商品詳細
内容紹介 | |
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販売会社/発売会社 | 早川書房/ |
発売年月日 | 1993/04/15 |
JAN | 9784152035578 |
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アニー・エルノーは2022年のノーベル文学賞受賞者。授賞理由は「個人的な記憶のルーツや疎外感、集団的抑圧を明らかにする勇気と鋭さ」とされている。 エルノーはオートフィクション作家と呼ばれる。オート(自己)フィクション(作り話)とは矛盾しているようであるが、自己を投影させつつ、虚構...
アニー・エルノーは2022年のノーベル文学賞受賞者。授賞理由は「個人的な記憶のルーツや疎外感、集団的抑圧を明らかにする勇気と鋭さ」とされている。 エルノーはオートフィクション作家と呼ばれる。オート(自己)フィクション(作り話)とは矛盾しているようであるが、自己を投影させつつ、虚構を通して自身の経験をより象徴的な形で語る形式と捉えればよかろうか。 若干身構えつつ読み始めたが、驚くほど平易で、奇をてらうところもない。 教員免状を取り、”ブルジョア階級”に属すようになった「私」。小さな町でカフェ兼食料品店を営む両親。その間に一本の線を引いてゆくような作品である。 「私」が試験を終えてまもなく、父は亡くなる。葬式を終え、「私」は父を主人公にした小説を書こうとするが、劇的なこともないその人生は小説にはそぐわない。それで「私」は、父の人生を淡々と綴ることにする。 そっけないほど技巧を伴わず、近況を告げるかのように。 内容もさることながら、父の人生をそのような距離感で描くということそのものが、「創作的」だったと言えるのかもしれない。 父の父は農夫で文盲だった。父は農夫や工員を経て、自身の店を持つに至る。 取捨選択も哀歓もあり、ようやく手に入れた店は父にも母にも大切なもので、母は父の葬儀の日以外は店を開け続けた。 その父と母との間に生まれた「私」は、成績優秀で、自身の力で人生を切り開いていくことになる。両親が勝ち得た店につなぎとめられることもなく、知識階級へと上がっていくのだ。 両親はそれを喜びつつも、自分たちがいる場所を、娘は捨てて去ったのだということも知っている。 そして「私」は、今や、両親を見下していた人々が属している階級になったことを、ある種の痛みを伴って自覚している。とはいえ、両親がいた場所に戻りはしないし、また戻ることもできないのだ。 扉には、ジャン・ジュネの 「あえて説明してみようか。書くのは、裏切ってしまったときの最後の手段なのさ」 というひとことが掲げられている。 個人的な物語の体裁でありながら、多くの読者を得たということが、本作の普遍性を示していると言えるだろう。 時間をおいて読むとまた別の感慨が生じそうな作品である。
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アニー・エルノーの本は、2冊目となるが、彼女の書く文章がやはりどこか好きである。 この一冊は、彼女の父が亡くなった出来事から始まり、彼が生きていた時代、つまり作者である彼女の幼い頃を小説を通して"書く"ことで、思い返す、そんな話である。 私が1番面白いと感...
アニー・エルノーの本は、2冊目となるが、彼女の書く文章がやはりどこか好きである。 この一冊は、彼女の父が亡くなった出来事から始まり、彼が生きていた時代、つまり作者である彼女の幼い頃を小説を通して"書く"ことで、思い返す、そんな話である。 私が1番面白いと感じた点は、過去の回想シーンと、彼女の書くという行為によって思い出される記憶と、時間が進むにつれて、これらが交錯していく点である。 また、物語全体を通して、階級の違いが描かれ、とても納得できる部分が多く、客観的に読むことができたように感じる。
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フランスの階層をまたがった親子の話。まず、フランスが階層社会だということに驚いた。しかし、日本とは違い、文化や教養面で階層の差がつく。親のいる下の階層から勉学によって上の階層に上がった娘は、親(主に父親、下の階層の人々)との間にある時から溝を感じつつも、突き放すでもなく取り入るで...
フランスの階層をまたがった親子の話。まず、フランスが階層社会だということに驚いた。しかし、日本とは違い、文化や教養面で階層の差がつく。親のいる下の階層から勉学によって上の階層に上がった娘は、親(主に父親、下の階層の人々)との間にある時から溝を感じつつも、突き放すでもなく取り入るでもなく客観的に見ている。 自分も、子供の頃は親や先生が絶対的存在だったが、自分が大人になってみると、もっと広い視野を持ち、親世代、老人世代の考え方や行動に疑問を感じることが増えてくる。そういうことと似た側面がある。
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