EUのAIガバナンス 新技術に対する国際的な科学技術ガバナンスに向けて

北和樹(著者)

• 販売会社／発売会社: 晃洋書房
• 発売年月日: 2025/03/10
• JAN: 9784771039216

商品レビュー

2025/04/08

AIの特殊性とリスク:
AIは、人間の思考や労働を補完・代替する広範な分野で利用が拡大しており、その影響力の大きさが認識されています
国連事務総長グテーレス氏は、AIを国際的に規制する必要性を訴え、「リスクに対処するための行動を起こさないならば、私たちは現在および将来世代に対する責任を放棄することになる」と警告しています。

AIのリスクは、その予測不可能性や、人間の自由な選択や意思決定への介入可能性に由来します。

AIのブラックボックス性（動作原理の不透明性）は、規制のあり方、透明性の確保、説明責任、研究開発との両立といった課題を提示します。「Al のガバナンスにおいて． AI のブラックボックス はいくつかの問題を提示する．すなわち． AI の何を規制するかどのように 透明性を確保するかどのように説明四任を果たすかそしてそれらの規制 をしながら AI の研究・開発を促進することは可能なのかである。」

機械学習アルゴリズムは、人間が直接的に問題解決の道筋を理解できない場合があり、行動の予測が困難となる可能性があります。

EUにおけるAI政策の発展：
EUのAIガバナンスは、当初は高度に自律的なスマートロボットに関する議論の中で萌芽が見られました。

デジタル単一市場（DSM）戦略は、AIを含むデジタル技術を重要な要素と位置づけ、EUの競争力強化を目指しました。

EU議会は、AIとロボットに関する共通の倫理原則や法的枠組みの必要性を提唱しました。「ロボットの社会的側面の研究から明らかになった民事責任に関する課題への対処から．EU委員会は．AIおよびロボットに対するEU としての行動を沙汰された。」

AI法案の策定は、AIがEUの基本的価値（人権、民主主義、法の支配など）を脅かす可能性に対処することを目的としています。「AIの問題は． EUが新技術を 域内市場の統一的な規則に落とし込む際に． AIが基本的権利や民主主義．法 の支配といった EU の基本的価値を脅かす可能性も有していることであった。」

EU AI法案の概要:
AI法案は、AIシステムがもたらすリスクを分類し、それぞれのレベルに応じた規制を導入するリスクベースアプローチを採用しています。「Al 法案は． AI システムがり1き起こす可能性のあるリスクを ① 詐容でき ないリスク （タイトルIIに対応).② 高リスク （タイトルIIIに対応).③ 低リスクま たは最小限のリスク （クイトルIVに対応）の 3 つに分煩する。」

国際的な科学技術ガバナンスへの示唆:
EUのAIガバナンスは、国境を越えた規制の必要性を示唆しています。
科学技術ガバナンスにおいては、研究開発段階と実用化・商業化段階で異なるアプローチが必要とされます。「ここで重要なことは科学技術ガバナンスでは，科学技術の研究・開発段 階と実用化・商業化段階という段階別のガバナンスが考えられていることである。」

ヨナスの「責任の原理」は、現在世代が将来世代に対して、人間という理念と自然環境に対する責任を負っているという考え方を示唆し、長期的な視点での科学技術ガバナンスの重要性を強調します。「その中心に据えられたのが人間の理念であったすなわ ち．我々が責任を持つのは．将来の人間に対してではなく人間という理念に対してである．」