国際関係学 新版 地球社会を理解するために

山田敦(編者), 和田洋典(編者), 倉科一希(編者)

• 販売会社／発売会社: 有信堂高文社
• 発売年月日: 2025/03/13
• JAN: 9784842055893

商品レビュー

2025/04/22

主題と構成: 本書は、現代の複雑な地球社会を理解するための学問である国際関係学への入門書。「戦争と平和」「グローバル経済・社会」という二大テーマを軸に、「歴史」「理論」「アクター」「イシュー」という４部構成で体系的に学べるよう工夫されている。各章は独立しており、索引も活用して関心のあるテーマから読み進めることも可能。第3版では、宗教、国際法廷、サイバー空間、パンデミック、SDGsなど現代的なトピックが追加された。
歴史的視点 (第I部): 国際関係の出来事を歴史的文脈の中で捉え、そのルーツを探るアプローチを紹介。主権国家を基本単位とするウェストファリア体制の成立から現代までを概観し、ウクライナ戦争、中東情勢、米中対立、ナショナリズムといった今日的課題の歴史的背景を解説する。
理論的アプローチ (第II部): 国際関係を分析するための主要な理論的レンズを紹介。国家間の権力闘争を重視する「リアリズム」（勢力均衡論、ミアシャイマーの攻撃的リアリズム等）、相互依存や国際制度、民主主義による協調を説く「リベラリズム」（民主的平和論等）、規範やアイデンティティの役割を強調する「コンストラクティビズム」、経済構造に着目する「マルクス主義系理論」（従属論、ウォーラーステインの世界システム論）などを解説し、状況に応じた理論の使い分けや折衷主義にも言及する。
主要アクター (第III部): 国際関係における多様な行為主体を考察。中心となる「主権国家」の概念、要件、種類を解説。国連などの「国際機関」の役割と構造、さらに影響力を増す「非国家主体」（多国籍企業、NGO、国際テロ組織、個人、利益団体など）の特徴と国際関係への影響を分析。特に中東地域のアクターの特徴にも触れる。
重要イシュー (第IV部): 現代国際社会が直面する多様な課題（イシュー）を幅広く取り上げる。開発・貧困・ODA、資源・エネルギー、自然災害、地球環境問題（SDGs含む）、人口問題、人の移動（移民・難民）、人権、サイバー空間、核兵器、テロリズム、グローバリゼーションとナショナリズム、宗教など、各分野における現状、課題、国際的な取り組みを解説する。
グローバル経済・社会 (第V部): 国際貿易体制（WTO）、国際金融システム（IMF）、多国籍企業、南北問題、格差、環境、健康（パンデミック）、食料、人権、ジェンダーなど、グローバルな経済・社会の構造と課題に焦点を当てる。
学びの指針: 本書は、国際関係学の基礎を大づかみに理解し、歴史・理論・アクター・イシューを統合的に捉える視点を養うことを目指す。読者が自らの関心に基づき、さらに学びを深めていくための入り口となることを意図している。