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姉の島 朝日文庫
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商品詳細
| 内容紹介 | |
|---|---|
| 販売会社/発売会社 | 朝日新聞出版 |
| 発売年月日 | 2025/07/07 |
| JAN | 9784022651983 |

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◼️ 村田喜代子「姉の島」 海女は海の中で身体が軽くなり、上がる時に重さを感じる。感じるものが詰まった怪作。泉鏡花文学賞。 村田喜代子さんは寡聞にして存じなかった。芥川賞はじめ各賞を受賞している。水中という異世界、地方の島、時代、そして深い歴史と様々なものを表象していて、小説...
◼️ 村田喜代子「姉の島」 海女は海の中で身体が軽くなり、上がる時に重さを感じる。感じるものが詰まった怪作。泉鏡花文学賞。 村田喜代子さんは寡聞にして存じなかった。芥川賞はじめ各賞を受賞している。水中という異世界、地方の島、時代、そして深い歴史と様々なものを表象していて、小説のおもしろみを存分に味わえる。腹にズゥン、と来る感覚、久しぶり。 長崎県魚見島の海女、雁来(がんく)ミツルは85歳になり倍歴の名称を授かる。いまが170歳で、これからは春秋ごとに歳をとる。まだまだ現役だ。同居の孫の妻で水産大学校を出て海女志望の美歌は出産を控えている。美歌からアリューシャン列島には古代の天皇の名を冠した海山列があることを教えられ、興味を抱く。また、近くの海底には戦後爆沈させられた大型潜水艦があると聞いて心惹かれる。 三世代と、それより前の家族史、海女の実務史、そしてまた新たな世代が生まれ出でようとする時代の変遷。そのベースがミツルのモノローグでとつとつと語られる。 なんといってもミツルが普通に潜る海中の風景とその、まさにリアルの感覚がなんともいえずシュールな異世界感を醸し出している。海女が潜るのは3分。最初は錘を抱いて海中30mほどまで潜り、鮑などを拾う。そして青い黒い水に取り巻かれた底から光へ向かって、重さを感じながら上がる。著者が潜ったわけではないと思うけど、興味が湧く素材をよく取材しているのが分かる。目のつけどころが素晴らしいなと思う。 「あたしだちは夜の鳥みたいに宙空に浮いていた」 面白いのは、倍歴のおばあ海女同士で寄り合いがあり、参加してる4人が、鳰(いかるが)シホイ、鷗井千夏、鴫(しぎ)小夜子とみな苗字に鳥が入っているところ。こういう遊び好きです。 船幽霊とも話すし、不思議な夢も見る。幻想的な向きもあるが、それは特殊な青い世界に直に接している人の特性なんだ、という不思議な説得力がある。船幽霊はチョウアンへの道のりを訊く者あり、軍人らしき者あり・・ 海山とその名前、倍歴の話は本で読んだことがある。記紀に記された古代の天皇、神武天皇は古事記の記載では137歳、景行天皇は日本書紀で143歳。これは年齢を2倍に数えるという風習があったのではないか、という論。それが、こんな島にも残っているとは。 ミツルが作品発表当時、2021年で85歳だとしても先の大戦は9歳で終戦を迎えていて、兄たちは戦死している。安楽にしてもいい年齢ながらまだまだ海に潜る。自分の人生に引っ掛かっているもの、の姿に近づく。海女のまことの姿で、やり方で。 なかなか凄い作品に出会ってしまった気がしている。うーん小説は奥深い
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五島列島のとある島で、長男夫婦と孫息子夫婦と暮らす海女さん。その地域では海女は85歳になると、倍暦といって春と秋の彼岸に1歳ずつ歳をとるようになるそう。つまり、85歳は170歳になるわけで、人間を超越した、仙人のような、神様に近いような存在になるようだ。 一歩間違えば死に直結する...
五島列島のとある島で、長男夫婦と孫息子夫婦と暮らす海女さん。その地域では海女は85歳になると、倍暦といって春と秋の彼岸に1歳ずつ歳をとるようになるそう。つまり、85歳は170歳になるわけで、人間を超越した、仙人のような、神様に近いような存在になるようだ。 一歩間違えば死に直結するというリスクを負って、2~3分も息を止め、素潜りで20~30メートルも暗い海の中へ潜る熟練の海女さんたちの姿は、なんというか、陸で生きる自分とは違う生き物のよう。 最後のクライマックスが圧倒的だった。
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