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到来する女たち 石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 書肆侃侃房 |
| 発売年月日 | 2025/07/11 |
| JAN | 9784863856783 |
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到来する女たち
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「シスターフッド・イズ・グローバル」的発論からなる評論と言える。石牟礼道子・中村きい子・森崎和江、三者の作品を「思想文学」として捉え、その「交差性」を浮かび上げる。文学のみならず、社会背景や地理、また三者の「聞書き」によって語られる「階層」も含めた交差性が論じられている。 フ...
「シスターフッド・イズ・グローバル」的発論からなる評論と言える。石牟礼道子・中村きい子・森崎和江、三者の作品を「思想文学」として捉え、その「交差性」を浮かび上げる。文学のみならず、社会背景や地理、また三者の「聞書き」によって語られる「階層」も含めた交差性が論じられている。 フェミニズム、ジェンダー論が前提とされているのは「はじめに」で明記されているが(むしろそれ故?)、上記の「シスターフッド〜」的発論から交差性を論ずるというのに危険性を感じていたが、予想通りというか予想以上というか、かなり「緊張感」のある評論となっている。 ジェンダー論が前提となっているという事で、論内における「交差性」とは≒インターセクショナリティと解しても大きな問題は無いと思う。インターセクショナリティとは、属性や理論に必ずしも回収され切らない「属性の不可」を表す語だが、それが「シスターフッド〜」的感覚、つまり無意識にも属性への単一性・同一性を求める指向と組み合わされる事によって、個としての属性の交差が多への従属に反転され接続される恐れは大きい。 また、「交差性」の強調による弊害として、ヘゲモニーの平準化の恐れもある。特に個の属性に関する交差性に留まらず、他者との関係性においても交差性を強調される場合、その危険は増す。その場合における交差性とは「影響関係」とも呼べるが、影響関係おけるヘゲモニーを「交差性」と称する事により、あたかも平準化した交換関係にあるかの様に錯覚する危険はある。 一例として、「聞書き」という行為において、「話す側」と「(聞いて)書く側」に交差性という単語を噛ませる事によって、「聞書き」とは影響の交換関係によって書かれた行為と美化される。しかし、実際にはヘゲモニーの不均衡が存在するのは明らかだ。どうあっても「話す側」は「書く側」の後景に置かれる。石牟礼・中村・森崎の三者がその不均衡に無頓着だったとは思わない。少なくとも同時代的にはその不均衡に敏感な書き手であったであろうとは思う。しかしそれは現代の視座においても免責され得る不均衡なのかは別となる。 森崎の言う「非所有の(非)所有」概念や権力への無志向を下敷きにする事でこれらの問題をクリアしたとしていたのかも知れないが、実際にはどうだろう。個人的には、これらの危険性を意識して乗り越えていたとは思えない。 論の「結」に至る部分については、上記の理由から感得出来ない部分が多かった。 しかし、筋道としての解説・概説は抜群に面白く、紹介されている各作品はもちろん参考文献に至るまで非常に魅力に映る。特に文献から批評性を掬い取る引用は見事で、この一冊を読むだけで「読みたい!」と思える本が何冊も生まれる。 最後に、個人的白眉として三章『連なり超えゆく世界を感受する-石牟礼道子『椿の海の記』』を挙げたい。全体の論調として交差性よりも著者の石牟礼への感応といった趣が強く、テクスト批評としても、また著者の一読者として石牟礼に向き合う態度としても非常に感銘を受ける。 「幾重にもからめとられて生きる人間は、いまこことは異なる別のどこかに、別の世界に逃れゆくことも、苦しみから離れ哀しみから解き放たれることも、おいそれとは叶うまい。その「逃亡を許されなかった魂」の苦しみと哀しみが文学となる。苦しみと哀しみを抱えた時に人は切実に文学を必要とし、そこに文学が生まれる(注釈略)。石牟礼において文学とは、そのような意味のものであるにちがいない。」(p.223) 章の最後半に紡がれている文章。この様な感受が可能な読者の、その文に価値がない訳はないのである。
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ああ、最後まで読み切ったという達成感がある。このところ1,2日で読める、あるいは2,3時間で読めるものが多かっただけに、1週間ほど本書の世界に浸っていられたことによる満足感である。もっとも、通勤途中は三島の「禁色」を並行して読みだしているのだが。さて、普通なら目に留まらない本書を...
