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時のかたみに キリスト教と文学・師・信仰
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時のかたみに キリスト教と文学・師・信仰

釘宮明美(著者)

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 春風社
発売年月日 2025/07/30
JAN 9784868160014

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2025/12/08

 本書の著者のことを知ったのは「神谷美恵子とキリスト教」という紀要論文を通してだったと思う。「だったと思う」というのは大学を卒業して働き始めてから刊行された「クラウス・リーゼンフーバー小著作集」の編者としてお名前を知っていたかもしれないからだ。今となってはどちらが先なのかは思い出...

 本書の著者のことを知ったのは「神谷美恵子とキリスト教」という紀要論文を通してだったと思う。「だったと思う」というのは大学を卒業して働き始めてから刊行された「クラウス・リーゼンフーバー小著作集」の編者としてお名前を知っていたかもしれないからだ。今となってはどちらが先なのかは思い出せないが、若松英輔氏の著作を読みながらずっと気にかかっている神谷美恵子をはじめ、エディット・シュタインやフランクルのことを印象深く掘り下げていく著者の紀要論文の数々に触れて、著者の釘宮氏の仕事に圧倒されていた。  本書は著者が様々な機会に発表された「日付のある」文章を集めたものである。『時のかたみに』と題されているように、唯一無二の出会いがちりばめられた一冊である。読者はもとの文章の読者である学生に対する、祈るような著者の想いを見出すはずである。そして大切にすべき様々な出会いを宝石のように語る著者の姿をも思い浮かべることであろう。開口を飾る詩に続く第一部では、年を跨いで同じ時期に書かれた文章をまとめて読むことになる。そこで私たちは、改めて自分の人生にも様々な時があったことを思い返すのではないだろうか。もともとの言葉の宛先である学生たちだけでなく読者である一人ひとりが、どんな人生の「時」を生きているのかを呼びかけられているのである。  本書に書かれていることの豊富さは評者が改めて語るまでもない。本書に描かれている様々なテクストや師たちとの出会いは改めて私たち読者の身近な出会いへと目を向けさせ、どのようにその出会いを「かたみ」として大切にするべきかを問いかけているかのようである。本書を読み進める読者はひたむきにテクストに分け入る著者の眼差しを感じることであろう。森有正、フランクル、リルケ、カロッサ、ドストエフスキーのテクストとの出会いだけでなく、師として出会った田口義弘氏やリーゼンフーバー氏のことなど、自分にとって大切なものを伝えようとする著者の姿を読者が見過ごすことはなかろう。  多彩な思索の結晶に触れる読者はさまざまな鉱脈がそこに横たわっていることに気が付くはずである。実際に病を抱える多くを語ることのない当事者としての著者の苦しみは、ハマーショルドの葛藤の内にもあらわれており、この箇所を読みながら思わず評者は祈るようにマルクス・アウレリウスの『自省録』を訳す神谷美恵子のことを思い出していた。フランクルは随所で人間に最後に残されるものとして態度価値を取り上げるが、その最後に残されている態度価値の実現は決して自らの様々な可能性への実現が閉ざされた時だけではなく、どんな時でも「関わる」ことの内に実現されうるのだということに本書を読んでいて気が付かされた。人は業績などの一見「目に見える何か」に目を奪われてしまうことがあるかもしれない。しかし傍目には見えない価値を日々実現している人々が身近にいるかもしれないのである。良心の呼びかけに従って生きること、それが人間を人間たらしめているのだと。改めて『識られざる神』がフランクルの主著であることを確認した。  本書の読者は著者が語り足りないことの中に、さらなる思索の鉱脈が横たわってることをまざまざと見出すであろう。それらはリーゼンフーバー氏の言葉でありエディット・シュタインであるだけでなく、著者の読解の内に、私たちが身近に思っていたテクストそのものが新たな読みへと開かれていることをも気づかせてくれる。本書はまさに優れて文学的な書物なのである。語り得ないことそのことが雄弁に出会いの豊かさを物語る一冊の本、それが本書に対して抱く偽らざる実感である。

Posted by ブクログ

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