ヴァーチャルに治癒される人間 サイバー心理学が問う新たな主体

セルジュ・ティスロン(著者), フレデリック・トルド(著者), 佐藤愛(訳者), 阿部又一郎(訳者), 縣由衣子(訳者)

• 販売会社／発売会社: 誠信書房
• 発売年月日: 2025/04/15
• JAN: 9784414414998

商品レビュー

2025/05/20

接続された人間のサイバー心理学：新たな主体の探求
本書は、デジタル技術と人間の心の関係性を探求し、「接続された人間」のサイバー心理学について考察します。テクノロジーが単なる機能補完に留まらず、個人の輪郭や心のあり方をどのように変容させ、「新たな主体」を形成しているのかを、二つの推論システムや心の機能委託といった視点から分析します。

テクノロジーと身体・心の再編成：サイボーグー自我とアイデンティティの流動性
テクノロジーが心的補綴となり、自我の機能を委託するダイナミズム、そして自我の拡張であるサイボーグー自我という概念を提示します。デジタル空間がアイデンティティの流動性を生み出し、自己を試す実験室となる一方で、不安定さというリスクも生み出す現代社会における接続された主体のアイデンティティについて論じます。

自己統制、対象との関係性、ハイブリッド化の倫理的・心理的問題
デジタル機器が自己統制能力を高める可能性と、ダークパターンのような自己統制を阻害する側面を指摘します。人間と対象の相互変容や、人間と機械のハイブリッド化における倫理的・心理的な問題を提起し、心的補綴の潜在的な問題や、身体イメージと精神病理の関連性について考察します。

イメージと文化の変容：書籍文化からスクリーン文化へ
光学的なイメージの種類と、イメージが持つ連鎖や変容力について解説します。書籍文化とスクリーン文化を対比させ、それぞれの特徴、リスクと利点を分析します。スクリーン文化が心の習慣を断ち切り、イノベーションを促す一方、集団統御の手段となる可能性も示唆します。

デジタル依存と精神病理：アディクション問題とデジタルな二者一心
デジタル依存とアディクション問題について、遺伝的要素やランダムな報酬効果のリスクを指摘します。過剰なゲームプレイと問題のあるプレイの違いを明確にし、PCとの病的な関係性であるデジタルな二者一心について解説します。

サイバーバイオレンスとサイバーセクシュアリティ：デジタルな透明性の現れ
サイバーバイオレンスの様々な形態（炎上、ハラスメントなど）と、その根底にあるデジタルな透明性という概念を提示します。外密性、デジタルな脱抑制、サイボーグー自我という三つの側面から説明します。また、物理的なセクシュアリティとコネクテッド・サイバーセクシュアリティのハイブリッド形態であるサイバーセクシュアリティや、トランス身体化現象について論じます。

臨床におけるサイバー心理学の実践と新たな転移の形態
機器接続患者への臨床、ビデオゲーム使用セラピー、ロボットセラピー、オンラインライティングセラピーといったサイバー心理学の実践例を紹介します。オンライン相談に特有のデジタルな転移や、接続された人間における新たな転移形態（心と心との幽霊的関係、分身との幽霊的関係など）について解説し、結論として、デジタル世界における人間性の再定義とテクノロジーとの両義的な関係性を考察します。