商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 東京創元社 |
発売年月日 | 1972/09/18 |
JAN | 9784488114015 |
- 書籍
- 文庫
トレント最後の事件
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トレント最後の事件
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商品レビュー
3.5
9件のお客様レビュー
恋愛小説の要素がうま…
恋愛小説の要素がうまく組み込まれた本格ミステリ。ラストには驚愕の展開が待っています。
文庫OFF
アメリカ財界の大立者、巨人マンダースンが別邸で頭を撃たれて即死した。その結果、ウォール街の投機市場は旋風のような経済恐慌にみまわれ、大混乱をきたした。重要な容疑者は美貌の未亡人であった。敏腕な新聞記者ですぐれた画家であるトレントは怪死事件の解決に出馬する……前世紀の推理小説から大...
アメリカ財界の大立者、巨人マンダースンが別邸で頭を撃たれて即死した。その結果、ウォール街の投機市場は旋風のような経済恐慌にみまわれ、大混乱をきたした。重要な容疑者は美貌の未亡人であった。敏腕な新聞記者ですぐれた画家であるトレントは怪死事件の解決に出馬する……前世紀の推理小説から大きく前進した、現代推理小説の先駆。 探偵小説黄金期の傑作に間違いなかった。 なんといっても魅力的な探偵トレントの存在感である。 画家であり探偵。実に地道な捜査をおこなう。それでいて天才的な閃きで解決へと導く。この作品では探偵の恋愛事情に付き合わされるという…(それが本作の肝でもあるのだが…)捜査に真剣で、恋愛にウジウジ。喜怒哀楽の激しい好感の持てる探偵である。 魅力的な登場人物に、この時代の設定は個人的には大好き。富豪、陰のある婦人。執事。秘書。女中。別荘での事件。 1900年代前半のイギリスが好きなんです。 事件の推理は非常に腑に落ちているしよく出来ています。クイーンのアレとトリックが被っていたり、何か既視感のあるトリックありますが、充分に満足する内容です。最後の大円団と思わせておいて、数ページに残された悪魔的な囁きは、絶望と希望をもたせる歴史的な作品へと押し上げています。 事件の構図やサプライズが某大好きな作家のアレと被っている為、警戒してしまい、それの効力が弱まってしまったのが残念…
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ミステリ黄金期と呼ばれる1920年代から30年代にかけてはミステリプロパー以外の他分野の作家も積極的にミステリ作品を発表している。有名なところではフィルポッツの『赤毛のレドメイン家』、ミルンの『赤い館の秘密などなど。そしてこのベントリーもその中の1人。 とはいえ、本作はその黎明期...
ミステリ黄金期と呼ばれる1920年代から30年代にかけてはミステリプロパー以外の他分野の作家も積極的にミステリ作品を発表している。有名なところではフィルポッツの『赤毛のレドメイン家』、ミルンの『赤い館の秘密などなど。そしてこのベントリーもその中の1人。 とはいえ、本作はその黎明期における1913年での発表であることから、厳密に云えば彼の作品は黄金期以前のものとなるが、それゆえに現在でもなおこの作品の歴史的意義が高いものとして評されていると推察される。 物語は自分の屋敷の庭で射殺体となって発見された財界の巨人と称される大物の死の真相と犯人を探偵トレントが探る物。 まず誰もが驚くのがそのタイトル。1作目にして「最後の事件」と冠されている事だ。現在のミステリファンならば「~最後の事件」とついた作品ならば誰もが名探偵の死を連想することだろう。これはネタバレにならないので敢えて述べるが、本作では探偵トレントが死ぬわけではない。この題名の由来は単純に作者ベントリーがこの作品を彼にとって最初で最後のミステリにしようと考えていたからに過ぎない。しかし現代も作品が残されていることからも解るように、望外の好評を以って作品は受け入れられ、結局ベントリーはその後も作品を著わし、結局3編創られた。 本書はミステリの歴史上、画期的な作品として評価されている。それはミステリに恋愛の要素を持ち込んだからだ。それまでの探偵は知的好奇心と探究心が突出した奇人・変人の類いのように描写され、ミステリ作家は読者に印象付けるためにその特異性のみを追求していた。それゆえ、「思考機械」と呼ばれるほどの無機質な人間までが登場することになった。しかしベントリーは探偵に恋をさせ、あまつさえ一度推理を見誤らせさえもする。つまり紙上の作り物めいたキャラクターから感情を持った、読者と変わらぬ1人の人間として描いたところにこの作品の歴史的価値がある。 しかし発表から既に100年近く経った21世紀の今、本書を読むと他の古典ミステリとの差異は見出せないかもしれない。私は大学生当時本書を読んだが、その時は幸いなことに上の事実には気づいた。おまけに古典ミステリにおいて初めて本書で感情を表す文章描写で犯人を絞り込むことが出来たくらいだ。 今あるミステリ、例えば後年クイーンがエラリーを悩める探偵にした萌芽がこの作品にあるとすれば確かに本書の歴史的意義は高いだろう。しかし、だからといってぜひとも読むべき作品であるとは声高には云えない。ミステリ好きが高じて、その源泉を辿る興味を持たれた方は読んでしかるべき作品だということに留めておこう。
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