獄食 監獄食 塀の中の食事 読書と夜桜が好きなベテラン受刑者

富士乃夜桜(著者)

• 販売会社／発売会社: ごま書房新社
• 発売年月日: 2025/05/01
• JAN: 9784341088798

商品レビュー

2025/11/13

　刑務所内での食事事情がわかるレアな一冊。短期間入っていた方の体験記かと思いきや、何十年と服役しているLB級刑務所にいる方なので獄食レポの歴史の厚みが伝わってきます。
　本が好きというだけあって普段お目にかかることのない難解な熟語や慣用句の連続で何度辞書を引いたことか。しかし、とても読みやすく、また面白く、受刑者の食を中心とした日常を知ることができ、これからは塀の向こうの暮らしに思いを馳せるとともに、自由に食事を楽しめる自分の境遇に感謝です。

2025/06/21

世間を震撼させた凶悪犯や極悪人が集まる務所ではどんな食が提供されるのか？この本ではその姿を克明に描く。筆者の30年近くに及ぶ「獄食」エピソードは笑いあり悲しみありで興味深い。酷すぎる栄養士が異動し、創意工夫ある料理に改善されたエピソードが特に面白かった。

2025/05/18

第2章 k子ちゃんに愛を！プロジェクト：刑務所の食事と受刑者の人間模様
この章では、刑務所における食事の質の低さに対する受刑者たちの不満、食事への慣れと調味料制限、そして女性職員K子ちゃんを巡る受刑者たちの様々な憶測や人間模様が描かれています。他の刑務所では一般的とされる肉料理の少なさや、質が低い魚料理、野菜炒めの状態などが具体的に描写され、筆者が刑務所の食事を通して、普段の食生活がいかに調味料に頼っていたかを痛感した様子が述べられています。また、受刑者たちがK子ちゃんの異動や退職を願ったり、彼女の人間性を批判したりする一方で、給食委員会でのK子ちゃんの高圧的な態度も描かれています。具体的な味噌汁の具材や、特別メニューの少なさなども紹介され、刑務所の食事事情が生々しく伝わってきます。（第2章 k子ちゃんに愛を！プロジェクト）

第3章 これがエリートの炊場だ！：刑務所の調理場と受刑者の階層
この章では、刑務所内の特殊な部署である炊場（調理場）の役割と、そこに配属される受刑者の選抜基準、そして刑務所内のイベントや規則について解説されています。炊場は調理師資格や経験を持つ「エリート」受刑者が配属される場所であり、炊場でのつまみ食いの実態や、慰問芸能に対する受刑者たちの反応、副菜の配分における受刑者間の暗黙のルールなどが語られています。食事の質に不満を持ちながらも、誰もK子ちゃんを蔑称で呼ばなかったという不思議な現象も紹介されています。（第3章 これがエリートの炊場だ！）

第4章 その上の所長に対してK子ちゃん絶体絶命！？：食事改善への期待と劇的な変化
この章では、受刑者たちが所長の交代によって食事の改善を期待していたにもかかわらず、栄養士K子ちゃんが資格を盾に改善を拒否していた状況が描かれています。しかし、新しい栄養士Qちゃんの登場によって、長年変化のなかった刑務所の食事が劇的に改善される様子が「クオンタムリープ（量子的跳躍）」という表現を用いて描写されています。肉料理の頻度増加や混ぜご飯のバリエーションの豊かさなど、具体的な変化が示されていますが、多くの受刑者がその変化を当たり前のように受け止め、感謝の念を持たない様子に対する筆者の批判も述べられています。その他、食事の栄養バランスの偏りや、刑務所の米の質、コロナ禍の刑務所の様子、年に一度の誕生会、夏場の清涼飲料水の配布中止といった刑務所の食を取り巻く様々な出来事が紹介されています。（第4章 その上の所長に対してK子ちゃん絶体絶命！？）

第6章 期待される祝日の甘シャリ！：祝日特別メニューと刑務所生活の「体験学習」
この章では、刑務所における正月やクリスマスといった祝日の特別メニューが、受刑者にとって普段の味気ない食事とは異なる大きな楽しみであり、「イベント」となっている様子が描かれています。おせち料理、餅、クリスマスケーキ、鶏腿のローストといった特別な食事が、長期刑の受刑者にとって数少ない喜びであることを筆者は強調しています。祝日の特別菜を巡る受刑者たちの行動や、正月明けの持ち物検査の様子、そして筆者が刑務所生活を「体験学習」の場と捉え、社会の常識や文化を学ぶ機会としている視点が述べられています。その他、炊場職員による問題行動や、雑居房での魚を巡る受刑者間のトラブル、食事の質と体調の変化に関する記述も紹介されています。（第6章 期待される祝日の甘シャリ！）