばSFのような都市まで存在している。(マルコ・ポーロの故郷ヴェネツィアの様々な側面を描いていることが作中で示唆) 取り扱われるテーマもその分膨大となり、二人の会話だけを描いているはずなのに、物凄くスケールの大きな作品となっている。 中でも自分が気に入ったのは、下記の都市についての描写。 ○p.190都市と記憶4 人々の記憶から都市が忘れ去られていく虚しさが描かれる。それを「人の記憶」ではなく、「地球の記憶」として語らせる文学的センス。 ○p.236精緻な都市4 銀行や仕事場を移りゆくものとして描いており、それに対比する形で遊園地やサーカス等の市井に根付いた文化の普遍性を訴えている。 ○p.263都市と眼差4 美しい都市に住むことが日常になると、その都市の魅力が次第に色褪せて見える様を描く。確かに観光地の街に住んでいる人ほど、自分の住む街の魅力に気づいていない印象がある。 ○p.284都市と空2 庶民の生活から出る「馬鈴薯の皮、破れ傘、卵の殻」等を幸せの象徴とし、最終的には最も自由にして幸福な行為を排泄と定義する。日常の尊さを訴えている作品で、個人的には今作で最も好きなチャプター。 なお、p.321隠れた都市2も同様のメッセージを持っている。 読後感は心地よく、美しい散文詩を読んだ後のような感じ。ふとした時に読み返したくなる、じんわりと心に響くような作品。

Posted by ブクログ

2022/09/29

220929*読了 「庭、灰」は今まで読んできた世界文学全集の中で、一番苦戦したかもしれない。 想像と現実が混ざり合っていて、ユダヤ人の虐殺が悲惨なはずなのに、どこか夢を見ているようで。 読んでいて感じたのは、曇ったガラスの向こうを見ているような、靄がかかったような光景。暗すぎず...

220929*読了 「庭、灰」は今まで読んできた世界文学全集の中で、一番苦戦したかもしれない。 想像と現実が混ざり合っていて、ユダヤ人の虐殺が悲惨なはずなのに、どこか夢を見ているようで。 読んでいて感じたのは、曇ったガラスの向こうを見ているような、靄がかかったような光景。暗すぎず、明るくもなく。 少年にとっての父親が、いろんな姿で立ち現れる。そして、少年自身の成長。 なんとも不思議な小説でした。 「見えない都市」も今までにあまり読んだことのないタイプの小説。 マルコ・ポーロがフビライ汗に、架空の都市をいくつもいくつも語って聞かせる。 その一つひとつはとても短いのだけれど、その中に、死や記憶、都市そのものなど思想が織り交ぜられていて、幻想的でもあり、現実的でもあり。 間に挟まれる、マルコ・ポーロとフビライ汗のやりとりはまた違った印象で、その差もおもしろい。 好きなタイプの小説でした。 でも、2作ともストーリーの作り方が独特なので、すんなりとは頭に入ってこなくて。 これが文学ってやつか…と洗礼を受けたような気持ちです。

Posted by ブクログ

2022/04/03

物語るとはどういうことだろう、と思った。2つの小説は似ても似つかない代物だが、しかし片や父親や自身の甘美な「記憶を語る」。もう片方はあたかも現前するかのように都市の「記憶を語る」。人生も都市も、私たちの頭の中に思い浮かべる思念が形となって結実するものであり、しかも一朝一夕では成ら...

物語るとはどういうことだろう、と思った。2つの小説は似ても似つかない代物だが、しかし片や父親や自身の甘美な「記憶を語る」。もう片方はあたかも現前するかのように都市の「記憶を語る」。人生も都市も、私たちの頭の中に思い浮かべる思念が形となって結実するものであり、しかも一朝一夕では成らないものである。いわば人間の実存が色濃く刻み込まれた構築物/建築物として現れる。だというのであればキシュが繊細に、そしてカルヴィーノが上品に語り尽くす実存とはなんと美しいことか。それを日本語に移し替えた訳者の偉業もまた見過ごせない

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