10人の文豪と銭湯へ 旅先銭湯別冊05

美園まき(著者)

• 販売会社／発売会社: さいろ社
• 発売年月日: 2025/06/26
• JAN: 9784916052827

商品レビュー

2025/08/14

　根っからの銭湯民族のわが家は、映画も銭湯シリーズは外さないようにしている。曰く、近年では、『テルマエ・ロマエ』(2012)、『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)、『メランコリック』(2018)、『サウナのあるところ』（2019）、『湯道』(2023)、『アンダーカレント』(2023)などは、もろ銭湯やサウナが舞台だ。その他、『PERFECT DAYS』（2023）や、『桐島です』(2025)でも効果的に銭湯シーンが使われている。残念ながら『ババンババンパイア』(2025)は食指が動いてないけど(笑)

　そんなことで、銭湯関連図書にも手を伸ばします。
　銭湯をめぐる本では、かつて小杉湯の番台にいた塩谷歩波さんの『銭湯図解』や、ステファニー・コロインの『フランス女子の東京銭湯めぐり』など、都内で風呂巡りをするのに役立つ著作はついつい買って手元においてします。
　本書は、近所の銭湯・松の湯に置いてあったもの。

　文豪と銭湯を結びつけたのは、『宿帳が語る昭和100 温泉で素顔を見せたあの人』（山崎まゆみ著）にテイストは似ている。
　が、読んでいて、
「漱石が通った小学校の近くにある銭湯、柳湯」　ん？　その銭湯には通ってないの？
　太宰治が新婚時代を過ごした山梨は甲府の喜久乃湯温泉は、太宰が来てただろう当時は、現店主の祖父祖母の時代で、祖母に訊いてみても「太宰が来ていたかどうか記憶はない」。　むむむ？？？
　森鴎外の章は都心、文京区の湯がいくつか紹介されており、実際に足を運んだ湯もある。
　文京浴場組合が、森鴎外没後100周年企画に「鴎外の湯」と銘打ってキャンぺーンを打とうとしたが、
「でもね、企画しているうちに、鴎外は風呂嫌いだったと分かっちゃって……　」
　なんじゃ、そりゃ！？

　とまぁ、肩透かしの章が多い。
　司馬遼太郎など実際に利用したという例もなくはないが、むしろ、銭湯をきっかけに（きっかけになっているかも怪しいが）、文豪の生きた時代や、作品背景に触れつつ、本書を手にその界隈を逍遥するような文学散歩的な一冊だった。もちろん、紹介してある銭湯の詳細は書いてはあるが、そこは、けっして文豪ゆかりの湯とは限らないという、なんとも、身体の芯まであったまれない湯加減の一冊だった。

　写真が豊富で、関連書籍の紹介も手厚いので、文豪周辺の情報を楽しみに読めばよさそう。

　上記の文京浴場組合も、結果、
「まぁ、それなら、どんな風呂なら鴎外が来てくれるか考えてみるのもおもしろいなって」と、考えを切り替えている。
　早く頭を切り替えて楽しめばよい一冊。

2025/06/10

銭湯と文豪というと太宰治、森鴎外がパッと思い浮かぶのは多分行ったことがある銭湯だからかも。夏目漱石も柳湯に行ってたりとか、中原中也に樋口一葉にて訪れたことのある銭湯もチラホラでまた行くの楽しみが増えるのが楽しい。この間兵庫に行ったときに水木湯には訪れておけばよかったなと思う。