Cloud on the 空き家

小池昌代(著者)

• 販売会社／発売会社: 講談社
• 発売年月日: 2025/07/24
• JAN: 9784065401439

商品レビュー

2025/10/22

コロナ後の孤立した人間の孤独の話かと読み始めたら、和歌がちりばめられた、さまざまなイメージの宝庫で、詩のような物語のような、でも読んでてふふふと笑うところもあり楽しかった。
主人公は空き家で働くことになるが空き家は河原院なのでわけのわからないものが跋扈し家は滅びてしまう。空き家の主の甥の融さんはだんだん光源氏みたいな軽薄な本性をあらわしてくる。
終章、老いと死の描写がこれでもかと繰り返されて最後にポンと恋の歌が提示されて暗転するところ、読む人によっていかようにも感じかたが変わりそう。帯に恋愛小説と書いてあったけどそうなのかな。。。
和歌は百人一首くらいしか知らない自分も和歌の部分を読み飛ばさず面白く読めました。
作者のあたまに閃いたことを言葉を通じて共有する点では詩を読んでいるような気がしたし、ふふふと笑えるところでは話し言葉として聞こえてきた。言葉をあやつる達人だと思いました。

2025/10/16

最後の身寄りの兄を亡くして、頼るものもない貧しいわか子さん。空き家を管理するという仕事を見つけてネズミや蠅やダニと戦う。そこに雇い主の甥が現れその辺りから現実と夢、妄想の物語が始まる。
和歌の好きなわか子さんの世界が古式ゆかしい和歌と混じり合って千年の時を超えてむすぼほれる物語。
とても面白かった。

2025/08/30

主人公が天涯孤独になるところから物語は始まる。
夢か現か…読みながら浮遊している感覚を味わった。
和歌に源氏物語、平安文学を背景に描かれる物語は、思いの外現実社会と密接に繋がっていた。
夢と現実の境目も、生と死の境目も曖昧で第一章以降はなんだか不思議な感覚。
ファンタジーのように感じたかと思いきや、薄汚れた空き家に荒れた庭が浮かび違和感たるや…
それでもその違和感は決して嫌なものではなく、一気に読まされた。
生と死に思いを馳せながら読了。