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サイレントシンガー
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サイレントシンガー

小川洋子(著者)

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サイレントシンガー

定価 ¥1,980

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商品詳細

内容紹介
販売会社/発売会社 文藝春秋
発売年月日 2025/06/20
JAN 9784163919911

サイレントシンガー

¥1,155

商品レビュー

3.9

74件のお客様レビュー

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2025/12/25

「内気な人たちの会」を称する男の人ばかりの共同生活の場、「アカシアの野辺」で育った女の子リリカの話。リリカは歌を歌う。名もない、後世にも残らない、誰もリリカぎ歌ったとは気づかない空気に溶けていく歌を歌う。おばあさんと、介護人と、羊の毛刈り係と、歌の先生と、羊と人形たちと、料金係さ...

「内気な人たちの会」を称する男の人ばかりの共同生活の場、「アカシアの野辺」で育った女の子リリカの話。リリカは歌を歌う。名もない、後世にも残らない、誰もリリカぎ歌ったとは気づかない空気に溶けていく歌を歌う。おばあさんと、介護人と、羊の毛刈り係と、歌の先生と、羊と人形たちと、料金係さんとリリカの、静謐を旨とする生活の物語。

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2025/12/18

◼️ 小川洋子「サイレントシンガー」 彼女は沈黙のために歌う。精巧に築かれたフィールド。恐れ入りました。 小川洋子は「猫を抱いて象と泳ぐ」で日本にポール・オースターみたいな作家がいたのかと驚いた。しかし数作品読み進めるうちに、独自の、他人には理解してもらえない範囲を作り、それ...

◼️ 小川洋子「サイレントシンガー」 彼女は沈黙のために歌う。精巧に築かれたフィールド。恐れ入りました。 小川洋子は「猫を抱いて象と泳ぐ」で日本にポール・オースターみたいな作家がいたのかと驚いた。しかし数作品読み進めるうちに、独自の、他人には理解してもらえない範囲を作り、それをひたすら守る、という手順のようなものにやや腰が引けた感覚もあった。 今回も同じではあるのだが、ここまで発想を広げて組み上げたことにただ感心して、唸った。 「魂を慰めるのは沈黙である」 有名温泉地近くの山の一角。金網や厳重な門、柵で囲まれた施設「アカシアの野辺」そこに住む男たちは沈黙を好み、指を使った言葉で意図を伝え合っていた。宗教団体でもなく、施設内で作ったお菓子や飼育している羊の毛から加工した毛糸を売り、外界との接触を避けていた。その施設で働く祖母とともに乳飲み子の頃から野辺で過ごしていたリリカは役所が毎夕にかける「家路」を歌うことになる。成長してボイスレッスンに通っていたリリカには、先生を通じてさまざまな仕事が持ち込まれる。それは自分の存在を消すような歌の依頼だった。 まずは「アカシアの野辺」、その近くの山地の川や池の近くにリリカの祖母が造った大きな人形を並べた公園のような場所という聖域のようなエリアを設定したこと。公園はいかにも森閑とした、しかし自然が美しいというだけではなく、幾星霜もそのままにあるという空間であり、物語の雰囲気を雄弁に醸し出している。 何よりリリカへの歌の依頼、その種類の多さに感心する。お葬式、アシカショーのアシカが歌うのを模した歌、本番の歌手の録音を前に、イメージを固めるために行う「仮歌」。そんな仕事があるんだと読み手の知的好奇心を刺激する。 また、恋人となる有料道路の料金係の男の趣味、隠されていた世界の有名作家の原稿が見つかるという架空の記事を書くというのも、長く読まれなかった、そしてこれからも存在しない、サイレントな記事であり幻の原稿である。 全ての要素が沈黙につながっている。その発想と現出のさせ方、ストーリーの噛み合わせが見事で、これが著者の、研ぎ澄まされた筆致だと心深く悟る感覚がある。 2つ、野辺から有料道路を越えてトンネルをあくつか抜けたところにある有名温泉街、というのは、著者が兵庫県西宮市在住であることを考えると、有馬温泉ではないかと思える。私もなじみのルートだ。 リリカという名前は、作中に痛み止めの薬から取ったのかもというくだりがある。私も頚椎をひどく痛めた時にお世話になったのですぐに思い当たった。リリカはしばらく経ってから強い痛み止め効果をもたらすのです。浸透するように効くところが少し作中のリリカのキャラに通じるものある、のかも。 リリカの歌は、関係者の間ではそれなりに名前が売れているが、歌い手が誰かと気にされない、認識されないまま。野辺の住人たちも干渉しない、そして大事な人にも聴かせない。物語の進行は予想通り。それが美学というものか。 恐れ入りました。

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2025/12/18

小川洋子さんの世界からただいま戻りました‥‥ どっぷりと世界観に浸りました。 おばあさんと二人暮らしのリリカ。 家の隣の広大な森を買い取り移り住んできたのは“内気な人の会”と称するグループ。宗教的施設でも、営利目的の会社でもなく、ただただ内気な人たちの集まり。やがて門には“アカシ...

小川洋子さんの世界からただいま戻りました‥‥ どっぷりと世界観に浸りました。 おばあさんと二人暮らしのリリカ。 家の隣の広大な森を買い取り移り住んできたのは“内気な人の会”と称するグループ。宗教的施設でも、営利目的の会社でもなく、ただただ内気な人たちの集まり。やがて門には“アカシアの野辺”と書かれた看板が掲げられるようになる。 とにかく、“内気な人の会”とか“アカシアの野辺”とか、本を数ページ読んだだけで、小川洋子さんの世界へスーッと引き込まれて行きます。 “内気な人の会”の雑用係として働くことになったおばあさんと、その孫娘のリリカは唯一“アカシアの野辺”に入ることができる二人。 『魂を慰めるのは沈黙である』をモットーに生活している“内気な人の会”のメンバー。 彼らはどんな人生を経て、ここに辿り着いたのか、そこには全く触れられていませんが、こんな場所があったっていいよな、と思う読者は一定数いるのではないかな。 人の記憶に残るものではないが、邪魔にならない歌声を持っているリリカ。 “内気な人の会”とリリカの歌声が呼応して、静かな静かな物語になっています。 声なき声を持っている者も、ここに存在している。大きな声をあげずとも、存在している。静かに存在している、そんな物語だと受け取りました。

Posted by ブクログ