DeepSeek革命 オープンソースAIが世界を変える

長野陸(著者)

• 販売会社／発売会社: 池田書店
• 発売年月日: 2025/05/15
• JAN: 9784262174921

商品レビュー

2025/06/29

10数年前にワトソン(IBMのAI)をみた時に受けた衝撃が今や日常で利用できるようになった。
ビジネスユースで考えても、夢は広がっている。あと一歩を踏み越えてきた時、きっと何かが動くのだろうとは感じるのだが、その何かがわからない。。
そんなモヤモヤした気持ちのまま本を閉じました。

2025/06/16

この文書は、DeepSeekを中心としたAI革命の現状と未来について包括的に解説した書籍の要約です。中心テーマは、従来のクラウド集中型AIから分散型AIへのパラダイムシフトと、それが世界および日本に与える影響です。

**DeepSeekの革新性とパラダイムシフト**
DeepSeekは2024年末から2025年にかけて世界に衝撃を与えた中国発のオープンソースAIで、ChatGPT-011に匹敵する性能を無料で提供しています。その最大の特徴は「分散型AI」として、ユーザーのローカル環境で動作できることです。これにより、従来のクラウド依存からの脱却、データ通信遅延の解消、プライバシー保護、セキュリティ向上を実現しています。特に、ブラウザ版（クラウド）とアプリ版（ローカル）の両方を提供し、企業が独自環境でAI開発を行うことを可能にしています。

**AI覇権争いと技術的優位性**
書籍では、AIの歴史を三度のブームに分類し、現在が深層学習とTransformerによる第三次ブームであることを説明しています。DeepSeekの高性能は、大規模な事前学習と推論の最適化、リソース配分の効率化、軽量モデルの実装によって実現されています。特に自己教師あり学習の採用により、従来のラベル付きデータ依存を脱却し、より汎用的な知識獲得を可能にしています。クラウド集中型AIが抱える構造的リスク（特定プロバイダーへの依存、高額利用料、データ漏洩リスク）に対して、分散型AIは新たな解決策を提示しています。

**言語処理における革新と漢字文化圏への対応**
DeepSeekは漢字文化圏特有の言語課題に特化した技術的アプローチを採用しています。四字熟語や慣用表現の理解、単語分割の課題への対応、敬語表現の処理、文脈理解において、他のAIモデルと比較して優れた性能を示しています。特に日本語や中国語の複雑な語順や文脈依存性、代名詞や主語の補完において高度な処理能力を発揮し、「真の文脈理解」を実現しています。これは、アルファベット圏の言語とは異なる漢字文化圏特有の言語特性に対応した技術革新として評価されています。

**国際的なAI競争と規制環境**
米中を中心とした量子AI覇権戦争が激化する中、各国は異なるAI戦略を採用しています。EUはGDPRを軸にしたデータ保護重視のAI規制法、アメリカは企業主導のイノベーション推進、中国は集中管理体制を構築しています。日本は慎重かつ段階的なアプローチを取り、個人情報保護法を中心とした規制体制を整備しています。AI標準をめぐる国際競争では、透明性、プライバシー、セキュリティに関する価値観の違いが東西分断を招いており、特に米国の半導体輸出規制が中国のAI開発に大きな影響を与えています。

**オープンソースAIと技術の民主化**
オープンソースAIの発展は、技術革新の加速、企業や研究機関の競争力向上、AIモデル利用の自由化をもたらしています。DeepSeekのようなオープンソースAIは、特定企業による技術独占を打破し、より多様なアイデアやニーズに応じたカスタムAIの開発を可能にします。これにより、AIの民主化が進み、クラウド環境だけでなくオンプレミスやエッジデバイスでの活用も拡大しています。一方で、セキュリティやライセンス管理などの課題も存在し、政府や研究機関との連携、国際的な規制整備が重要となっています。

**日本の戦略と未来への道筋**
日本は米中AI覇権争いにおいて「独創性を活かした第三の道」を進むべきとされています。具体的には、日本語特有の文化や言語特性を活かした文化圏型AI開発、セミクローズドエコシステムの構築、省電力AIモデルの開発によるエネルギー制約の克服が提唱されています。また、デジタル変革（DX）とグリーン変革（GX）を統合し、持続可能な社会変革を目指すことが重要です。政府・企業・大学の連携強化、アジア地域との協力拡大により、AI先進国としての地位確立を目指すべきだと結論づけています。人間中心の価値観でAIと向き合い、「自分の未来を選び、AIを自分らしく使いこなす」ことが強調されています。