ああ、最後まで読み切ったという達成感がある。このところ1,2日で読める、あるいは2,3時間で読めるものが多かっただけに、1週間ほど本書の世界に浸っていられたことによる満足感である。もっとも、通勤途中は三島の「禁色」を並行して読みだしているのだが。さて、普通なら目に留まらない本書を読んでみようと思ったきっかけは、もちろん石牟礼道子の名前があったからなのだが、何度も何度もTwitterに流れて来るカバーの色合いに惹かれたということも大きい。とは言え、昨今、単行本を購入するということはほぼなくなっているので、本書も図書館にリクエストして第一読者として読ませていただいた。全く知らなかった世界に目を開かせていただいた。明治維新から戦後20年、ちょうど僕が生まれる前あたりまでの時代。この辺りがどうもごちゃ混ぜになってしまっているのだが、古き良き時代というわけではない。大変な時代だったはずだ。しかし僕にとっては近代化途上のなんとも魅力的な時代に思えるのだ。戦争ということを抜きにしてだが。そういう時代のことが本書の中で語られている。石牟礼の「椿の梅の記」や「十六夜橋」あたりの情景が目に浮かぶ。決して豊かではない。貧しい生活なのだが、自分たちの手でできる限りのことをしていく、生活の主導権を握っているというのか。そして、ほんの小さなことに幸せを感じる。ちょうど、この1週間、NHKの朝ドラ「ばけばけ」を見ている。朝ドラはほとんど見て来なかったのだが、今回は妻の出身地でもある島根が舞台ということで見てみることにした。そこで描かれる世界がちょうど本書と重なって見える。武士であることを諦め切れずに、近代化の波に乗り切れずに、貧しい生活を余儀なくされている家族。しかし、将来に対する不安がないかのように表情は明るい。何が幸せかは、本人に聞いてみなければ分からない。同じように、女性として生きることはつらいことばかりではないような気がする。女だからとか、男だからとかいうのとは違う。一人一人にとって何が居心地が良いか、何が幸せかということだと思う。僕にとっては、男性ばかりの中にいるよりも、女性ばかりの中にいる方が安心する。何もペチャクチャおしゃべりをするのが好きというわけではない。(源氏物語の勉強会では女性14人と男性は僕1人なのだが、本当にみなさんよくおしゃべりをする。)権力闘争というか出世競争というのか、そういうものに一切関わりたくない。被差別部落の人々についてもそうだ。その人たちは貧しくて常に苦しい生活を強いられてきたのだろう。しかしその中でも幸せと感じることはなかったのだろうか。貧しく辛い生活ばかりで人は生きていくことが可能なのだろうか。その中にも何らかの喜びはなかったのか。性に大らかだった時代がある。「からゆきさん」もずっと不幸なだけではなかったはず。女だとか男だとかではない。貧しいとか豊かであるとかいうのでもない。それぞれの人がどう感じるか、どう感じて生きているのかというのが大切なような気がする。なんだか本書を通していろいろと考えさせられた。途中全くメモを取らずに読んでしまったので、いろいろと感じ入ったことばなどもあったのだが、今は僕の無意識の中に入って思い出せない。いずれまたどこかで出てくるかもしれない。したがって、この感想には引用などは一切ない。いま自分の中に残っていること感じていることを素直に書いてみた。本書で新たに知り得たこと、それはもちろん森﨑和江と中村きい子のこと。二人とも全く何も予備知識がなかった。二人の作品もいつかは手に取ってみたい。それもそうだが、石牟礼道子の「苦海浄土」第二巻、三巻が読めていない。図書館で借りれば読めるのだが、これらは文庫で手元に置きたい。しかし、文庫が見つからない。一旦文庫化されているようだが絶版なのだろうか。品切れ状態なら何とか増刷を期待したい。そして、とうとう中上健次を読み始めなければいけない。もう手を出さないわけにはいかない。これは図書館でもいいだろう。その上で、本書と同じ著者の「中上健次論」も読んでみたい。それから、本書の版元である書肆侃侃房、大変丁寧な仕事をされていると感じた。最近誤植の多い本といくつか出合っていたので。
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出版社(書肆侃侃房)のページ https://www.kankanbou.com/books/jinbun/0678 内容、三人の紹介、目次、著者プロフィール
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